一、自作農創設特別措置法第三条により買収された農地の売渡を受けた者が右農地を宅地に転用する目的で他に転売しても、これにより当該土地の所有権が被買収者に復帰するものではない。 二、右の場合において、農地の売渡を受けた者が転売によつて利益を得たとしても、被買収者は、右利益について不当利得返還請求権を有しない。
一、自作農創設特別措置法第三条により買収された農地の売渡を受けた者が右農地を転用の目的で転売する場合と右農地の所有権のきすう 二、右の場合における転売による利得と被買収者の不当利得返還請求権
自作農創設特別措置法(昭和21年法律第43号)3条,農地法5条,民法703条
判旨
自作農創設特別措置法に基づく買収により国は完全な所有権を取得し、売渡によってその所有権は完全に受領者に移転するため、その後の転用・転売による利益が旧所有者の損失に基づくと認めることはできない。
問題の所在(論点)
自創法に基づく農地の買収及び売渡によって、所有権は完全に移転するのか。また、売渡を受けた者が後に農地を転用・転売して利益を得た場合、旧所有者に対する不当利得が成立するか。
規範
自作農創設特別措置法及び農地法に基づく買収・売渡処分は、当該農地が農地としての機能や性質を失うことを解除条件とするものでも、信託的な譲渡でもない。国は買収により完全な所有権を取得し、売渡によりその所有権は完全に売渡を受けた者に移転する。その後の転用や転売を禁止するか否かは立法政策の問題であり、農地法の許可等の手続を履践する限り、処分は有効である。
重要事実
上告人らが所有していた土地が、自作農創設特別措置法(自創法)に基づき国に買収され、その後、被上告人らに売り渡された。被上告人らは、当該土地を農地以外に転用し、日本住宅公団へ売却して多額の利益を得た。これに対し、旧所有者である上告人らが、買収処分は農地としての利用権のみを奪ったに過ぎず、転売利益は上告人らの損失に基づく不当利得である等と主張して争った事案である。
あてはめ
自創法12条や農地法13条等は所有権移転に何ら留保を付していない。また、転用については知事等の許可を要する規定(農地法4条、5条)があるのみで、自創法による売渡地を除外していない。本件では、国による買収は憲法29条3項の正当な補償を伴う適法なものであり、国は一旦完全な所有権を取得している。したがって、被上告人への売渡により所有権は完全に移転しており、その後の転売利益は被上告人の正当な権利行使の結果であって、上告人の損失に基づくものとはいえない。
結論
国及び売渡を受けた者はそれぞれ完全な所有権を取得する。したがって、被上告人の転売利益が上告人の損失において得られたとはいえず、上告人の請求は棄却される。
実務上の射程
農地買収・売渡処分の法的性質が「完全な所有権の移転」であることを明確にした。行政処分に基づく権利変動が、その後の事情(転用等)によって当然に遡及的制限を受けないことを示す。答案では、公法上の処分による私法上の権利移転の確定性を論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和39(オ)150 / 裁判年月日: 昭和40年12月17日 / 結論: 棄却
所有者甲から農地を買い受ける旨契約して代金を支払つた乙がいまだ右による所有権移転につき県知事の許可を受けないうちに、第三者丙において、右農地買受の事実がないのに同人名義に所有権移転の県知事の許可および登記を経たうえ、右農地を占有耕作するに至つたため、乙としては、もはや右農地の所有権の移転を売主甲から受けることが至難とな…
事件番号: 昭和62(オ)1057 / 裁判年月日: 昭和63年7月1日 / 結論: 破棄自判
債権者が第三者所有の不動産の上に設定を受けた抵当権が不存在である.にもかかわらず、右抵当権の実行により第三者が不動産の所有権を喪失したときは、第三者は、売却代金から弁済金の交付を受けた右債権者に対し不当利得返還請求権を有する。