被告人の供述調書の任意性を疑うべき証跡は認められないとされた事例
憲法38条3項
判旨
被告人の勾留期間が不当に長いとは認められない場合には、憲法38条2項に基づく自白の証拠能力の否定や、その他の憲法違反の問題は生じない。
問題の所在(論点)
被告人の拘禁(勾留)期間が長期に及んだ場合、それが憲法38条2項にいう「不当に長い」拘禁に該当し、その間の自白の証拠能力が否定されるべきか、あるいは憲法違反となるかが問題となる。
規範
憲法38条2項は不当に長く抑留又は拘禁された後の自白の証拠能力を否定する。判断の枠組みとしては、個別の事案ごとに拘束の目的、必要性、期間の長さ、及びその間の手続の適正性を総合的に考慮し、それが「不当に長い」拘禁といえるか否かによって決すべきである。
重要事実
被告人は勾留されていたが、その期間について被告人側から不当に長いものであるとの主張がなされた。しかし、第一審判決が掲げる証拠や記録に照らしても、当該勾留が具体的な状況下で不当に長期にわたるものであると認めるべき証跡は存在しなかった。
あてはめ
本件において、記録を精査しても被告人の勾留が不当に長いものであるとは認められない。したがって、その間に得られた供述等の証拠能力を否定する前提を欠いており、憲法38条2項違反の主張は当たらない。また、その他の供述についても任意性を疑うべき事情は認められず、憲法38条1項違反の余地もない。
事件番号: 昭和41(あ)574 / 裁判年月日: 昭和41年9月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の抑留・拘禁が不当に長いものではなく、自白の任意性を疑うべき証跡が認められない場合には、憲法38条に違反する不当な自白とはいえず、その証拠能力は否定されない。 第1 事案の概要:被告人が自白をした事案において、弁護人が憲法38条を根拠に、被告人の抑留および拘禁が不当に長いものであるとして、そ…
結論
本件の勾留は不当に長いものとは認められないため、憲法38条2項等の違憲の主張は理由がなく、上告を棄却すべきである。
実務上の射程
自白の任意性や証拠能力を争う際、単に拘束期間の絶対的な長さだけではなく、事案の性質等に照らして「不当」といえるかどうかが重要である。答案上では、自白排除法則の検討において、38条2項の「不当に長い拘禁」の存否を事実関係に即して評価する際の論拠として用いる。
事件番号: 昭和22(れ)90 / 裁判年月日: 昭和22年11月19日 / 結論: 棄却
被告人に對する勾留が、たとえ所論の如き期間(百六十日)に亘って爲されたとしても、本件事案の性質其の他諸般の事情等に照らして判断してみても、右の勾留をもつて不當に長きものと認めることができないので、右勾留期間内である原審第一回公判期日において爲された被告人の自由を断罪の資料に供することができないと論ずるのは當らない。
事件番号: 昭和28(れ)41 / 裁判年月日: 昭和29年2月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不当に長く拘束された後の自白であっても、拘束前の自白内容を繰り返したにすぎないなど、拘束と自白との間に因果関係が認められない場合には、証拠能力は否定されない。 第1 事案の概要:被告人Aは、昭和21年12月23日に勾留状が発付される前の段階で、検事の聴取に対し自白を行っていた。その後、被告人は相当…