電柱に架設中の電話線を切断しようとした以上、窃盗の実行に着手したものである。
窃盗の実行に着手したと認められる事例。
刑法235条,刑法243条,刑法43条
判旨
窃盗罪における実行の着手は、他人の財物を切断し、または物理的に支配下に移すための密接な行為を開始した時点をもって認められる。電柱に架設中の電話線を切断窃取する目的で当該電話線を切断しようとした行為は、窃盗の実行の着手にあたる。
問題の所在(論点)
窃盗罪における「実行の着手」の時期。特に、架設された電話線を切断しようとした段階で、窃盗罪の未遂が成立するか、あるいは予備の段階にとどまるかが問題となる。
規範
窃盗罪(刑法235条)の実行の着手(刑法43条前段)は、財物に対する他人の占拠を侵害し、これを自己または第三者の占拠に移す行為、すなわち窃取の具体的危険を含む行為を開始した時に認められる。具体的には、目的とする財物を奪取するためにその物理的な結合を解除しようとするなど、窃取に直接つながる行為に着手したことをもって判断する。
重要事実
被告人は、Aが管理する電柱に架設中であった電話線を切断して窃取しようと考えた。被告人は、窃盗の目的をもって、当該電話線を切断しようとしたが、その最中に巡査に発見され、逮捕された。そのため、電話線を実際に切り離して持ち去るという目的を遂げるには至らなかった。
あてはめ
被告人の行為についてみると、被告人は窃盗の目的をもって他人の財物である電話線を切断しようとしている。この「切断しようとした」行為は、電話線の占有を奪取するための本質的な作業であり、財物の物理的結合を解く直近の行為といえる。したがって、この時点で既に窃盗の具体的危険性が発生しており、窃盗の実行に着手したものと解される。巡査に発見され目的を遂げなかった点は、実行の着手後の未遂(刑法243条)として評価されるべきである。
結論
被告人が窃盗の目的で他人の財物を切断しようとしたとき、既に窃盗の着手があったと認められる。したがって、窃盗未遂罪が成立する。
実務上の射程
本判決は、窃取の対象物が固定・連結されている場合、その連結を解除しようとする行為が実行の着手にあたることを示した。司法試験においては、密接な行為(客観的危険性)の判断基準として、「財物の占有移転に向けた直接的・具体的な危険性のある行為」を説明する際の具体例として活用できる。特に、対象物を物理的に切り離す必要がある事案での着手時期の判断に資する。
事件番号: 昭和25(あ)564 / 裁判年月日: 昭和25年12月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】窃盗罪における実行の着手は、財物に対する他人の占有を侵すにつき密接な行為を開始した時点で認められる。他人のポケットに手を入れる行為は、金品を窃取する目的であれば占有侵害の危険性が高く、実行の着手に当たる。 第1 事案の概要:被告人が、他人のポケット内にある金品を窃取しようと考え、そのポケット内に手…
事件番号: 令和2(あ)1087 / 裁判年月日: 令和4年2月14日 / 結論: 棄却
被害者に電話をかけキャッシュカードを封筒に入れて保管することが必要でありこれから訪れる者が作業を行う旨信じさせ,被害者宅を訪れる被告人が封筒に割り印をするための印鑑を被害者に取りに行かせた隙にキャッシュカード入りの封筒と偽封筒とをすり替えてキャッシュカードを窃取するという犯行計画に基づいて,すり替えの隙を生じさせる前提…