手形割引の依頼を受けた者に対し、同人が割引を受けた金員を費消した等の理由により不当利得したとして、その返還の訴を提起した後、これを、手形割引契約違反に基く損害賠償請求の訴に変更しても、請求の基礎に変更はないものと解すべきである。
請求の基礎に変更がないとされた事例。
民訴法232条
判旨
不当利得返還請求から手形割引契約の債務不履行に基づく損害賠償請求への訴えの変更は、いずれも手形の交付とその対価未受領という同一の事実に着目したものであり、「請求の基礎に変更がない」と認められる。
問題の所在(論点)
不当利得返還請求から債務不履行に基づく損害賠償請求への変更において、民訴法143条1項の「請求の基礎に変更がない」といえるか。
規範
民事訴訟法143条1項(旧232条)にいう「請求の基礎に変更がない」とは、新旧両請求の態様において、その主要な事実関係が共通することをいう。具体的には、旧請求についての審理資料を新請求の審理に利用できるなど、紛争の解決に実効的であり、かつ被告の防御に著しい支障を及ぼさないことを基準に判断すべきである。
重要事実
被上告人(原告)は当初、上告人(被告)に対し、手形割引を依頼した本件手形を上告人が無断で自己の債務弁済に充て不当に利得したとして、不当利得返還請求訴訟を提起した。その後、被上告人は、上告人が手形割引契約に違反した結果損害を被ったとして、債務不履行に基づく損害賠償請求へと訴えを変更した。
あてはめ
本件における旧訴(不当利得)と新訴(損害賠償)は、いずれも「被上告人が資金調達目的で振り出した本件手形を上告人に交付し、その結果、被上告人が対価を得ずに手形金を支払うに至った」という同一の基本的事実関係に基づいている。このように事実関係の核心が共通している以上、旧訴において蓄積された審理資料を新訴に活用することが可能であり、上告人の防御を著しく困難にするものとはいえない。したがって、両請求は社会生活上の同一の紛争を解決するための法的構成の変更にすぎず、請求の基礎に変更がないと評価される。
結論
本件訴えの変更は、請求の基礎に変更がないものとして適法である。
実務上の射程
訴えの変更(143条1項)や訴えの交換的変更が実質的に追加的変更と捉えられる場面等において、紛争の一回的解決と被告の防御のバランスを検討する際のリーディングケースとして活用できる。
事件番号: 昭和36(オ)686 / 裁判年月日: 昭和37年11月9日 / 結論: 棄却
合意解除に基づく不当利得返還請求において、合意解除について当事者間に争いがあるのにかかわらず争いのないものと誤認した違法があつても、判示事情のもとにおいては、判決に影響を及ぼすものとはいえない。