刑訴規則第二七四条によれば、刑訴法第四三三条の特別抗告の申立書には、抗告の趣旨を簡潔に記載しなければならないと定められている。この規定は抗告申立書にその理由を記載するにあたつて、他の文書の記載を引用することは許されないという趣旨である。したがつて、抗告理由の記載の引用は不適法である。
刑訴規則第二七四条の規定の趣旨と特別抗告申立書にその理由を記載するにあたつて抗告理由の記載をもつてこれに代えることの適否。
刑訴法433条,刑訴規則274条
判旨
特別抗告申立書において抗告理由を記載する際、他の文書を引用することは刑訴規則274条に反し許されない。また、特別抗告の理由は原決定に対する独自の憲法違反等を主張すべきであり、下級審への抗告理由の引用をもってこれに代えることはできない。
問題の所在(論点)
特別抗告申立書において、具体的な理由を自ら記載せずに他の文書の記載を引用することが、刑訴規則274条および刑訴法433条等の規定に照らして適法といえるか。
規範
刑訴規則274条が特別抗告申立書に抗告の趣旨を簡潔に記載すべき旨を定めているのは、理由の記載において他の文書を引用することを許さない趣旨である。また、特別抗告の理由は刑訴法405条所定の事由(憲法違反等)を具体的に主張するものでなければならず、下級審の決定に対する不服理由をそのまま引用することは不適法である。
重要事実
申立人が特別抗告を申し立てる際、その申立書に具体的な抗告理由を記載せず、「抗告理由記載の通り」として、松山地方裁判所の決定に対する抗告理由書等の他文書を引用する形で申立てを行った事案である。
事件番号: 昭和53(し)43 / 裁判年月日: 昭和53年6月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特別抗告において、抗告申立書に具体的な理由の記載がなく、かつ抗告期間内に理由書が提出されない場合には、申立は不適法として棄却される。 第1 事案の概要:申立人らは、原決定に対し特別抗告を申し立てた。申立書には「抗告理由の詳細は近く抗告理由書を提出するが、要するに刑訴法405条、411条所定事由を理…
あてはめ
申立人は抗告理由を単に「抗告理由記載の通り」と引用するにとどめている。これは、抗告の趣旨を申立書自体に簡潔に記載することを求める刑訴規則274条に抵触する。さらに、特別抗告は憲法違反等の特定の事由(刑訴法405条)を対象とする類型であるにもかかわらず、地裁決定に対する抗告理由を流用するのみでは、特別抗告としての適法な理由の主張がなされたとは評価できない。
結論
本件特別抗告の申立ては不適法であり、棄却を免れない。
実務上の射程
特別抗告のみならず、上告審等の不服申立書全般において、理由の「丸投げ的な引用」は不適法とされるリスクがあることを示す。答案作成上は、不服申立の適法要件、特に「具体的理由の明示」が必要な場面で、手続きの厳格性を説明する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和43(し)25 / 裁判年月日: 昭和43年5月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑事訴訟法433条に基づく特別抗告において、憲法違反を主張する場合には、原決定のいかなる点がどのように憲法条項に違反するかを具体的に主張しなければならず、抽象的な主張に留まるものは適法な抗告理由にあたらない。 第1 事案の概要:申立人は、自身が告訴した公務員職権濫用被疑事件について検察官がなした不…
事件番号: 昭和29(し)53 / 裁判年月日: 昭和29年10月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】付審判請求を棄却する決定は、刑事訴訟法266条1号に基づく決定であり、これに対しては同法419条等により高等裁判所へ通常抗告をすべきである。したがって、直接最高裁判所へ特別抗告を申し立てることは、不服申立権の適法な行使にあたらず認められない。 第1 事案の概要:付審判請求がなされた事案において、地…
事件番号: 昭和45(し)89 / 裁判年月日: 昭和45年11月18日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑訴法433条に基づく特別抗告において、実質的に原決定の不当を主張するにとどまり、憲法違反の具体的根拠を示さないものは、適法な抗告理由にあたらない。 第1 事案の概要:申立人は、被疑者らに対する公務員職権濫用被疑事件について検察官がなした不起訴処分を不服として付審判請求を行った。第一審及び抗告審が…
事件番号: 昭和57(し)26 / 裁判年月日: 昭和57年3月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する特別抗告(刑訴法433条)は、対象となる決定又は命令に対し、法上他に不服を申し立てることができない場合に限り許容される。 第1 事案の概要:申立人は、原決定に対し、刑訴法419条および421条に基づき、高等裁判所に対して通常の抗告をすることが可能な状況にあった。しかし、申立人は通…