原判決の引用する一審判決判示(別紙抄録部分)の如き事情があるときは、上告人主張の相殺の抗弁は民訴法第一三九条第一項の重大なる過失により時機に後れて提出されたものと認めるべきである。
民訴法第一三九条第一項の重過失により時機に後れて提出された抗弁を認められた事例。
民訴法139条
判旨
当事者が提出した攻撃防御方法が「時機に後れて提出されたもの」に該当するか否かは、訴訟手続の経過に照らして判断されるべきであり、裁判所は民事訴訟法(旧139条1項、現157条1項)に基づき、これを却下することができる。
問題の所在(論点)
訴訟の進行過程において提出された相殺の抗弁が、民事訴訟法上の「時機に後れて提出された攻撃防御方法」として却下されるための判断基準、およびその正当性。
規範
攻撃防御方法が、故意又は重大な過失により時機に後れて提出されたと認められ、それによって訴訟の完結を遅延させることになるときは、裁判所は、申立てにより又は職権で、却下の決定をすることができる(民事訴訟法157条1項)。この判断に際しては、訴訟手続のこれまでの経過を総合的に考慮すべきである。
重要事実
上告人と被上告人との間で65万円の貸借が成立したか否かが争われた。第一審において訴訟手続が進行する中で、上告人は相殺の抗弁を提出したが、第一審裁判所はこれを「時機に後れて提出されたもの」として排斥した。原審(二審)もこの判断を維持したため、上告人が民事訴訟法139条1項(当時)の解釈適用に誤りがあるとして上告した事案である。
あてはめ
本件における相殺の抗弁の提出時期について、第一審判決が説示する訴訟手続の経過を精査すると、それまでの審理状況からみて、より早期に提出することが可能であったと認められる。このような訴訟の進捗状況に照らせば、当該抗弁を時機に後れたものとして排斥した原審の措置は、適法な裁量権の行使として是認される。
結論
上告人が提出した相殺の抗弁を時機に後れたものとして排斥した原審の判断は正当であり、民事訴訟法上の解釈適用の誤りはない。
実務上の射程
適時提出主義(156条)を担保する157条1項の運用例である。答案上では、①却下対象の攻撃防御方法がそれまでの審理で提出可能であったか(時機)、②提出を怠ったことに故意・重過失があるか、③それにより判決までの期間が延びるか(遅延)の3要素を、訴訟経過という事実関係に即して具体的に論じる際の根拠となる。
事件番号: 昭和29(オ)889 / 裁判年月日: 昭和30年3月10日 / 結論: 却下
上告理由書に、民事上告事件等訴訟手続規則所定の方式により上告理由を記載していないときは、上告は不適法として却下を免れない。