刑の執行猶豫を言渡すか否かその他刑の量定をいかにするかの理由は刑訴法第三六〇條にいわゆる罪となるべき事實に該當しないから、原審が第一審の刑期と異る懲役刑を科し、その執行を猶豫する言渡をしなかつた理由を特に判示しなかつたからと云つて、原判決には毛頭違法はない。
刑の執行猶豫を言渡さなかつた理由判示の要否
刑法25條,刑訴法360條1項
判旨
検察官が控訴した事件においては不利益変更禁止の原則は適用されず、一審より重い刑を科すことができる。また、刑の執行猶予を付さない理由等の量刑上の判断は、罪となるべき事実に該当しないため、特段の理由を判示しなくとも違法ではない。
問題の所在(論点)
検察官控訴の事件において第一審より重い刑を科すことが許されるか、および執行猶予を付さない理由を判決書に明示する必要があるか。
規範
1. 刑事訴訟法402条(不利益変更の禁止)は、被告人が控訴し、又は被告人のため控訴した事件に限定され、検察官の控訴に係る事件には適用されない。2. 刑の執行猶予の成否を含む量刑の理由は、刑法335条1項(刑事訴訟法360条)に規定される「罪となるべき事実」には該当せず、その判断は裁判所の裁量に属する。
重要事実
第一審判決は、被告人に対し懲役6ヶ月・執行猶予付きの判決を言い渡した。これに対し検察官が控訴を提起したところ、原審(控訴審)は第一審よりも刑期自体は短い懲役4ヶ月を言い渡したが、執行猶予は付さなかった。被告人側は、これが不利益変更禁止の原則に反すること、および執行猶予を付さなかった理由が判示されていないことの違法を主張して上告した。
事件番号: 昭和25(あ)1225 / 裁判年月日: 昭和25年11月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】刑の量定に関する不当の主張は、刑事訴訟法405条に規定された適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:弁護人が原審の刑の量定を不服として上告を申し立てた事案であるが、具体的な犯罪事実や原審の判断内容の詳細は、本判決文からは不明である。 第2 問題の所在(論点):原審が裁量権の範囲内で行った…
あてはめ
本件は検察官による控訴に基づき開始された手続であるため、不利益変更禁止を定めた刑事訴訟法402条(旧法403条)の適用はない。したがって、仮に「懲役4ヶ月・実刑」が「懲役6ヶ月・執行猶予付き」より重い刑に当たると評価されるとしても、同条に違反するものではない。また、量刑の判断は裁判所の広範な裁量に属する事項であり、犯罪構成要件たる事実に該当しない以上、判決書において執行猶予を付さない理由を個別具体的に説示しなくとも、理由不備等の違法は生じない。
結論
検察官控訴がある以上、一審より重い刑を科すことは適法である。また、執行猶予の不付与について特段の理由を判示しなかった原判決に違法はなく、上告は棄却される。
実務上の射程
検察官控訴が介在する場合の不利益変更の可否を論じる際の根拠となる。また、量刑理由(特に執行猶予の成否)が判決の必須記載事項(罪となるべき事実)に含まれないことを示す実務上の基本判例である。
事件番号: 昭和26(れ)1249 / 裁判年月日: 昭和26年10月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】被告人の上告趣意が単なる量刑不当の主張にすぎない場合、刑事訴訟法405条の上告理由に該当しない。また、職権による破棄事由も認められない場合には、上告を棄却すべきである。 第1 事案の概要:被告人が原判決の量刑を不当として上告を申し立てた事案である。判決文からは具体的な犯罪事実や経緯の詳細は不明であ…
事件番号: 昭和24(れ)2009 / 裁判年月日: 昭和24年10月4日 / 結論: 棄却
一 刑の執行猶豫の言渡をしなかつたことを以て、憲法第一三條に云う基本的人權を侵害するものでもなく(昭和二二年(れ)第二〇一號、同二三年三月二四日大法廷判決及び昭和二三年(れ)第九五〇號同年一〇月二一日第一小法廷判決)又犯情の類似した犯人間の處罰に差異があるからとて憲法第一四條の平等の原則に違反するということもできない(…
事件番号: 昭和25(あ)2458 / 裁判年月日: 昭和26年6月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件は、上告理由が単なる訴訟法違反や量刑不当の主張に留まり、刑訴法405条の定める上告理由に該当しないとして棄却された事例である。 第1 事案の概要:弁護人は、第一審または控訴審の判断に対し、訴訟手続に違反がある点(訴訟法違反)および言い渡された刑罰が重すぎる点(量刑不当)を理由として上告を申し立…
事件番号: 昭和26(れ)316 / 裁判年月日: 昭和26年9月14日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】単なる量刑不当の主張は、刑事訴訟法応急措置法13条2項(現行の刑事訴訟法405条等に相当)に基づき、適法な上告理由には当たらない。 第1 事案の概要:被告人は、原審の判決に対して上告を申し立てたが、その上告趣意の内容は、一審および二審の量刑が重すぎるという量刑不当を主張するものであった。 第2 問…