判旨
脱税事犯に係る刑事裁判で確定した事実は、その後の課税処分における課税標準の決定を拘束しない。また、追徴税は刑罰ではないため、刑罰との併科は憲法39条の二重処罰禁止に抵触しない。
問題の所在(論点)
1. 脱税に関する刑事裁判の確定判決が、その後の課税処分における課税標準の算定を拘束するか。2. 刑事罰を科した上で追徴税を徴収することは、憲法39条が禁止する二重処罰に該当するか。
規範
我が国の法制度の下では、刑事裁判で確定した事実が課税標準の決定を当然に拘束する制度は採用されていない。また、追徴税は行政上の制裁であり刑罰の範疇に属さないため、刑罰と併科しても憲法39条に違反しない。
重要事実
上告人は、脱税事犯(法人税法違反等)により刑事裁判を受けた。その後、行政処分として課税標準の決定や追徴税の徴収が行われたが、上告人は、課税標準は刑事裁判の確定事実に拘束されるべきであること、および刑罰を受けた上に追徴税を課すことは二重処罰にあたり憲法39条に違反することを主張して、その取消しを求めた。
あてはめ
1. 法人税法の諸規定を文理解釈しても、刑事裁判の事実認定が課税処分を拘束すると解すべき根拠はない。したがって、課税当局は刑事裁判に拘束されず独自に課税標準を決定できる。2. 追徴税は、適正な申告を促すための行政上の制裁であり、犯罪に対する応報たる刑罰とはその性質を異にする。よって、刑事罰と追徴税を併せて課しても、同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問うものではない。
結論
刑事裁判の事実は課税処分を拘束せず、また追徴税の課税は憲法39条に違反しないため、上告を棄却する。
実務上の射程
事件番号: 昭和29(オ)236 / 裁判年月日: 昭和33年4月30日 / 結論: 棄却
一 法人税法第四三条の追徴税と罰金とを併科することは、憲法第三九条に違反しない 二 法人税法第四八条第三項の法意は、同条第一項の逋脱犯があつた場合において、その逋脱税額が未徴収であるときは、徴税庁は、同法第二九条以下の課税標準の更正または決定の手続により、直ちに、その課税標準を更正または決定してその税金を徴収すべき趣旨…
行政罰(過少申告加算税等)と刑事罰の併科が二重処罰禁止に触れないことを示すリーディングケースである。答案上では、行政上の制裁と刑罰の目的・性質の差異を論証する際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和37(オ)790 / 裁判年月日: 昭和39年2月18日 / 結論: 破棄自判
無申告加算税を課徴すべき場合に、過少申告加算税を課しても、その課税処分を無効とはいえない。
事件番号: 昭和27(オ)6 / 裁判年月日: 昭和33年5月29日 / 結論: 棄却
同族会社たる甲株式会社が、乙株式会社の全株式を買収した後乙会社を合併しついで増資した場合に、右買収代金が乙会社の払込済資本金額と積立金額の合計額を超えていても、それだけで、旧法人税法(昭和一五年法律第二五号)第二八条によつて、右超過金額を合併交付金と認定して課税することは違法である
事件番号: 昭和35(オ)727 / 裁判年月日: 昭和37年3月16日 / 結論: 棄却
所得税法第四四条第四項は所得に関する金額のみならず、何人の所得であるかをも決定できる旨規定したものである。