判決の理由には、事実認定の資料として採用した証拠の標目を摘示し、これに反する証拠を措信し難いとして排斥する旨を説示すれば足り、心証形成の過程を判示する必要はない。
判決の理由に心証形成の過程を判示することの要否
民訴法185条,民訴法191条1項
判旨
判決における理由の提示は、請求原因や抗弁の存否、及び認定事実への法適用を示せば足り、証拠を排斥する理由や心証形成の過程を具体的に説示する必要はない。
問題の所在(論点)
判決書の「理由」において、証拠の採否の理由や心証形成の過程まで詳細に記載する義務があるか(理由不備の存否)。
規範
判決の理由(民事訴訟法253条1項2号)には、(1)請求原因事実の存否、(2)抗弁事実の存否、(3)認定事実に対する法の適用結果を示せば足りる。裁判所が証拠を排斥する理由を逐一説示することや、心証形成の過程を詳細に判示することは、判決の違法を構成しない。
重要事実
上告人は、原審において証人Dの尋問を申し出たが、原審はこれが唯一の証拠ではないとして採用しなかった。また、原審判決の理由において、証拠の標目を摘示し、反する証拠を「措信し難い」として排斥する旨を説示するにとどめ、具体的な心証形成の過程を記述しなかった。これに対し、上告人が理由不備等の違法を主張して上告した事案である。
あてはめ
原審は、請求の当否を判断するにあたり、採用した証拠の標目を摘示した上で、それに反する証拠を「措信し難い」として一括して排斥している。これは、事実認定の基礎となった資料を明示したものであり、判決の結論に至る論理過程として必要十分な事項を示しているといえる。証拠排斥の具体的理由や心証形成の細かな過程が示されていないとしても、判決の結論に影響を及ぼすような法合憲上の瑕疵(理由不備)にはあたらない。
結論
原審の判決理由の示し方は適法であり、証拠排斥理由や心証形成過程の説示がないことをもって違法とすることはできない。
実務上の射程
民事訴訟法上の「理由不備」の主張に対する反論として有用。裁判所の自由心証主義(247条)と理由記載義務の関係を整理する際に、裁判所の裁量を広く認める根拠として機能する。
事件番号: 昭和23(オ)126 / 裁判年月日: 昭和24年4月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告審において、原判決が認定していない事実を主張し、または証拠調べ(本人尋問)の結果を援用しないことが不当であると主張することは、適法な上告理由に当たらない。 第1 事案の概要:上告人は、原判決が認定していない事実を新たに主張した。また、原審において上告人等の本人尋問の結果が援用(証拠採用)されな…