一 罹災都市借地借家臨時処理法第二条第一項但書に「その土地を権原により現に建物所有の目的で使用する者」というのは、同条項本文の賃借申出当時現に権原により建物所有の目的で当該土地を使用する者を意味する。 二 仮処分により保全せんとする賃借権が土地の一部について存するに過ぎない場合は、処分禁止の措置は、この部分のみについて講ずべきである。
一 罹災都市借地借家臨時処理法第二条第一項但書の意義 二 一筆の土地の一部についての仮処分
罹災都市借地借家臨時処理法2条,民訴法755条,民訴法758条3項
判旨
一筆の土地の一部について賃借権を主張する場合であっても、仮処分は請求保全に必要な限度においてのみなされるべきであり、分筆登記を代位申請することで執行可能である以上、土地全部に対する処分禁止仮処分をなすことは許されない。
問題の所在(論点)
一筆の土地の一部についての権利を保全するために、土地全部に対する処分禁止の仮処分を発令することは、仮処分の必要性の限度(民事保全法上の必要性)を超え、許されないか。また、土地の一部に対する仮処分の執行は法律上可能か。
規範
仮処分は請求保全の目的を達するに十分かつ必要な限度においてのみなされるべきである。一筆の土地の一部が目的である場合、当該部分を特定して仮処分を行うことは可能であり、仮処分債権者は債務者に代位して分筆登記の申請を行うことで、当該一部に対する執行を完了させることができる。
重要事実
被上告人は、一筆の土地(約120坪)のうち、戦時中に建物が除却された一部(28坪)について、罹災都市借地借家臨時処理法に基づく賃借権を主張した。この賃借権に基づく引渡請求権を保全するため、被上告人は本件土地全部に対する処分禁止の仮処分を申し立て、原審は「土地の一部のみの処分禁止を登記簿に記入することは法律上不可能である」として、土地全部に対する仮処分を認可した。
あてはめ
仮処分は必要最小限度でなされるべきところ、本件で保全すべき権利は土地の一部28坪に過ぎない。この一部が全体のいずれの部分か明確であれば、債権者は仮処分命令正本を代位原因証書として、債務者に代位して分筆登記の手続きを執ることができる。分筆後の登記記入は可能であるから、実務上の執行不能を理由に土地全部を拘束する必要はない。したがって、目的外の部分まで処分を禁止することは、保全の必要性の範囲を逸脱しているといえる。
結論
一筆の土地の一部を目的とする仮処分において、土地全部を対象とすることは必要性の範囲を逸脱し、許されない。土地の一部を特定した上で、代位による分筆登記の手続きを経て執行すべきである。
実務上の射程
民事保全法における「保全の必要性」の範囲を画定する重要な判例である。答案上は、一部の登記が不可能な場合でも代位分筆という手段があることを指摘し、目的外の部分への仮処分の効力波及を否定する論拠として用いる。また、本判決の別論点(借地権の成立要件)は、不法占拠から始まった占有であっても、権利主張時において正当な権原があれば保護されることを示しており、借地借家法等の事案でも転用可能性がある。
事件番号: 昭和27(オ)418 / 裁判年月日: 昭和29年4月30日 / 結論: 棄却
罹災都市借地借家臨時処理法第二条第三項にいわゆる「正当な事由」があるか否かは、土地所有者及び賃借申出人がそれぞれその土地の使用を必要とする程度、その他双方の側に存する諸般の事情を綜合して判定すべきである。