一 本件の第一審裁判所は旭川地方裁判所名寄支部であり、公訴提起の檢察官は旭川地方檢察廳名寄支部檢事事務取扱である名寄區檢察廳副檢事慶松貞幹であることは一見記録上明確なところであり、所論も之を認めるところである。而してかかる場合公訴の有効であることは、既に當裁判所の判例とするところである。(昭和二三年(れ)第一六三號同二四年四月七日第一小法廷判決) 二 所論は檢察廳事務章程は、檢察廳の内部規定であり、從つて之を以つて檢察廳法の内容を改變する所謂法律事項を規定することは出來ないしかるに同章程第一三條の規定は、檢察廳法の内容を變改する無効のものであり、從つて此章程第一三條の規定に基ずいて提起された本件公訴は不適法のものであると主張するのである。同章程が檢察廳の内部規程であることはその内容から見て明らかである。從つて同章程の規定を以つて檢察廳法の内容を變改することの出來ない性質のものであることは所論のとおりである。しかし檢察廳法第一二條は「檢事總長、檢事長又は檢事正は、その指揮監督する檢察官の事務を、自ら取り扱い、又はその指揮監督する他の檢察官に取り扱はせることができる。」と規定しているところであり、章程第一三條は「地方檢察廳の檢察官に差示があるときは、檢事正は、その廳の檢察官の事務を、随時、その廳の所在地の區檢察廳の檢察官に取り扱はせることができる。」と規定するところであつて、法の規定の趣旨に從つて之に筋道を立て、之を整然と具體化しているに過ぎないものであることは、容易に之を領得することができるのである。而して之各規定の根基とするところは、即ち檢事同一體の原則から來ているものであることも、亦首肯できるところである。以上何れの點から看ても章程第一三條の規定は、所論の如く毫も檢察廳法の規定を變改し、若しくはその趣旨精神に反するものでないことは極めて明らかというべきである。
一 副檢事が地方檢察廳の檢察官事務取扱としてなした公訴提起の効力 二 檢察廳事務章程第一三條と檢察廳法第一二條
檢察廳法12條,檢察廳法16條,急刑訴法410條6號,檢察廳事務章程13條
判旨
検事正が地方検察庁の検察官に代わり、管内の区検察庁の検察官に地方裁判所に対する公訴提起の事務を取り扱わせることは、検察庁法12条の趣旨を具体化したものであり、検事同一体の原則に基づき適法である。
問題の所在(論点)
区検察庁の検察官(副検事)が、地方裁判所の管轄事件について地方検察庁の検察官の事務として公訴を提起することの適法性、およびその根拠となる内部規定(検察庁事務章程)の有効性。
規範
検事総長、検事長または検事正は、検察庁法12条に基づき、その指揮監督する検察官の事務を自ら取り扱い、または指揮監督する他の検察官に取り扱わせることができる。この規定は、検察官は検事総長を頂点とする単一の階層組織を形成し、互いにその権限を代行・移転し得るという「検事同一体の原則」を根拠とするものである。したがって、内部規程(検察庁事務章程)に基づき、地検の検察官に差支えがある場合に区検の検察官に地検の事務を代行させることは、同法の趣旨を具体化したものとして有効である。
事件番号: 昭和28(あ)24 / 裁判年月日: 昭和29年6月29日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】犯情の類似した犯人の間に処罰の差異が生じたとしても、そのことのみをもって憲法14条の法の下の平等の原則に違反するということはできない。 第1 事案の概要:被告人は実刑判決を受けたが、弁護人は「犯情が類似している他の犯人と比較して、被告人のみを実刑に処したのは不当であり、憲法14条に違反する」として…
重要事実
旭川地方裁判所名寄支部に対し公訴を提起した検察官は、旭川地方検察庁名寄支部の検事事務取扱を命ぜられた、名寄区検察庁の副検事であった。弁護人は、検察庁事務章程13条(地検の検察官に差支えがある際に区検の検察官に事務を取り扱わせる旨の規定)は内部規定に過ぎず、法律事項である検察庁法の内容を改変するものであり無効であるため、本件公訴提起も不適法であると主張して上告した。
あてはめ
検察庁法12条は、上官の指揮監督権として事務の承継・移転を認めている。本件において、検事正が章程に基づき区検の検察官に地検の事務を取り扱わせたことは、同法の規定を整然と具体化したものに過ぎない。これは検事同一体の原則から導かれる合理的な事務配分といえる。したがって、当該内部規定は法律を変改するものではなく、これに基づき行われた公訴提起の手続に違法はない。
結論
本件公訴提起は適法であり、検察庁事務章程13条を無効とする上告趣意には理由がない。本件上告は棄却されるべきである。
実務上の射程
検察官の権限行使における「検事同一体の原則」の具体例を示す。答案上では、公訴提起等の検察事務が所属庁の管轄を超えて行われた場合の適法性根拠として、検察庁法12条とともに本判例のロジック(検事同一体の原則と事務の具体的運用)を引用できる。
事件番号: 昭和23(れ)1658 / 裁判年月日: 昭和24年3月29日 / 結論: 棄却
一 すべて裁判官は憲法及び法律にのみ拘束されることは憲法第七六條第三項の規定するところであり、從つて、下級裁判所の裁判官といえども訴訟事件の審判に當つて憲法適否の判斷をすることができることは當裁判所の判例とするところである。(昭和二二年(れ)第三四二號同二三年一二月八日大法廷判決) 二 上告申立人は法定の期間内に上告趣…
事件番号: 昭和26(れ)1497 / 裁判年月日: 昭和26年11月22日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公訴事実と裁判所が認定した事実との間に、共犯の有無、犯罪の態様、物体の数量等に多少の相違があっても、客観的出来事としての同一性を失わない限り、訴因変更等の手続を経ずとも事実認定を行うことが可能である。また、複数の販売行為を包括一罪として処理することは適法であり、併合罪として処断すべきとの主張は被告…
事件番号: 昭和25(れ)1840 / 裁判年月日: 昭和26年5月11日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】量刑不当の主張は、刑事訴訟法応急措置法13条2項(現行刑事訴訟法405条等に相当)に基づき、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人側が上告を提起したが、その主たる理由は量刑が不当であるという点に尽きていた(具体的な犯罪事実は本判決文からは不明)。 第2 問題の所在(論点):量刑不…
事件番号: 昭和23(れ)1196 / 裁判年月日: 昭和24年4月30日 / 結論: 破棄差戻
豫審判示代理判事の被告人Aに對する訊問調書は、強制處分請求書の内容を引用しているけれども同請求書は更に司法警察官の意見書が引用されて居つて具体的には犯罪事實の記載はないのであるから、右訊問調書を罪證に供するためには、右訊問調書と共に右強制處分請求書も及び前記司法警察官の意見書を證據調しなければならない。