令和7年 司法試験 論文式試験 租税法 第2問
問題文と公式資料を一つにまとめ、出題の趣旨と採点実感の要点をすぐ確認できる学習ページです。
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〔第2問〕(配点:50) 株式会社A(以下「A社」という。)は上場会社であり、その事業年度は暦年である。A社は、 国内で複数のホテル(以下「Aホテル」という。)を経営し、宿泊、宴会等のサービスを提供して いるが、Aホテルの業績は、令和4事業年度以前の過去数年度にわたり低迷していた。そこで、令 和5年6月に開催されたA社の取締役会では、Aホテルの売上の増加を目的として、Aホテルのホ ームページ(以下「HP」という。)へのアクセスの増加とHPを通じた予約(以下「ネット予 約」という。)の促進を図るとともに、潜在的な顧客の属性や好み等の分析を踏まえた価格設定の 見直しとAホテルの内装の刷新を行うという方針が確認された。 この方針に従い、第一に、A社は、AホテルのHPを通じ、令和5年9月1日から同年11月3 0日までを回答期間とするアンケートを実施することとし、回答した者の中から、同年12月1日 に行う抽選で10組(当選者とその任意の同行者とのペアで計20名)に対し、対象期間(令和6 年4月1日から令和7年3月31日までの1年間)中の任意の4日間、海外のX国に滞在する旅行 を可能とするギフト券を、令和6年1月中に贈呈するキャンペーン(以下「本件キャンペーン」と いう。)を公表した。このギフト券は、往復航空券の取得と、X国所在の指定ホテルでの宿泊に利 用できる。当選者には当選の事実が令和5年12月中に伝えられ、当選者は、受領したギフト券を 利用して、旅行会社B(以下「B社」という。)を通じて旅行の予約を行う。ただし、ギフト券の 譲渡等はできず、その利用は当選者を含むペア(2名)に限定される。A社は、令和5年12月に、 B社の適正な見積りに従い1組当たり100万円を支払って10組分のギフト券をB社から購入し (A社は手数料をB社に別途支払った。)、これを令和6年1月中に当選者に贈呈すべくB社に保 管を依頼し、令和5事業年度の確定した決算において総額1000万円を販売促進費に計上した。 もっとも、A社とB社の間の契約上、このギフト券の最終的な価格は、当選者の旅行により現に要 した航空運賃やX国のホテルの宿泊料、為替レート等の変動に応じて増減され、上記1000万円 との差額は、A社とB社の間で対象期間満了時に精算される(よって、未使用のまま失効したギフ ト券の対価は、その全額がA社に返還される)旨取り決められていた。 本件キャンペーンのアンケートには数千人から回答が寄せられ、抽選の結果、個人Cを含む当選 者が確定した。Cは、令和6年1月にギフト券の贈呈を受けて、同年夏の休暇期間中に配偶者と共 にX国旅行を満喫した。 第二に、A社は、Aホテルの宿泊料金体系を見直し、早期のネット予約を誘引すべく、宿泊予定 日の半年前から1か月前までの間に、ネット予約と同時にクレジットカードで支払を完了した場合 は、通常の宿泊料の額(例えば10万円)の25%が値引きされるという選択肢(以下「早期予約 販売」という。)を令和6年1月1日から設定した。早期予約販売を選択した顧客は、予約後にキ ャンセルした場合、災害等の特別な事情がない限り、支払済みの宿泊料の額(上記の例でいえば7 万5000円)から、その20%をキャンセル料として差し引かれた残額の返還を受けることがで きる。この価格設定は人気を博し、令和7年中に宿泊予定日が到来する早期予約販売で顧客が支払 を完了した金額は、令和6事業年度終了時に7500万円あったが、同年度の確定した決算におい て、A社はこれを収益に計上していない。 第三に、A社は、本件キャンペーンのアンケートの分析結果を踏まえ、令和6年5月にAホテル のHPと内装の刷新に着手し、同年末までにこれらを完了した。A社は、改装後のAホテルの認知 度の向上及び個人株主の安定的な維持と増加を目的として、毎年10月末時点のA社株主(所定の 所有期間を満たすものに限る。)に対し、その持株数に応じた段階ごとに部屋のランクと枚数が決 まるAホテルの宿泊券(その譲渡や利用期間に制限はない。)を付与する仕組みを令和7事業年度 から導入した。これにより、国内在住の株主Dは、令和7年中に時価20万円相当のAホテル宿泊 券(一般の金券ショップに同額で売却可能である。)を、何ら負担や支出を伴うことなく受け取っ ており、令和8年中にこれを利用してAホテルに宿泊する予定である。なお、令和7年中のDの所 得又は損失は、この宿泊券を除けば、Dの勤務先である会社E(以下「E社」という。)から得た 賃金の総額500万円のみであり、Dに適用のある所得控除は基礎控除と社会保険料控除のみであ るところ、E社は、所得税法に従い、Dの賃金に係る源泉徴収義務(同法第183条第1項)を全 て履行し、これらの所得控除を考慮した上で年末調整(同法第190条)を行った。 以上の事案について、以下の設問に答えなさい。解答に当たっては、理由を付し、根拠条文があ る場合はそれを明記しなさい。ただし、租税特別措置法の適用は考慮しないものとし、事案中の年 月日にかかわらず、令和7年1月1日現在において施行されている法令に基づいて解答しなさい。 〔設 問〕 1 A社は、令和5事業年度の確定した決算において販売促進費に計上した1000万円につき、 同年度の法人税法上の所得の金額の計算に際し、その全額を損金に算入することができるか、 寄附金該当性の検討を含めて論じなさい。 2 A社は、早期予約販売に係る7500万円について、令和6事業年度及び令和7事業年度の 法人税法上の所得の金額の計算に際し、どのように扱うべきか。なお、解答に際し、消費者契 約法を考慮する必要はない。 3 A社から贈呈されたギフト券に基因するCの経済的利益(その価額は100万円とする。) は、所得税法上いつの年分のいかなる種類の所得に係る(総)収入金額として扱われるべきか。 仮にCが令和5年10月に急きょA社の社外取締役に就任した者で、就任前に回答したアンケ ートに基づいて偶然当選者になっていたとした場合、結論は変わり得るかについても論じなさ い。 4 A社から付与された宿泊券に基因するDの経済的利益は、所得税法上いつの年分のいかなる 種類の所得に係る(総)収入金額として扱われるべきか、配当所得該当性の検討を含めて論じ なさい。また、仮に令和7年分の(総)収入金額に当たる場合、Dが令和7年分の所得税につ き確定申告を要するか否かを論じなさい。なお、Dが適用し得る損失又は税額の繰越控除はな いものとする。 論文式試験問題集[経 済 法]