判旨
道路交通法72条1項が定める車両等の運転者の救護義務および報告義務は、すべての運転者に対して一律に課されるものであり、法の下の平等を定めた憲法14条に違反しない。
問題の所在(論点)
道路交通法72条1項が、車両等の運転者に対して救護義務および報告義務を課していることが、憲法14条の定める法の下の平等に反し、不当な差別待遇にあたらないか。
規範
道路交通法72条1項の規定は、交通事故が発生した際、車両等の運転者に対して負傷者の救護および警察官への報告義務を課しているが、これは道路交通の安全確保という目的から、運転者の属性にかかわらず等しく課される義務である。
重要事実
上告人は、道路交通法72条1項に規定される義務が特定の者に対する法律上の差別待遇にあたり、憲法14条に違反すると主張して上告した。具体的な事故態様や義務違反の内容については判決文からは不明である。
あてはめ
道路交通法72条1項の規定は、車両等の運転者のすべてに対して、いわゆる救護義務および報告義務を科したものである。これは運転者という地位にある者全員に一律に適用されるものであり、特定の個人やグループを不当に差別するものではない。したがって、所論の法律上の差別待遇という前提自体が欠如しているといえる。
結論
道路交通法72条1項は、憲法14条に違反しない。したがって、上告を棄却する。
実務上の射程
本判決は、道交法の救護・報告義務が憲法違反でないことを簡潔に確認したものである。実務・答案上では、同義務が自己負罪拒否特権(憲法38条1項)との関係で問題となる際の前提として、義務の一般的合憲性を裏付けるものとして理解される。
事件番号: 昭和46(あ)1143 / 裁判年月日: 昭和46年9月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】道路交通法72条1項後段の規定による報告義務は、自己が刑事上の責任を問われるおそれのある事項の供述を強制するものではないから、憲法38条1項に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は自動車の運転中に事故を起こしたが、道路交通法72条1項後段に規定された警察官への報告義務を履行しなかった。これに対し…
事件番号: 昭和47(あ)1600 / 裁判年月日: 昭和48年2月15日 / 結論: 棄却
道路交通法七二条一項後段、一一九条一項一〇号の規定が憲法三八条一項に違反するものでないことは等裁判所大法廷判決(昭和三五年(あ)第六三六号同三七年五月二日言渡、刑集一六巻五号四九五頁)の趣旨に徴し明らかである。
事件番号: 昭和60(あ)1284 / 裁判年月日: 昭和62年2月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】道路交通法72条1項の救護義務及び報告義務は、憲法38条1項の自己負罪拒否特権に違反せず、また全運転者に一律に課されるものであるから憲法14条の平等原則にも反しない。 第1 事案の概要:被告人は、道路交通法違反(救護義務・報告義務違反等)に問われた事件において、同法72条1項が定める事故発生時の義…
事件番号: 昭和41(あ)446 / 裁判年月日: 昭和41年6月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】量刑の判断において、犯行後の情状や前科等の諸要素を総合的に考慮することは、社会的地位等による不当な差別には当たらず、法の下の平等を定めた憲法14条に違反しない。 第1 事案の概要:被告人は無免許運転による事故を起こした際、身代わりの犯人を警察署に出頭させた。また、被告人には過去にも度々無免許運転を…
事件番号: 昭和37(あ)2864 / 裁判年月日: 昭和38年4月30日 / 結論: 棄却
自動三輪車の運転者が、前方注視業務を怠つた過失により、道路上において歩行者に衝突し、同人を附近用水路に顛落させて頭部打撲挫創等の重傷(約三時間後に死亡)を負わせた場合、直ちに車の運転を停止して近所の人に援助を求め、同人等と協力して被害者を用水路より道路上に引き上げたが、その事故の重大であることに気づいて現場より逃れよう…