原審で同一法令違反の罪につき共同審理のもとに有罪判決を受け、ともに上告の申立をした共同被告人の一人が、旧刑訴第四二三条所定の期間内に上告趣意書を提出しなかつたときは、他の上告申立人については既に国法としての効力を失つた右法令を適用した違法があることを理由として原判決を破棄すべき場合でも、右上告趣意書を提出しなかつた上告申立人に対しては、原判決を破棄すべきではない。 (少数意見がある。)
同一法令違反の罪につき共同審理のもとに有罪判決を受け共に上告申立をした共同被告人中一部の者に対しては右法令の失効を理由として原判決を破棄すべき場合と右上告申立人中上告趣意書を提出しなかつた者に対する裁判
旧刑訴法423条,旧刑訴法427条,旧刑訴法434条,旧刑訴法451条,銃砲火薬類取締法(明治43年法律第53号)14条,銃砲火薬類取締法施行規則(明治44年勅令第16号)22条,銃砲火薬類取締法施行規則(明治44年勅令第16号)45条
判旨
被告人が法定期間内に上告趣意書を提出しない場合において、共同被告人の上告趣意が認められ原判決が破棄されるときであっても、当然にはその利益を享受できず、決定をもって上告が棄却される。
問題の所在(論点)
共同被告人の一部が適法に上告趣意書を提出し、原判決の破棄(免訴)を受けた場合において、上告趣意書を提出しなかった共同被告人に対しても、その破棄の効力が及ぶか(旧刑事訴訟法451条の「共通」の解釈)。
規範
被告人が法定期間内に上告趣意書を提出しないときは、決定をもって上告を棄却しなければならない(旧刑事訴訟法423条、427条)。共同被告人の破棄理由が「共通」である場合でも、上告趣意書未提出の被告人に対して当然に原判決を破棄し免訴を言い渡す効力は及ばない。
重要事実
被告人Aは、BおよびCと共に、銃砲火薬類取締法施行規則違反の事実で有罪判決を受けた。A・B・Cはいずれも上告したが、被告人Aのみが法定期間内に上告趣意書を提出しなかった。一方で、BおよびCは期間内に上告趣意書を提出し、同規則の罰則規定が効力を失っている旨を主張した。最高裁判所は、BおよびCに対しては主張を認め、原判決を破棄して免訴の判決を言い渡した。
事件番号: 昭和24(れ)1128 / 裁判年月日: 昭和29年9月8日 / 結論: その他
銃砲火薬類取締法施行規則第四五条の規定は、昭和二二年法律第七二号「日本国憲法施行の際現に効力を有する命令の規定の効力等に関する法律」第一条により昭和二三年一月一日以降は国法としての効力を失つたものである。
あてはめ
旧刑事訴訟法423条および427条は、上告趣意書の不提出を独立した棄却事由として定めている。本件において、被告人Aは法定期間内に上告趣意書を提出していないため、形式的な受理要件を欠いている。共同被告人B・Cについての破棄理由(処罰規定の失効)がAにとっても共通の法的利益を有するものであっても、上告趣意書を提出しないという手続上の不備がある以上、実体的な判断を行うことなく決定で棄却されるべきである。
結論
被告人Aの上告を棄却する。
実務上の射程
本判決は旧刑事訴訟法下の判断であるが、現行法においても上告趣意書の提出遅滞が原則として棄却事由となる点(刑事訴訟法386条1項1号、414条)で共通する。被告人間での判断の不均衡が生じるとしても、被告人の訴訟活動上の不備(不提出)がある場合には、当然に共同被告人の有利な判断が波及するわけではないことを示している。
事件番号: 昭和23(れ)1235 / 裁判年月日: 昭和23年12月4日 / 結論: 棄却
被告人が上告趣意書を提出せず、辯護人が刑訴法第四二三條の法定期間内に、上告趣意書を提出し、當審におけるその選任屆を右期間經過後に提出した場合は、たとえ、同人が原審において、被告人の辯護人であつたとしても、同法第四二七條にいわゆる(上告申立人期間内ニ上告趣意書ヲ提出セサルトキニ」該當する。
事件番号: 昭和26(れ)496 / 裁判年月日: 昭和26年7月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本判決は、刑事訴訟法405条の上告理由に該当しない事案について、記録を精査しても同法411条の職権破棄事由を認めるべき事情がない場合、上告を棄却すべきであることを示したものである。 第1 事案の概要:上告人が原判決に対して上告を申し立てた事案であるが、提出された上告趣意書の内容、および事件の具体的…
事件番号: 昭和25(あ)1583 / 裁判年月日: 昭和26年6月8日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本決定は、被告人の上告趣意が刑訴法405条の上告理由に当たらず、かつ記録を精査しても同法411条を適用して職権で判決を破棄すべき事由も認められないとして、上告を棄却したものである。 第1 事案の概要:被告人が原判決(詳細は判決文からは不明)に対して上告を提起した事案である。被告人は上告趣意書を提出…
事件番号: 昭和25(あ)2458 / 裁判年月日: 昭和26年6月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】本件は、上告理由が単なる訴訟法違反や量刑不当の主張に留まり、刑訴法405条の定める上告理由に該当しないとして棄却された事例である。 第1 事案の概要:弁護人は、第一審または控訴審の判断に対し、訴訟手続に違反がある点(訴訟法違反)および言い渡された刑罰が重すぎる点(量刑不当)を理由として上告を申し立…