法廷等の秩序維持に関する法律二条一項にいう「暴言」にあたるとされた事例
法秩法2条1項
判旨
弁護人が法廷で裁判長に対し「裁判長はうそつきであります」と述べることは、それ自体で法廷等の秩序維持に関する法律上の「暴言」に該当し、弁護人の本来の職務とは無関係である。また、秩序維持のための制裁手続は、憲法上必ずしも公開の法廷で行うことを要しない。
問題の所在(論点)
1. 裁判長を「うそつき」と称する発言が、法廷等の秩序維持に関する法律2条1項の「暴言」に該当するか。2. 弁護人による当該発言を処罰することが、表現の自由や弁護権に違反しないか。3. 秩序維持法に基づく制裁手続を非公開で行うことが憲法82条等に違反しないか。
規範
法廷等の秩序維持に関する法律2条1項にいう「暴言」とは、裁判所の権威を著しく損なうか、または法廷の平穏を害する不穏当な言辞を指す。弁護人の表現の自由や弁護権(憲法21条、37条3項)に照らしても、職務上の必要性を欠く中傷的な発言は保護の対象とならない。また、同法に基づく制裁手続は性質上、公開裁判の原則(憲法37条1項、82条1項)が必ずしも適用されない。
重要事実
弁護人が裁判所内において、裁判長に対し「裁判長はうそつきであります。」という発言を行った。これに対し、裁判所は法廷等の秩序維持に関する法律に基づき、秩序を乱す行為として制裁を科した。抗告人は、当該発言が弁護人の職務範囲内であることや、手続が非公開であることの憲法違反を主張して抗告した。
あてはめ
本件発言は、裁判官の個人的人格を直接的に攻撃する性質のものであり、訴訟指揮に対する正当な異議申し立ての範囲を明らかに逸脱している。このような中傷的な言辞は、それ自体で法廷の秩序を乱す「暴言」といえる。また、客観的にみて「弁護人の本来の職務」とは何ら関係がないため、弁護権の行使として正当化される余地はない。手続面についても、判例の趣旨に照らせば、裁判の公開原則は本件のような秩序維持のための制裁手続には及ばない。
事件番号: 昭和54(秩ち)3 / 裁判年月日: 昭和54年4月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法廷等の秩序維持に関する法律に基づく制裁裁判に対する抗告において、実質的に単なる法令違反を主張するものは、同法6条1項に規定する適法な抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:法廷等の秩序維持に関する法律に基づき置かれた制裁に関し、抗告人が抗告を申し立てた。抗告人は憲法違反を主張していたが、その…
結論
本件発言は暴言にあたり、これに制裁を科すことは合憲である。また、非公開での手続も違憲ではないため、抗告は棄却される。
実務上の射程
法廷における弁護人の発言が「暴言」として制裁対象となる基準を示したもの。弁護権の行使であっても、裁判官への人身攻撃や職務と無関係な侮辱的言辞は保護されないという限界を画定する際に活用できる。また、秩序維持手続の非公開性を正当化する根拠としても重要である。
事件番号: 昭和44(秩ち)1 / 裁判年月日: 昭和44年5月20日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法廷等の秩序維持に関する法律(本法)は、制裁を科すための要件を具体的に定めており、憲法31条、82条1項、21条1項、32条、37条3項等に違反しない。法廷の秩序維持を目的とした制裁規定の構成要件は明確であり、適正手続等の憲法上の諸原則に抵触するものではない。 第1 事案の概要:申立人らは、法廷等…
事件番号: 昭和53(秩ち)1 / 裁判年月日: 昭和53年3月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法廷等の秩序維持に関する法律に基づく制置に対する抗告において、具体的な憲法違反の指摘を欠く違憲主張や、単なる法令違反の主張は、同法6条1項所定の適法な抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:法廷等の秩序維持に関する法律に基づき下された何らかの制置(具体的な違反行為の内容は判決文からは不明)に対…
事件番号: 昭和51(秩ち)3 / 裁判年月日: 昭和51年11月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法廷等の秩序維持に関する法律に基づく特別抗告において、氏名を記載できない合理的な理由がないにもかかわらず、氏名の記載を欠く申立書による抗告は不適法である。 第1 事案の概要:本件申立人は、法廷等の秩序維持に関する法律による制裁の裁判に対し、最高裁判所へ特別抗告を申し立てた。その際、申立人は申立書の…
事件番号: 昭和46(秩ち)3 / 裁判年月日: 昭和46年6月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法廷等の秩序維持に関する法律に基づく制裁に対する抗告において、単に法体系の解釈に誤りがあるとする主張は、同法6条所定の適法な抗告理由には当たらない。 第1 事案の概要:本件は、裁判所が法廷等の秩序維持に関する法律に基づき下した決定に対し、抗告人が抗告を申し立てた事案である。抗告人は、原決定が憲法を…