1 区分所有者の団体が,一部の区分所有者が共用部分を第三者に賃貸して得た賃料のうち各区分所有者の持分割合に相当する部分につき生ずる不当利得返還請求権を区分所有者の団体のみが行使することができる旨を集会で決議し,又は規約で定めた場合には,各区分所有者は,上記請求権を行使することができない。 2 区分所有建物の管理規約に,管理者が共用部分の管理を行い,共用部分を特定の区分所有者に無償で使用させることができる旨の定めがあるときは,この定めは,一部の区分所有者が共用部分を第三者に賃貸して得た賃料のうち他の区分所有者の持分割合に相当する部分につき生ずる不当利得返還請求権を区分所有者の団体のみが行使することができる旨を含むものと解すべきであり,当該他の区分所有者は上記請求権を行使することができない。
1 一部の区分所有者が共用部分を第三者に賃貸して得た賃料のうち各区分所有者の持分割合に相当する部分につき生ずる不当利得返還請求権を各区分所有者が行使することができない場合 2 一部の区分所有者が共用部分を第三者に賃貸して得た賃料につき生ずる不当利得返還請求権を他の区分所有者が行使することができないとされた事例
(1,2につき)建物の区分所有等に関する法律3条前段,建物の区分所有等に関する法律第1章第2節 共用部分等,建物の区分所有等に関する法律18条1項本文,建物の区分所有等に関する法律18条2項,建物の区分所有等に関する法律第1章第5節 規約及び集会
判旨
一部の区分所有者が共用部分を第三者に賃貸して得た利益に係る不当利得返還請求権は、各区分所有者に帰属し原則として各々行使可能であるが、管理者が共用部分を管理し特定の区分所有者に使用させることができる旨の規約等がある場合には、団体のみが行使し得ると解される。
問題の所在(論点)
一部の区分所有者が共用部分を第三者に賃貸して得た利得について、他の区分所有者が個別に不当利得返還請求権(民法703条)を行使することができるか。特に、管理規約等による団体的規制との関係が問題となる。
規範
一部の区分所有者が共用部分を第三者に賃貸して得た賃料のうち、各区分所有者の持分割合相当額に係る不当利得返還請求権は、各区分所有者に帰属し、原則として各自が行使し得る。しかし、区分所有法が共用部分の管理を団体的規制に服させている趣旨(同法18条1項、2項等)に鑑み、区分所有者の団体のみが当該請求権を行使できる旨を集会で決議し、又は規約で定めることができる。そして、管理者が共用部分を管理し、共用部分を使用させることができる旨の規約等の定めがある場合には、当該定めは、区分所有者の団体のみが上記請求権を行使できる旨を含むものと解される。
事件番号: 平成13(受)505 / 裁判年月日: 平成15年4月11日 / 結論: 破棄自判
入会権者らの総有に属する入会地を売却するに当たり入会権者らが入会権の放棄をした場合であっても,入会権者らが入会地の管理運営等のための管理会を結成し,その規約において入会地の処分等を管理会の事業とし,入会地の売却が管理会の決議に基づいて行われ,売却後も入会権者らの有する他の入会地が残存し,管理会も存続しているなど判示の事…
重要事実
マンションの区分所有者である被上告人が、管理規約上の無償使用の範囲を超えて、共用部分(塔屋、外壁等)を携帯電話基地局設置目的で第三者に賃貸し、賃料を得ていた。同じく区分所有者である上告人が、被上告人に対し、当該賃料のうち自己の持分割合相当額について、不当利得返還請求を提起した。本件マンションの管理規約には、管理者が共用部分を管理し、特定の区分所有者に共用部分を無償で使用させることができる旨の定めが存在した。
あてはめ
本件における不当利得返還請求権は、本来は各区分所有者に帰属するものであるが、共用部分の賃貸による収益の回復は「共用部分の管理」と密接に関連する。本件管理規約には、管理者が共用部分を管理し、特定の区分所有者に無償使用させることができる旨の定めがある。この定めは、共用部分の管理を団体的規制に委ねる趣旨であり、区分所有者の団体のみが不当利得返還請求権を行使できる旨を含んでいると評価される。したがって、上告人個人による請求権の行使は制限される。
結論
上告人は、単独で不当利得返還請求権を行使することはできない。請求棄却。
実務上の射程
区分所有法上の共用部分の管理に関する不当利得の帰属と行使を整理した重要判例である。答案上は、まず原則として「各区分所有者に帰属する」という共有の基本原則を立てつつ、規約や集会決議の存否を確認し、団体的規制による行使制限を肯定する流れで用いる。管理規約に標準的な管理権限の規定があれば、当然に行使が制限される方向で検討すべきである。
事件番号: 令和6(受)1067 / 裁判年月日: 令和7年6月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】別荘地の管理業務が、別荘地の基本的な機能や質を確保するために必要であり、未契約の所有者のみを利益享受から排除することが困難な性質を有する場合、当該所有者は、たとえ土地を利用しておらず管理業務を望んでいなかったとしても、法律上の原因なく利益を受け、管理者に損失を与えたものとして、不当利得返還義務を負…
事件番号: 令和5(受)2461 / 裁判年月日: 令和7年6月30日 / 結論: 破棄自判
不動産の管理業等を目的とする株式会社であるXは、甲別荘地内に土地を所有する者との間で個別に管理契約を締結し、甲別荘地において上記管理契約に基づく管理業務を行っており、Yは、甲別荘地内に土地を所有するものの、Xとの間で上記管理契約を締結せず、管理費を支払っていない場合において、次の⑴~⑸など判示の事情の下では、Yは、Xに…
事件番号: 平成17(オ)184 / 裁判年月日: 平成18年12月21日 / 結論: その他
破産管財人が,破産者の締結していた建物賃貸借契約を合意解除するに際して破産宣告後の未払賃料等に敷金を充当する旨の合意をし,上記賃料等の現実の支払を免れたことにより,敷金返還請求権の質権者に対し不当利得返還義務を負う場合において,法律上の原因の有無が,破産債権者のために破産財団の減少を防ぐという破産管財人の職務上の義務と…
事件番号: 平成21(受)96 / 裁判年月日: 平成22年1月19日 / 結論: 破棄自判
共有者の1人が共有不動産から生ずる賃料を全額自己の収入として不動産所得の金額を計算し,納付すべき所得税の額を過大に申告してこれを納付したとしても,他人のために事務を管理したということはできず,事務管理は成立しない。