自作農創設特別措置法(昭和二二年法律第二四一号による改正前のもの)の規定により、農地が買収されたときは、その地上に生立する樹木は、特に買収処分の対象から除外されていないかぎり、原則として、地盤とともに国の所有に属する。
農地の買収処分の効果は地上の樹木に及ぶか。
民法86条,自作農創設特別措置法(昭和22年法律241号による改正以前のもの)3条
判旨
農地の買収処分がなされた場合、その地上に生立する樹木は、特段の除外措置がない限り土地と一体をなすものとして買収処分の効果が及ぶ。対価が不当な場合は増額請求の手続によるべきであり、対価の多寡によって買収の成否が左右されるものではない。
問題の所在(論点)
自作農創設特別措置法に基づく農地の買収処分の効力は、その地上に生立する桑樹にも及ぶか。また、対価の算定に不備がある場合、買収処分の効力自体が否定されるか。
規範
土地の上に生立する樹木は、立木法による登記や明認方法を備えない限り、土地の構成部分として地盤の所有権移転に伴い原則として一体的に移転する。この私法上の原則は、行政処分である買収においても、明文の規定や法の精神に反しない限り適用される。したがって、自作農創設特別措置法3条に基づく買収の効果は、国が特に買収対象から除外しない限り、地上樹木にも及ぶ。
重要事実
上告人が所有していた土地は、昭和22年に自作農創設特別措置法に基づき国に買収され、その後被上告人らに売り渡された。当該土地上には桑樹が生立していたが、買収に際してこれを除外する特段の措置は講じられておらず、また上告人による明認方法も備えられていなかった。上告人は、桑樹の対価が適正に支払われていないこと等を理由に、桑樹の所有権は依然として自身に帰属すると主張して争った。
あてはめ
本件桑樹には立木法上の登記や明認方法が備わっておらず、土地の構成部分と認められる。自創法上、樹木を分離して取り扱う規定や法定地上権を認める規定はなく、むしろ土地と樹木の所有者を分離させることは自作農創設の精神に反する。また、対価については土地と樹木を一体として算定されたと解される。仮に樹木の価格が考慮されず対価が不当であったとしても、それは同法14条に基づく対価増額請求の問題にすぎず、買収処分の効力そのものを否定する理由にはならない。
結論
本件土地の買収処分の効果は地上の桑樹にも及び、被上告人らはその所有権を適法に取得している。上告人の請求は認められない。
実務上の射程
土地とその定着物(樹木等)の所有権移転の一体性を確認した重要判例である。行政処分における公法関係においても、特段の規定がない限り、民法上の「定着物は土地の処分に従う」という原則が投影されることを示している。答案上は、物の性質(構成部分か否か)から出発し、処分の目的や法の趣旨を補強材料として一体性を論じる際に活用できる。
事件番号: 昭和40(オ)212 / 裁判年月日: 昭和43年4月2日 / 結論: 棄却
一、自作農創設特別措置法第三条により買収された農地の売渡を受けた者が右農地を宅地に転用する目的で他に転売しても、これにより当該土地の所有権が被買収者に復帰するものではない。 二、右の場合において、農地の売渡を受けた者が転売によつて利益を得たとしても、被買収者は、右利益について不当利得返還請求権を有しない。
事件番号: 昭和39(オ)150 / 裁判年月日: 昭和40年12月17日 / 結論: 棄却
所有者甲から農地を買い受ける旨契約して代金を支払つた乙がいまだ右による所有権移転につき県知事の許可を受けないうちに、第三者丙において、右農地買受の事実がないのに同人名義に所有権移転の県知事の許可および登記を経たうえ、右農地を占有耕作するに至つたため、乙としては、もはや右農地の所有権の移転を売主甲から受けることが至難とな…