論旨は、原判決が、被告人らは「不良の徒として同町民より恐れられ」ていたと判示している点を捉え、かかる伝聞証言に基いて事実認定をしたことは、判決に影響を及ぼすべき法令違反があるというのであるが、記録について、原判決の挙げている各証人の供述を委しく調べて見ると、むしろ被害者としてそれぞれの体験を述べているのであつて、具体的事実の伝聞を証言しているとは認められない。
被告人らは「不良の徒として同町民より恐れられ」ていたとの証人の供述が伝聞証言にならない事例
刑訴法320条,刑訴法324条2項
判旨
供述内容が伝聞証言にあたるか否かは、証人が具体的事実の伝聞を述べているか、あるいは自身の直接的な体験を述べているかによって判断される。被告人に実刑を科すことで家族が生活困難に陥るとしても、憲法25条に違反するものではない。
問題の所在(論点)
1.「被告人らが町民から恐れられていた」との供述を採用して事実を認定することは、伝聞法則に違反するか。2.実刑判決によって被告人の家族が生活困難となることが、憲法25条に違反するか。
規範
1.伝聞法則(刑事訴訟法320条1項)の適用範囲について:証人の供述が伝聞証言にあたるかは、供述者が他者の発言などの具体的事実の伝聞を述べているか、あるいは被害者等の立場から自身の直接的な体験を述べているかにより区別される。2.実刑判決と憲法25条:生存権の保障は、被告人への刑の執行に伴う反射的な不利益(家族の困窮等)を理由に、実刑判決そのものを違憲とするものではない。
重要事実
被告人らは、恐喝罪の事案において「不良の徒として町民より恐れられていた」と認定された。弁護人は、この認定が伝聞証言に基づくものであり、伝聞法則に違反すると主張。また、被告人に実刑を科すことは、その家族を生活困難に陥らせるものであり、憲法25条(生存権)に違反すると主張して上告した。
事件番号: 昭和27(あ)4864 / 裁判年月日: 昭和29年6月8日 / 結論: 棄却
昭和二六年四月当時佐賀県a町大字b字c駐在所勤務の巡査に対し同駐在所附近で「売国奴の番犬、A巡査をたたき出せ」と題し、「……たしかに、Aは売国奴の番犬だ!我々愛国者人民は近き将来に必ず勝利するのだ、かかる売国奴とその手先どもの行為は、来るべきあの有名な人民裁判によつて明らかにサバカレ処断されるであろう……」と書いた謄写…
あてはめ
1.伝聞法則について:原判決が採用した各証人の供述は、証人らが被害者としてそれぞれの体験(畏怖の情を抱いた経緯等)を述べているものであり、他者の発言等の具体的事実の伝聞を述べているとは認められない。したがって、伝聞証言にはあたらない。2.憲法25条について:被告人に実刑を科すことで家族の生活が困難になるとしても、それは刑事制裁の適正な執行の結果にすぎず、憲法25条の規定に違反するものではない(既往の大法廷判例と同旨)。
結論
本件各供述は伝聞証言に該当せず、また実刑判決が憲法25条に違反することもないため、上告を棄却する。
実務上の射程
伝聞法則の成否を論じる際、供述が「外部的心理的事実」や「供述者自身の直接体験」を内容とする場合には、伝聞証拠に該当しないことを示す根拠として活用できる。生存権に関する主張は、刑事訴訟の文脈では量刑不当の主張に留まることを示す。
事件番号: 昭和29(あ)2576 / 裁判年月日: 昭和29年10月26日 / 結論: 棄却
共犯者たる共同被告人Aの所論検察官に対する供述調書と第一審判決挙示のB、その他の被害者の第一審公判廷における供述等によつて処罰することが憲法三八条三項に違反しないことは既に当裁判所判例の趣旨とするところであるから、論旨は採用するに由ない(昭和二六年(れ)第一三三号同年六月二九日第二小法廷判決参照)。
事件番号: 昭和41(あ)1986 / 裁判年月日: 昭和41年12月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事裁判において、起訴事実以外の余罪を実質的に処罰する趣旨で重く量刑することは許されないが、量刑の判断に際し、被告人の性格や犯罪後の状況等の一情状として余罪を考慮することは許される。 第1 事案の概要:被告人が起訴事実について有罪判決を受けた後、控訴審判決において、被告人が原判決後に前後3回にわた…
事件番号: 昭和29(あ)1745 / 裁判年月日: 昭和29年10月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】単なる法令違反を理由とする上告は、刑事訴訟法405条所定の上告理由に該当しない。また、職権による判決破棄事由である同法411条の適用も、記録上認められない場合には、上告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人が刑事裁判の判決に対し上告を申し立てた。弁護人が提出した上告趣意の内容は、単なる法令…