聴能は後天的の傷害があるために自由ではないが、言語機能には障害がない者は、刑法第四〇条にいう「・唖者」とはいえない。
刑法第四〇条にいう「・唖者」に該当しない一事例
刑法40条
判旨
刑法上の「瘖唖者」とは、聴能と語能の両機能を欠損した者を指し、後天的な聴能障害により聴能が不自由であっても、言語機能に障害がない者はこれに該当しない。
問題の所在(論点)
後天的な聴能障害により聴能が不自由であるが、言語機能に障害がない者が、刑法40条(旧規定)の「瘖唖者」として刑の必要的減軽または免除の対象となるか。
規範
刑法40条(削除前)にいう「瘖唖者」とは、聴能および語能の両機能を欠損した者を指すと解される。
重要事実
被告人には、後天的に生じた若干の聴能障害があり、聴能は自由ではない状態であった。しかし、言語機能については何ら障害が認められない状態であった。
あてはめ
本件被告人は、聴能については不自由な面があるものの、言語機能には障害がない。瘖唖者の定義は聴能と語能の「双方」の欠損を要するところ、被告人は言語機能を維持している以上、瘖唖者の定義を満たさないと解される。したがって、刑法上の責任能力に関する減免規定を適用する前提を欠く。
結論
被告人は、言語機能に障害がないため刑法40条(旧規定)の「瘖唖者」には該当せず、同条による刑の減軽等は認められない。
実務上の射程
本判決は旧刑法40条の解釈であるが、現在の刑事実務においても、身体的障害が責任能力(刑法39条)に及ぼす影響を検討する際、単なる身体機能の不自由さと弁別・制御能力の欠如を区別する指針となる。現在は刑法40条自体が削除されているため、直接の適用場面はないが、「瘖唖者」の定義を確定した基本判例として位置づけられる。
事件番号: 昭和28(あ)3635 / 裁判年月日: 昭和30年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の精神状態を判断するにあたり、裁判所は必ずしも常に専門家による鑑定を必要とするものではなく、諸般の事情から裁判所自ら判断することが可能である。 第1 事案の概要:被告人の精神状態に関して専門家による精神鑑定が行われなかった、あるいはその結果に基づかない判断がなされたことに対し、弁護人が公平な…