債務者が履行の催告に応じない場合に、債権者が催告のときから相当期間を経過した後にした解除の意思表示は、催告期間が相当であつたかどうかにかかわりなく、有効である。
催告後相当期間の経過後にした解除の効力
民法541条
判旨
債権者が期間を定めずに履行を催告した場合であっても、債務者が履行遅滞に陥っているときは、催告から相当期間を経過すれば契約を解除することができる。本件では、催告期限から約10日間の経過をもって、解除に必要な相当期間が経過したものと認められた。
問題の所在(論点)
民法541条(旧法下でも同様)の解除要件として、催告の際に期間を定めなかった場合、または定めた期間が不相当であった場合であっても、催告後に相当期間が経過すれば有効に契約を解除できるか。
規範
債務者が履行遅滞にある場合、債権者が期間を定めずに履行の催告をしたときであっても、その催告から「相当の期間」を経過したときは、民法541条に基づく解除権が発生する。
重要事実
債務者が履行遅滞に陥っていたところ、債権者は履行の催告を行った。この催告において具体的な期間の定めがあったかは判文上明確ではないが、催告期限とされる昭和24年12月31日から、実際に解除の意思表示がなされた同25年1月10日までの間に約10日間が経過していた。債務者はこの間、依然として債務を履行しなかった。
事件番号: 昭和32(オ)705 / 裁判年月日: 昭和34年2月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】期間を定めずに催告をした場合であっても、債務者が履行遅滞に陥っているときは、催告の時から相当の期間を経過すれば、解除権を行使し得る。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)は、昭和27年度分の賃料の支払を怠っていた。被上告人(賃貸人)は、本件訴訟の訴状の送達をもって、契約解除の前提となる催告を行った。…
あてはめ
履行の催告期限である12月31日から、解除の意思表示がなされた1月10日までの「日数が、本件契約解除の前提として相当の期間である」と評価される。催告自体に期間の定めが欠けていても、結果として催告から解除までの間に客観的な相当期間(約10日間)が経過している以上、解除の効力を妨げるものではないといえる。
結論
期間を定めない催告であっても、催告から相当期間が経過した後の解除は有効である。本件解除は有効とした原審の判断を是認し、上告を棄却する。
実務上の射程
履行遅滞による解除の要件に関するリーディングケース。答案上、催告期間の定めの有無にかかわらず「客観的に相当な期間が経過したか」が重要であることを論証する際に活用できる。期間の長短は事案の性質に依るが、本件のような約10日間が「相当」とされるメルクマールの一つとなり得る。
事件番号: 昭和27(オ)158 / 裁判年月日: 昭和32年1月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法541条の催告において、期間を定めない催告であっても、催告の時から客観的に相当な期間が経過した場合には、解除権が発生する。 第1 事案の概要:債権者が債務者に対し、履行の催告を行った。その際、具体的な履行期間(「○日以内」等)を定めていなかった。その後、客観的に債務の履行に必要とされる相当な期…
事件番号: 昭和31(オ)258 / 裁判年月日: 昭和32年11月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】催告期間内に「本旨に従う履行の提供」がなされない限り、解除権の発生を妨げることはできず、期間経過後の履行提供は解除の効力を左右しない。また、特段の事情がない限り、有効な催告に基づく解除権の行使は権利の濫用には当たらない。 第1 事案の概要:上告人は債務の履行を怠り、被上告人から相当期間を定めた催告…
事件番号: 昭和27(オ)687 / 裁判年月日: 昭和29年7月27日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】履行の催告において定められた期間が不相当に短い場合であっても、催告自体は有効であり、催告から客観的に相当な期間が経過した時点で解除権が発生する。 第1 事案の概要:上告人と相手方との間の契約において債務不履行が生じ、上告人が履行を催告した。しかし、その際に設定された催告期間が不相当に短かったため、…