民法第二一三条の規定は、農地を賃借してその引渡を受けた者と土地の所有者との間にこれを準用すべきである。
民法第二一三条の規定は土地の賃借人に準用されるか。
民法213条,民法267条
判旨
賃借地の引渡しを受け対抗要件を備えた農地賃借人は、民法213条(分割等による囲繞地通行権)の規定を準用して公道への通行権を主張し得るが、不法占有者や単なる占有者に対して同条を準用することは許されない。
問題の所在(論点)
1. 適法な農地賃借人に民法213条に基づく囲繞地通行権が認められるか。 2. 権利に基づかない単なる占有者に同条の準用が認められるか。 3. 当事者が賃借権に基づき請求している場合に、裁判所が占有権を理由に認容できるか。
規範
民法213条の囲繞地通行権に関する規定は、土地の所有権のみならず、賃借土地の引渡しを受けて現に賃借権を有する賃借人にも準用される。しかし、法律上の権利に基づかない単なる占有者に対して同条を準用することは認められない。また、民事訴訟において、当事者が主張していない権利(例:占有権)を根拠として請求を認容することは、当事者の申立てざる事項について判決するものであり許されない。
重要事実
D所有の土地が分筆された結果、B1が明治年間から適法に賃借・耕作する農地(b)が袋地となり、公道に出るには上告人所有の土地(c・d)を通行する必要が生じた。一方で、B2は農地関係法令の許可を得ずに同土地の一部を賃借・耕作していた(無効な賃借)。B1及びB2は、上告人が設置した通行妨害となる板垣の撤去を求めて提訴した。原審は、B1について民法213条を準用して撤去を認め、B2については賃借権は否定しつつも、主張のない占有権(民法198条)や同213条の準用に基づき撤去を認めた。
あてはめ
B1については、先代から承継した適法な賃借権に基づき現に土地を占有しているため、民法213条を準用して通行権を認めるのが相当である。これに対し、B2は農地法上の許可を欠く無効な賃借による占有者に過ぎず、単なる占有者に対して同条を準用することは法の予定するところではない。また、B2は一貫して賃借権に基づき請求しており、占有の訴えを提起していないにもかかわらず、原審が占有権に基づき請求を認めた点は、処分権主義に反し違法である。
結論
B1の請求は、民法213条の準用による通行権に基づき認められる。他方、B2は適法な賃借権を有さず、単なる占有者として同条の準用を受けることもできないため、B2の請求は棄却されるべきである。
実務上の射程
本判決は、囲繞地通行権(210条〜213条)が所有権のみならず、土地賃借権などの利用権にも準用されることを認めた重要判例である。答案上は、賃借人の物権的請求権や通行権が問題となる場面で、本判決の法理を援用して賃借人の法的地位を保護する論理を展開する際に用いる。また、処分権主義(民訴法246条)の不意打ち判決禁止の観点からも参照される。
事件番号: 昭和32(オ)989 / 裁判年月日: 昭和35年7月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公道への通路であった廃道敷等の土地所有者が、一般公衆の通行を拒絶する意思を表明したことにより袋地が生じた場合、民法210条1項に基づき囲繞地通行権が認められる。 第1 事案の概要:被上告人らの所有地と公道の間に、上告人所有の廃道敷(本件土地)があった。本件土地は元々公道であったが大正時代に廃止され…
事件番号: 昭和61(オ)181 / 裁判年月日: 平成2年11月20日 / 結論: 棄却
民法二一三条の規定する囲繞地通行権は、通行の対象となる土地に特定承継が生じた場合にも消滅しない。