罪名、罰条が恐喝であり、公訴事実の内容も「畏怖させて交付させた」とありながら、その末尾に「騙取」と記載された起訴状の記載は、検察官が「喝取」と訂正すれば足り、訴因変更の手続を必要としない
訴因の変更手続を要せず、起訴状の訂正で足りる一事例
刑訴法256条1項,刑訴法256条2項,刑訴法256条3項,刑訴法256条4項,刑訴法312条1項
判旨
起訴状に記載された公訴事実の末尾に「騙取」とあっても、文脈上「喝取」の誤記であることが明白であり、罪名や罰条も恐喝罪として表示されている場合には、訴因変更手続を経ることなく誤記を訂正して審判を行うことができる。
問題の所在(論点)
公訴事実に「畏怖させて交付させた」という恐喝の態様を記載しつつ、結びに「騙取」という詐欺を示唆する文言がある場合、これを「喝取」に訂正するに際して、刑事訴訟法312条1項に基づく訴因変更手続を要するか。
規範
起訴状の記載内容(公訴事実、罪名、罰条)を総合的に観察し、特定の表現が文脈上明らかに誤記であると認められる場合には、刑事訴訟法312条1項の訴因変更手続を経ることなく、その誤記を訂正して審判の対象とすることが許される。
重要事実
被告人は路上において、被害者Aに対し、自らが専売公社の職員であり、命令に応じなければ処罰を受けるかもしれないと畏怖させ、煙草300個を交付させた。起訴状の公訴事実には「畏怖させ……交付させてこれを騙取した」と記載されていたが、罪名は「恐喝」、罰条は「刑法249条1項」と表示されていた。第一審の証拠調べ終了後、検察官が「騙取」を「喝取」と訂正する旨を申し立て、裁判所がこれを許可した。
あてはめ
本件起訴状には、被告人が被害者を「畏怖させ」て財物を交付させた旨が具体的に記載されており、罪名も恐喝、罰条も刑法249条1項と明示されている。これらの記載を総合すれば、末尾の「騙取」という文言は「喝取」の単純な誤記であることは明白である。また、第一審において検察官の訂正申立に対して異議が述べられた形跡もなく、被告人の防御に実質的な不利益を生じさせるものでもない。したがって、訴因変更の手続を履践する必要はないと解される。
結論
訴因変更手続を経ずに誤記を訂正した審判に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
訴因変更の要否に関する判断基準のうち、単純な誤記の訂正が許容される範囲を示したものである。答案上は、記載の矛盾が明白であり、かつ罪名・罰条等の他の記載から被告人が防御すべき範囲が特定されている場合に、訴因変更不要の論理として活用できる。
事件番号: 昭和31(あ)1442 / 裁判年月日: 昭和31年11月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】起訴状に記載された欺罔行為の内容と、判決で認定された事実との間に相違があっても、訴因の同一性が失われず、かつ被告人の防御に実質的な不利益を及ぼさない場合には、訴因変更の手続きを経ることなく当該事実を認定できる。 第1 事案の概要:被告人が詐欺罪で起訴された際、起訴状には被害者Aに対して弄した「虚言…
事件番号: 昭和29(あ)2127 / 裁判年月日: 昭和31年6月5日 / 結論: 棄却
刑法二四六条一項詐欺の訴因を同条二項詐欺の認定に変更する場合のごときは、訴因変更手続を要しないものと解するのが相当であり、被告人の防禦を困難ならしめる虞もないのが通常である。