特定の松材の引渡を命ずる判決の主文に松材を特定するに足る表示がないとしても、判決理由により、その主文に表示された松材が特定の松材を指すものであることが明白であれば、判決主文の右の瑕疵は、これをもつて上告の理由となすことはできない。
主文の瑕疵と上告理由
民訴法191条,民訴法394条
判旨
山林の売買において、当事者が実地検分の上で現存する樹木全部を目的とした場合、表示された数量が代金算定の基準に過ぎないときは、現実の数量が公表された数量の約半分であっても数量指示売買には当たらない。
問題の所在(論点)
実地検分を経て「数量の過不足を問わない」との合意がある場合、実際の数量が約定の約半分であっても、数量指示売買としての権利主張や信義則に基づく拒絶が認められるか。
規範
売買契約において「数量を指示して売買をしたとき」(民法565条)に当たるか否かは、当事者が特定の数量が存在することを前提として契約の要素としたか、あるいは単に代金算定の便宜上の標準として数量を表示したに過ぎないかという、契約の趣旨解釈によって決すべきである。当事者が目的物を実地に検分し、その現況通りの引渡しを合意したと認められる場合には、特段の事情がない限り、数量の過不足を問わない趣旨の売買と解される。
重要事実
売主(被上告人)は、山林の松材が2万才以上あると聞いて買い受けた後、買主(上告人)に対し「高齢で受渡に立ち会うのが困難なため、数量の過不足は問わず合計1万8000才あるものとして取引したい」旨の意向を伝えた。買主はこれに対し、仲介人を介して了承した上、売主と共に現地を実地に検分して本件山林を買い受けた。しかし、実際の数量は約半分の9000才程度であったため、買主は数量不足を理由に残代金の支払を拒絶し、信義則違反等を主張した。
あてはめ
本件売買では、売主から「数量の過不足をいわない」という明確な意向が伝えられ、買主もこれを了承した上で実地検分を行っている。この事実に照らせば、本件の目的物は「実地に検分した当該山林に存在する材木全部」そのものであり、1万8000才という数値は単なる価格算定の基準にすぎず、契約の要素(数量指示)にはなっていない。数量が現実には約半分であったとしても、当初から過不足を問わない趣旨の契約である以上、残代金の全額請求が直ちに信義則に反するものとはいえない。
結論
本件売買は一定数量の材木を目的としたものではなく、数量不足を理由とする主張は認められない。上告棄却。
実務上の射程
契約書に数量が記載されていても、実地検分や「公簿売買(現況売買)」の合意がある場合には数量指示売買が否定されることを示す。特に不足分が著しい場合(本件では約半分)であっても、合意のプロセス(過不足を問わない旨の明示)が重視される点に実務上の注意が必要である。
事件番号: 昭和45(オ)556 / 裁判年月日: 昭和45年11月5日 / 結論: 棄却
(省略)
事件番号: 昭和43(オ)1035 / 裁判年月日: 昭和43年12月20日 / 結論: 棄却
民法第五六五条にいういわゆる数量指示売買とは、当事者において目的物の実際に有する数量を確保するため、その一定の面積・容積・重量・員数または尺度のあることを売主が契約において表示し、かつ、この数量を基礎として代金額が定められた売買を指称するものである。