令和7年 司法試験 論文式試験 国際関係法(私法系) 第2問
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〔第2問〕(配点:50) A女(甲国籍)は、B男(甲国籍)とC女(日本国籍)(B及びCは生まれてから継続して甲国 に居住し、甲国で適法に婚姻した)の子であり、甲国に継続して居住していた。Bは、Aが幼いこ ろに死亡した。 Aは、進学した甲国の大学において同じ大学に通学していたD男(日本国籍、生まれてから大学 進学まで継続して日本に居住)と知り合い、A及びDは、甲国で適法に婚姻した。 以上の事実を前提として、以下の設問に答えなさい。各設問及び各小問は独立した問いであり、 全ての問いにおいて、反致については検討を要しない。また、甲国法には失踪宣告に関して以下の 規定が存在するものとする。 【甲国法】 第P条 甲国裁判所は、失踪者が最後に生存が確認された時点において、以下のいずれかに該当 する場合には、失踪宣告について管轄権を有する。 1.甲国国民であった場合 2.甲国内に常居所を有していた場合 第Q条 失踪宣告については、失踪者が最後に生存が確認された時点における失踪者の本国法に よる。 第R条 失踪者について最後に生存が確認された時から10年が経過した場合に、失踪宣告が認 められる。 第S条 第R条の規定により失踪宣告を受けた者は、最後に生存が確認された時から5年が経過 した時点で死亡したものとみなす。 〔設問1〕 AとDの婚姻からしばらくして、Dが仕事のために日本に転居することとなったため、Aは甲 国でCと同居して生活し、Dは日本で生活することとなった。その後しばらくしてAD間には子 E(日本及び甲国の重国籍)が生まれたが、AとDとはそれぞれの国で生活し、AがEを甲国内 で育てていた。E出生から1年後、Aが甲国内で行方不明となったため、DがEを引き取り、そ れ以降、D及びEは日本で生活している。Aが行方不明となってから12年が経過し、Cが死亡 した。 ところで、Cは、所有している不動産ア(日本所在)、不動産イ(甲国所在)及び不動産ウ (日本所在)のうち、不動産ア及び不動産イを、AとDが婚姻した頃、Aに対して譲渡し、A名 義に登記の移転を済ませていた。Dは、自らとEがAの財産を相続するため、また、EがCの財 産を代襲相続するためにAの失踪宣告を日本の裁判所に申し立てた。裁判所は、この申立てにつ いて日本の裁判所の国際裁判管轄権が認められるとした上で、Aの失踪宣告の審判をした。以上 の事実を前提として、以下の問いに論拠を示しつつ答えなさい。 (1) 裁判所が日本の裁判所の国際裁判管轄権が認められるとした判断の過程を説明しなさい。 (2) Aはどの時点での死亡が擬制されるか。 (3) Aの財産である不動産ア及び不動産イのそれぞれについてはD及びEによる相続の関係で、 Cの財産である不動産ウについてはEによる代襲相続の関係で、日本の裁判所がなしたAの失 踪宣告に基づく死亡擬制の効力は及ぶか。 〔設問2〕 A及びDは、婚姻後すぐの時期から日本で生活していた。婚姻から5年後、Aは、Cの元を訪 れた際に甲国内で行方不明となったが、Aが行方不明となった後も、Dは、引き続き日本で生活 している。 〔小問1〕 Aの失踪から7年が経過した時点で、Dは、日本の裁判所に対してAの失踪宣告の申立てを 行い、日本の裁判所は、Aの失踪宣告の審判をした(以下「本件失踪宣告」という。)。しか し、Aは、実際は、甲国で継続して居住しており、本件失踪宣告がされた2年後に本件失踪宣 告がされていることを知った。そこで、Aは、本件失踪宣告の取消しを日本の裁判所に申し立 てた。以上の事実を前提として、以下の問いに論拠を示しつつ答えなさい。 (1) Aによる失踪宣告の取消しの申立てにつき、日本の裁判所の国際裁判管轄権は認められる か。 (2) 日本の裁判所の国際裁判管轄権が認められるとして、取消しの可否を判断する準拠法はい ずれの国の法となるか。 〔小問2〕 Aの失踪から10年が経過した時点で、Cは、甲国の裁判所に対してAの失踪宣告の申立て を行い、甲国の裁判所は、Aの失踪宣告の裁判をした。Dは、この甲国の裁判所によるAの失 踪宣告の裁判書と確定証明書を添付して、日本国内の自らの本籍地の戸籍管掌者に、D自身の 戸籍に婚姻解消事項を記載するよう申出を行い、Dの戸籍に同記載がなされたことを前提とし て、以下の問いに論拠を示しつつ答えなさい。 (1) 戸籍管掌者は、甲国の裁判所によるAの失踪宣告の効力を日本で認めるに際して民事訴訟 法第118条所定の諸要件の具備を検討することが必要であるが、同条第2号の要件を満た す必要がないと判断をした。戸籍管掌者が民事訴訟法第118条所定の諸要件の具備を検討 することが必要であるとした理由及び同条第2号の要件を満たす必要がないと判断した理由 を説明しなさい。 (2) 戸籍管掌者は、甲国の裁判所によるAの失踪宣告の効力が日本で認められると判断したこ とを前提に、AとDとの婚姻が解消したと判断した。その判断の過程を説明しなさい。