建物に対する強制競売において、借地権の存在を前提として売却が実施されたことが明らかであるにもかかわらず、代金納付の時点において借地権が存在しなかった場合、買受人は、そのために建物買受けの目的を達することができず、かつ、債務者が無資力であるときは、民法五六八条一項、二項及び五六六条一項、二項の類推適用により、強制競売による建物の売買契約を解除した上、売却代金の配当を受けた債権者に対し、その返還を請求することができる。
借地権付き建物に対する強制競売において借地権が存在しなかった場合と民法五六八条一項、二項及び五六六条一項、二項の類推適用
民法566条1項2項,民法568条1項2項,民事執行法60条,民事執行法62条,民事執行法79条
判旨
建物の強制競売において借地権が存在することを前提に売却が実施されたが、実際には代金納付時に借地権が存在しなかった場合、買受人は民法568条・566条を類推適用して契約を解除し、配当を受けた債権者に代金返還を請求できる。
問題の所在(論点)
強制競売において、売却の前提とされた借地権が実際には存在しなかった場合、買受人は民法568条等の類推適用により売買契約を解除し、配当を受けた債権者に対して代金の返還を請求できるか。借地権の欠如が「物の瑕疵(隠れた瑕疵)」にあたるのか、「権利の瑕疵」に準じて扱われるのかが問題となる。
規範
建物の強制競売手続において、現況調査報告書、評価書、物件明細書の記載等により、建物のために借地権が存在することを前提として売却が実施されたことが明らかである場合には、建物の買受人は借地権を建物に従たる権利として当然に取得することが予定されている。したがって、代金納付時に実際には借地権が存在せず、買受人が建物買受けの目的を達することができず、かつ債務者が無資力であるときは、民法568条1項、2項および566条1項、2項(※現行法568条、565条、564条等参照)を類推適用し、買受人は売買契約を解除した上で、配当を受けた債権者に対し代金の返還を請求できる。
重要事実
債務者Dは、本件土地に借地権を有し本件建物を所有していた。本件建物の強制競売手続において、執行官の現況調査報告書や裁判所の物件明細書には「借地権が存在し買受人はこれを承継できる」旨が明記され、評価額も借地権価格を考慮して算出されていた。買受人(被上告人)はこれらの書類を閲覧して入札し、代金を納付したが、実際には納付前に地主から賃料不払を理由に借地契約が解除されていた。Dは無資力であったため、買受人は売買契約を解除し、配当を受けた債権者(上告人)に対し代金返還を求めた。
あてはめ
本件では、強制競売の各関係書類において借地権の存在が明記され、それを前提に最低売却価額が決定されていた。買受人は建物の所有権と共に従たる権利である借地権を当然に取得することを予定して入札している。しかし、代金納付時には既に元々の借地権が消滅しており、買受人は目的を達することができない。これは、権利の一部が存在しない場合や制限がある場合と同様の状況にあり、債務者が無資力である以上、公平の観点から、買受人に解除および債権者への代金返還請求を認めるべきである。
結論
買受人は、民法568条1項、2項および566条1項、2項の類推適用により、強制競売による売買契約を解除し、配当を受けた債権者に対し代金の返還を請求できる。
実務上の射程
強制競売における借地権の存否という重大な権利関係の不一致について、実質的に「権利の瑕疵」と同様の救済(568条の類推適用)を認めた射程の長い判例である。答案上は、競売における担保責任の特則を論じる際、借地権を建物に付随する「権利」の性質として捉え、公平の観点から類推適用の可否を論じる際に用いる。
事件番号: 昭和27(オ)563 / 裁判年月日: 昭和28年4月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律所定の上告理由に該当せず、かつ法令の解釈に関する重要な主張も含まない場合は、上告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:上告人が提起した本件上告について、その論旨が「最高裁判所における民事上告事件の審判の特例に関する法律」の各号に掲げる事由のい…
事件番号: 昭和25(オ)9 / 裁判年月日: 昭和29年1月28日 / 結論: 破棄差戻
【結論(判旨の要点)】当事者が主張していない重畳的債務引受の事実を裁判所が認定して判決の基礎とすることは、弁論主義に違反し許されない。 第1 事案の概要:被上告人(買主)は、売買契約の売主が上告人及び共同被告Dの2名であると主張した。これに対し、上告人は売主は自分単独であり、後に免責的債務引受がなされたと抗弁した。しか…