入会権者らの総有に属する入会地を売却するに当たり入会権者らが入会権の放棄をした場合であっても,入会権者らが入会地の管理運営等のための管理会を結成し,その規約において入会地の処分等を管理会の事業とし,入会地の売却が管理会の決議に基づいて行われ,売却後も入会権者らの有する他の入会地が残存し,管理会も存続しているなど判示の事実関係の下においては,入会地の売却代金債権は,入会権者らに総有的に帰属する。
入会地の売却代金債権が入会権者らに総有的に帰属するとされた事例
民法263条,民法427条
判旨
入会地の売却によって入会権が消滅した場合であっても、規約により代金の管理運営が団体の事業とされ、団体が存続しているときは、売却代金債権は構成員に総有的に帰属する。したがって、各構成員が当然に持分に応じた分割債権を取得することはない。
問題の所在(論点)
入会地の売却によって入会権が消滅した場合、その売却代金債権の帰属関係は、構成員の「総有」となるか、あるいは各構成員の「持分に応じた分割債権(通常の共有)」となるか。
規範
入会地の売却により入会権が放棄された場合であっても、(1)入会地の管理運営等のための団体(権利能力なき社団)が存続しており、(2)規約上、土地の処分や売却代金の管理運営が当該団体の事業とされているときは、入会権の放棄によって権利関係が通常の共有に変化したものとは解されない。この場合、売却代金債権は構成員に総有的に帰属し、各構成員が持分に応じた分割債権を当然に取得することはない。
重要事実
入会権者33名からなる「b財産管理会(権利能力なき社団)」は、入会地の一部を町に売却する決議を全員一致で行った。売却後も他の入会地が残存し、管理会も存続していた。管理会の規約には「土地の処分をして共有財産の堅実なる効率的運営を行う」ことや、土地・分配金に関する事項は権利者会議で決定する旨が定められていた。代表者は売却代金を受領後、23名には分配したが、被上告人ら10名には分配しなかったため、被上告人が持分に応じた分割債権の侵害を理由に損害賠償を求めた。
事件番号: 平成17(受)1996 / 裁判年月日: 平成19年3月8日 / 結論: その他
法律上の原因なく代替性のある物を利得した受益者は,利得した物を第三者に売却処分した場合には,損失者に対し,原則として,売却代金相当額の金員の不当利得返還義務を負う。
あてはめ
本件では、売却後も他の入会地が存在し管理会が存続していることから、入会権の放棄によって管理会の管理が失われたとはいえない。また、規約7条が売却代金の管理運営を事業としていることは、代金が総有に属することを前提としているといえる。したがって、本件売却代金債権は権利者らに総有的に帰属するものであり、特定の構成員が当然に分割債権を取得したとは認められない。
結論
被上告人は売却代金について持分に応じた分割債権を取得しないため、上告人の行為が被上告人の権利を侵害したとはいえず、損害賠償請求は認められない。
実務上の射程
入会集団の団体性が維持されている局面での、入会地処分代金の帰属を判断する際のリーディングケースである。答案上は、入会権消滅=即共有化という短絡的な論証を避け、規約の定めや団体の存続状況から「総有」か「共有」かを峻別する基準として用いる。
事件番号: 平成25(受)843 / 裁判年月日: 平成27年9月18日 / 結論: 棄却
1 区分所有者の団体が,一部の区分所有者が共用部分を第三者に賃貸して得た賃料のうち各区分所有者の持分割合に相当する部分につき生ずる不当利得返還請求権を区分所有者の団体のみが行使することができる旨を集会で決議し,又は規約で定めた場合には,各区分所有者は,上記請求権を行使することができない。 2 区分所有建物の管理規約に,…
事件番号: 令和5(受)2461 / 裁判年月日: 令和7年6月30日 / 結論: 破棄自判
不動産の管理業等を目的とする株式会社であるXは、甲別荘地内に土地を所有する者との間で個別に管理契約を締結し、甲別荘地において上記管理契約に基づく管理業務を行っており、Yは、甲別荘地内に土地を所有するものの、Xとの間で上記管理契約を締結せず、管理費を支払っていない場合において、次の⑴~⑸など判示の事情の下では、Yは、Xに…
事件番号: 平成22(受)1405 / 裁判年月日: 平成23年7月8日 / 結論: 破棄差戻
貸金業者が貸金債権を一括して他の貸金業者に譲渡する旨の合意をした場合において,上記債権を譲渡した業者の有する資産のうち何が譲渡の対象であるかは,上記合意の内容いかんにより,それが営業譲渡の性質を有するときであっても,借主との間の金銭消費貸借取引に係る契約上の地位が上記債権を譲り受けた業者に当然に移転する,あるいは,当該…