民法二一三条の規定する囲繞地通行権は、通行の対象となる土地に特定承継が生じた場合にも消滅しない。
民法二一三条の囲繞地通行権の対象地の特定承継と当該通行権の帰すう
民法210条,民法213条
判旨
土地の一部譲渡により生じた無償の囲繞地通行権(民法213条)は、残余地の特定承継人が現れた場合でも消滅せず、袋地所有者は残余地以外の囲繞地について210条1項の通行権を主張できない。
問題の所在(論点)
土地の一部譲渡によって生じた袋地の所有者が、民法213条2項に基づき残余地に有する無償の囲繞地通行権は、残余地が第三者に譲渡された場合に消滅し、210条1項の一般原則に立ち戻って他の囲繞地の通行を請求できるか。
規範
民法213条が定める囲繞地通行権は、土地の利用調整を目的とするもので、対人的な関係ではなく、袋地に付着した物権的権利であり、残余地自体に課せられた物権的負担である。したがって、残余地に特定承継が生じても当該通行権は消滅せず、袋地所有者は依然として残余地についてのみ通行権を有し、210条1項に基づき他の囲繞地を通行することはできない。
重要事実
Dは所有地を合筆・分筆した上で、その一部(d地)を上告人に売却した。これにより上告人所有地(d地)は公路に通じない袋地となったが、分割時の残余地であるg地(当時はD所有)を通行できた。その後、Dはg地をFに売却し所有権移転登記を終えた。上告人は、g地の所有者がFに変わったことを理由に、210条1項に基づき被上告人らが所有する別の通路部分の通行権を主張した。
あてはめ
本件において、上告人所有地が袋地となったのはDによる一部譲渡が原因である。この時、上告人は残余地であるg地について213条に基づく通行権を取得した。この通行権はg地という土地自体に課せられた物権的負担であり、Fへの所有権移転という特定承継によって消滅するものではない。上告人は依然としてg地を通行すべきであり、被上告人ら所有の通路に対して210条1項の通行権を行使することは、他方の囲繞地所有者に不測の不利益を及ぼすため許されない。
結論
残余地の特定承継により213条の通行権は消滅しない。したがって、上告人は被上告人らの土地について囲繞地通行権を主張できず、請求は棄却される。
実務上の射程
相隣関係の物権的性質を強調した判例であり、213条の無償通行権が一度発生すれば、当事者の変更(特定承継)があってもその場所的・権利的な制約が固定されることを示す。答案では、囲繞地通行権の発生原因が「分割・一部譲渡」にある場合、その後の権利変動に関わらず210条の適用が排除される論拠として用いる。
事件番号: 昭和43(オ)1275 / 裁判年月日: 昭和44年11月13日 / 結論: 棄却
一、(省略) 二、公道に面する一筆の土地の所有者が、その土地のうち公道に面しない部分を他に賃貸し、その残余地を自ら使用している場合には、所有者と賃借人との間において通行に関する別段の特約をしていなかつたときでも、所有者は賃借人に対し賃貸借契約に基づく賃貸義務の一内容として、右残余地を当該賃貸借契約の目的に応じて通行させ…
事件番号: 平成17(受)1208 / 裁判年月日: 平成18年3月16日 / 結論: その他
自動車による通行を前提とする民法210条1項所定の通行権の成否及びその具体的内容は,公道に至るため他の土地について自動車による通行を認める必要性,周辺の土地の状況,上記通行権が認められることにより他の土地の所有者が被る不利益等の諸事情を総合考慮して判断すべきである。
事件番号: 昭和35(オ)1325 / 裁判年月日: 昭和37年10月30日 / 結論: 棄却
土地の所有者が一筆の土地全部を同時に分筆譲渡し、よつて袋地を生じた場合において、袋地の右譲渡人は、民法第二一三条第二項の趣旨に徴し、右分筆前一筆であつた残余の土地についてのみ囲繞地通行権を有するに過ぎないと解すべきである。