判旨
口頭弁論に提出された形跡のない証拠に基づいてなされた原審の判示は、不要な説示として扱われ、上告理由には当たらない。
問題の所在(論点)
口頭弁論に提出されていない証拠について判決中で言及されている場合、それが法令違反として上告理由(民事上告審判特例法等)に該当するか。
規範
民事訴訟において、裁判所は当事者が口頭弁論で提出していない証拠を判決の基礎とすることはできない。ただし、記録上提出の形跡がない証拠に言及した判示が含まれていても、それが結論に影響しない「不要な説示」にとどまる場合は、判決を破棄すべき違法とはならない。
重要事実
上告人は、原審において証拠(乙第1号証)に基づいた判断がなされた点等を不服として上告した。しかし、当該証拠は、記録上、原審の口頭弁論において提出された形跡が認められないものであった。
あてはめ
本件証拠(乙第1号証)は、記録上、原審の口頭弁論において提出された形跡がない。そのため、原判決において当該証拠に触れた部分は、判決の結論を導くために不可欠な判断ではなく、単なる「不要な説示」にすぎない。したがって、上告人が主張する法令解釈の誤りや重大な主張には該当しない。
結論
本件上告は棄却される。原審の判示のうち、提出されていない証拠に関する部分は不要な説示であり、判決の正当性に影響を及ぼさない。
実務上の射程
弁論主義の観点から、証拠は口頭弁論で提出される必要があるが、判決書に不要な事実認定や証拠への言及があっても、それが結論に影響しない傍論的記述であれば、直ちに上告理由とはならないことを示唆している。実務上は、判決の理由不備や理由齟齬を主張する際の限界点を見極める材料となる。
事件番号: 昭和27(オ)974 / 裁判年月日: 昭和28年5月12日 / 結論: 棄却
受託裁判官のした証拠調の結果は、当事者が受託裁判所の口頭弁論においてこれを陳述することによつて始めて援用したこととなり、裁判所の判断すべき対象となる。