判旨
裁判官の更迭があったにもかかわらず公判手続の更新を行わずに審理を継続したことは、訴訟手続の法令違反にあたり、判決の破棄事由となる。
問題の所在(論点)
裁判官の更迭があった場合に、公判手続の更新(現行刑訴法315条参照)を経ずに審理・判決を行うことの適否。
規範
公判期日において裁判官の更迭があった場合には、公判手続を更新しなければならない。これを行わずに引き続き審理・判決を行うことは、刑事訴訟法が定める適正な裁判の構成に反し、重大な訴訟手続の法令違反となる。
重要事実
第一審(あるいは前審)の第12回公判期日に列席した裁判官は裁判長A、裁判官B、裁判官Cであった。しかし、その後の第3回公判期日(記録上の表記順序は不明だが更迭後の期日とされる)に列席した裁判官は裁判長A、裁判官D、裁判官Cであり、裁判官の1名が交代(更迭)していた。この際、公判調書の記載によれば、公判手続を更新した旨の記録がなく、そのまま審理が継続され判決に至った。
あてはめ
本件記録によれば、第12回公判期日と第3回公判期日との間で裁判官の構成に変更が生じていることが明らかである。しかし、当該期日の公判調書には公判手続を更新した旨の記載が全く存在しない。したがって、裁判官が更迭されたにもかかわらず、更新手続を履践しないまま審理を継続したものと認められる。このような手続は、旧刑事訴訟法410条6号(現行法上の絶対的控訴理由・上告理由に相当する手続違反)に該当する重大な瑕疵があるといえる。
結論
原判決中被告人に関する部分は、裁判官更迭後の更新手続を欠く違法があるため破棄を免れず、本件を管轄裁判所に差し戻すべきである。
実務上の射程
事件番号: 昭和27(れ)57 / 裁判年月日: 昭和27年12月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】共同被告人の一人の判決に審理不尽等の破棄理由がある場合であっても、他の被告人との間にその破棄理由が共通しない限り、当然には判決を破棄し差戻す必要はない。 第1 事案の概要:被告人らは、Cと原審および当審において共同被告人の関係にあった。Cについては、第二審判決において公判審理の更新をしないという手…
裁判官の更迭による公判手続の更新(刑訴法315条)は、直接主義・口頭主義を担保するための必須の手続である。答案上では、裁判官の交代という事実が示された場合に、更新手続の有無を確認し、これが欠けていれば「判決に影響を及ぼすべき訴訟手続の法令違反」(刑訴法379条、405条等)あるいは絶対的控訴理由等の文脈で論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和26(あ)269 / 裁判年月日: 昭和27年12月26日 / 結論: 破棄差戻
原判決の裁判書には、単にA裁判長及びB判事の両名のみが署名押印しており、右審判に関与したものと思われるC判事の署名押印はなく、またその署名押印いことについての裁判長の事由附記もないときは、刑訴規則五五条に違反したものであり、しかもかかる法令違反は、判決に影響を及ぼすべきものであることは勿論であり刑訴四一一条を適用するを…
事件番号: 昭和27(あ)3673 / 裁判年月日: 昭和28年12月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法21条1項が保障する表現の自由であっても、それ自体が犯罪を構成するような言動については、同条による保障の範囲内にない。 第1 事案の概要:被告人は特定の言動(犯罪を構成すると判断された具体的な行為内容は本判決文からは不明)に及び、第一審および控訴審で有罪判決を受けた。これに対し、被告人側が、当…
事件番号: 昭和29(あ)1745 / 裁判年月日: 昭和29年10月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】単なる法令違反を理由とする上告は、刑事訴訟法405条所定の上告理由に該当しない。また、職権による判決破棄事由である同法411条の適用も、記録上認められない場合には、上告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人が刑事裁判の判決に対し上告を申し立てた。弁護人が提出した上告趣意の内容は、単なる法令…