一 登記の申請が商業登記法二四条各号所定の却下事由に該当していても、これが受理されて登記が完了したときは、審査請求により右登記の抹消を求めることができるのは、登記につき登記官による職権抹消事由が存することを理由とする場合に限られる。 二 商法一九条の規定に反し登記することができない商号の登記を目的とする登記申請でも、登記官がその申請を受理して登記を完了したときは、審査請求の方法によつて右登記の抹消を求めることは許されない。
一 商業登記法二四条違反の瑕疵ある登記と審査請求が許される事由 二 商法一九条に反する登記申請が受理され登記が完了したときと審査請求の許否
商業登記法24条13号,商業登記法27条,商業登記法109条1項,商業登記法110条1項,商業登記法114条,商法19条
判旨
商業登記法上の審査請求により登記の抹消を求めることができるのは、登記官に職権抹消事由が存する場合に限られ、商法19条違反の商号登記はこれに該当しない。
問題の所在(論点)
登記完了後において、登記官による登記処分に対し、法114条所定の審査請求により当該登記の抹消を求めることができるのはどのような場合に限られるか。また、商法19条違反の登記申請を受理した処分が、その対象となるか。
規範
商業登記法(以下「法」)に基づく審査請求において、法116条および118条にいう「相当の処分」とは、登記官がその職権で処分し得る事項の範囲に限られる。したがって、完了した登記の抹消を求める審査請求は、法109条1項各号に掲げられた職権抹消事由が存する場合に限り許容される。これは、登記名義人や登記を信頼した第三者の利益保護を目的として、職権抹消事由を限定的に列挙した法の趣旨に基づく。
重要事実
上告人は、ある商号の登記申請が商法19条(他人の商号と誤認させる商号の使用禁止等)の規定に違反するものであると主張し、当該登記を受理した登記官の処分に対し、法114条に基づく審査請求により当該登記の抹消を求めた。しかし、原審は当該事由が職権抹消事由に当たらないとしてこれを認めず、上告人が最高裁へ上告した事案である。
事件番号: 昭和58(行ツ)106 / 裁判年月日: 昭和61年11月4日 / 結論: 棄却
法人登記の職権抹消処分の取消訴訟においては、裁判所は、登記官が審査権限を有する範囲内で当該処分の適否を判断すれば足り、登記官の審査権限に属さない資料に基づいて処分の適否を判断すべきではない。
あてはめ
本件において、上告人が主張する「商法19条違反」の商号登記は、法24条13号(登記することができない事項の申請)等に該当し、本来は却下されるべきものである。しかし、一度登記が完了した後は、法109条1項各号に掲げられた職権抹消事由に該当しない限り抹消できない。本件の事由は、同項2号(登記された事項が法律上登記することができないもの又は無効なものであるとき)等の職権抹消事由には該当しないことが明らかである。したがって、登記官には職権抹消権限がなく、審査請求における「相当の処分」として抹消を命じることもできない。
結論
商法19条違反を理由として、登記官の処分に対し審査請求により登記の抹消を求めることは許されない。
実務上の射程
本判例は、商業登記の審査請求における「相当の処分」の範囲を登記官の職権行使の範囲内に限定した重要な射程を持つ。答案作成上は、登記の有効性や実体関係に争いがある場合でも、法109条1項の職権抹消事由に該当しない限り、審査請求という行政上の救済手段ではなく、訴訟等によるべきであることを示す根拠として活用できる。
事件番号: 昭和49(行ツ)89 / 裁判年月日: 昭和50年10月29日 / 結論: 棄却
原審確定の事実関係(原判決参照)のもとにおいて、建物新築による不動産工事の先取特権保存の登記につき建物の所在地番を更正することは、登記の同一性を失わしめるものとして許されない。
事件番号: 昭和24(オ)209 / 裁判年月日: 昭和26年4月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法律行為の要素に錯誤があるというためには、意思表示の時点において当該事情が契約の必須の要件とされている必要がある。契約成立後に生じた事情や合意は、特段の事情がない限り、契約締結時における意思表示の要素の錯誤を構成しない。 第1 事案の概要:上告人(売主)は本件家屋の売買契約を締結したが、後に「期限…