売買契約(特定物)の引渡後の滅失・損傷に関する記述の正誤
売買契約の目的物が特定物で、引渡後に当事者の過失でない滅失・損傷が生じた場合、買主が請求できる権利は何かを民法第567条を根拠に解説します。
先に結論
売買契約の目的物が特定物で、引渡後に当事者の過失でない滅失・損傷が生じた場合、買主が請求できる権利は何かを民法第567条を根拠に解説します。
この記事でわかること
- 特定物の引渡後に過失がない滅失・損傷は民法第567条で規定
- 買主は代金減額・損害賠償・解除等の請求権を失う
- 代金支払義務は残り、他の条文との関係も整理
この記事は、売買契約の目的物が特定物で、引渡し後に当事者双方の過失でない滅失または損傷が生じた場合、買主は追完・代金減額・損害賠償・解除を請求できないという記述が正しいかどうかを直接答えます。結論は**「正しい」**です。
1. 民法第567条の趣旨と適用範囲
民法第567条は、売主が特定物を買主に引き渡した後に、当事者双方の責めに帰すべき事由がなく目的物が滅失または損傷したときの買主の権利を限定しています。
「売主が買主に目的物(売買の目的として特定したものに限る。)を引き渡した場合において、その引渡しがあった時以後にその目的物が当事者双方の責めに帰することができない事由によって滅失し、又は損傷したときは、買主は、その滅失又は損傷を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。」 — 民法第567条
この規定は「引渡しがあった時以後」という時点が要件であり、引渡し前の滅失・損傷には適用されません(民法第566条が別途規定)。
2. 「代金の支払はできない」例外はないか
第567条は、買主が代金の支払を拒むことができない旨を付記しています(同条文第2項)。したがって、たとえ目的物が滅失・損傷していても、代金支払義務は残ります。
「この場合において、買主は、代金の支払を拒むことができない。」 — 同上
この点は、買主が代金減額や解除を主張できない根拠と合わせて理解すると、実務上のリスク管理がしやすくなります。
3. 前提条件と他の条文との関係
(a) 目的物が「特定物」かどうか
第567条は「特定物」に限って適用されます。種類・品質・数量で特定できない「総称的物」については、別途第562条・第566条が関係します。
(b) 買主の過失がないこと
過失がある場合は第562条第2項・第566条が適用され、買主は請求権を失いますが、過失がないことが前提です。
(c) 引渡しの事実
売主が「履行を提供したが、買主が受領を拒んだ」ケースでも、第567条第2項が準用され、同様の効果が生じます(民法第567条第2項参照)。
まとめ
- 記述は正しい:民法第567条は、特定物の引渡後に過失なしで滅失・損傷が起きた場合、買主は追完・代金減額・損害賠償・解除を請求できないと規定しています。
- 代金支払義務は残り、買主は支払を拒むことができません。
- 引渡前の滅失・損傷や買主の過失がある場合は、第566条・第562条が適用され、請求権が認められる点に注意が必要です。
出典
- 民法第567条(特定物の引渡後の滅失・損傷)
- 民法第566条(引渡前の滅失・損傷)
- 民法第562条(不適合物件に対する追完・減額等)
よくある質問
引渡し前に目的物が滅失した場合はどうなりますか?
引渡し前の滅失は民法第566条が適用され、買主は通知義務を果たせば代金減額や解除が可能です。
買主が代金支払を拒むことはできますか?
民法第567条は「代金の支払を拒むことができない」と明示しているため、支払義務は残ります。
売主が目的物を引渡したが、買主が受領を拒んだ場合は?
第567条第2項が準用され、引渡後に滅失・損傷した場合でも買主の請求はできません。
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