昭和三四年法律第一四七号による改正前の国税徴収法施行同時、同法に基づく国税滞納処分において、随意契約による売却決定がされたときは、買受人は、右売却決定により、買受代金納付期日までに代金を納付しないことを解除条件として、目的物の所有権を取得したものと解すべきである。
昭和三四年法律第一四七号による改正前の国税徴収法施行当時同法に基づく国税滞納処分において随意契約による売却決定がされたときの目的物の所有権移転の時期。
国税徴収法(昭和34年法律147号による改正前)25条
判旨
滞納処分としての随意契約による売却決定がなされた場合、買受人は代金不納付を解除条件として即時に所有権を取得するため、その後の滞納税金の完納は売却決定の取消理由とはならない。
問題の所在(論点)
滞納処分としての随意契約による売却決定後、買受人の代金納付前に滞納者が滞納税金を完納(または弁済提供)した場合、当該売却決定を取り消すべき法的義務が生じるか。売却決定による所有権移転の時期と、滞納税金消滅の関係が問題となる。
規範
旧国税徴収法に基づく滞納処分において、随意契約による売却決定がなされたときは、特段の定めがない限り、買受人は代金納付期日までに代金を納付しないことを解除条件として、目的物の所有権を取得する。したがって、売却決定後かつ代金納付前に滞納者が滞納税金を完納したとしても、それは買受人の所有権取得に影響を及ぼさず、売却決定を取り消すべき理由とはなり得ない。この理は地方税滞納処分にも同様に適用される。
重要事実
町(被上告人)は、滞納処分として上告人所有の家屋を差し押さえ、公売に付したが不調となった。そのため、昭和30年12月8日、随意契約により代金15万円、納付期限を同月20日として訴外Eに売却決定を行った。上告人は、代金納付前である同月15日に滞納税金の弁済を提供したが、徴税吏員は売却決定後であることを理由に受領を拒絶。同月16日に買受人Eが代金を納付した。上告人は、代金納付前の滞納税金完納(または提供)により売却決定は取り消されるべきであると主張して争った。
あてはめ
本件では、昭和30年12月8日に随意契約による売却決定がなされた時点で、買受人Eは「代金不納付」を解除条件とする所有権を取得したといえる。上告人が滞納税金の提供を行った12月15日は、売却決定の後であり、かつ解除条件(代金不納付)が成就した事実も認められない。むしろ翌16日には買受代金が完納され、解除条件が不成就となることが確定している。したがって、売却決定後に上告人が弁済を提供したとしても、既に発生している売却の効果を覆し、決定を取り消すべき理由には当たらないと解される。
結論
随意契約による売却決定がなされた後は、代金納付前であっても滞納税金の完納を理由として売却決定を取り消すことはできない。上告人の請求は理由がない。
実務上の射程
滞納処分における公売等と所有権移転時期に関する準則を示す。現在は国税徴収法上の手続が整備されているが、売却決定による法的効果の確定時期と、滞納者による後出しの完納が公定力・権利移転に与える影響を遮断する実務上の指針として機能する。
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