令和6年 司法試験 論文式試験 国際関係法(公法系) 第2問
問題文と公式資料を一つにまとめ、出題の趣旨と採点実感の要点をすぐ確認できる学習ページです。
〔第2問〕(配点:50) A国を旗国とする船舶α号とB国を旗国とする船舶β号が公海上で衝突し、沈没したβ号に乗船 していたB国国民8人が死亡する事故が起こった。α号は事故後も航行を続け、当初の予定どおり B国の港に到着した。α号の船長はA国国民Xであったが、α号から下船してB国に上陸したXを B国当局がB国刑法上の犯罪の容疑で逮捕し、起訴したところ、A国の外務大臣は、「先般の事故 に関して我が国の国民であるXを逮捕し、起訴することは国際法違反であり、断じて受け入れられ ず、強く抗議する。」という声明を発表した。A国とB国の関係はそれまでは全般的に良好であり、 長年にわたりA国はB国に対してODA(政府開発援助)を供与してきたが、Xに対するB国での 刑事裁判の結果、Xに拘禁刑が言い渡されると、A国国内でB国を批判する世論が高まった。それ を受けてA国の外務大臣は、B国大使を召致し、「我が国は、B国が自らの国際法違反に対する責 任を取ることを強く求める。B国が国際法に従った対応をするまで、我が国はB国へのODAを停 止するほか、必要な全ての手段を用いる。」というA国の立場を伝達した。A国は軍事大国の一つ に数えられており、B国と比べて強大な軍事力を有している。B国大使からA国の立場について報 告を受けたB国の大統領は、「我が国がXの刑事責任を問うことは国際法に違反するものではない。 むしろ、我が国によるXの逮捕や起訴に対してA国の外務大臣が批判することや、力ずくで我が国 に対応を求めるA国の行為こそ、国際法上の不干渉原則や国際連合憲章第2条第4項に違反するも のである。」という声明を発表した。 A国とB国は、α号とβ号の衝突事故を発端として生じた国際法上の問題に対する両国の立場の 相違を解消するため、C国の仲介で交渉を重ねた。しかしながら、交渉は平行線をたどったため、 A国とB国は、C国の提案に従って、国際司法裁判所規程第36条第1項に基づいて事件を国際司 法裁判所(以下「ICJ」という。)に付託することとした。付託合意においてA国とB国は、I CJが国際法違反の有無について判断することのみを請求し、ICJが国際法違反を認定した場合 の国家責任法上の問題については、判決後に両国で交渉することになっていた。A国とB国は、い ずれも国際連合の加盟国である。また、A国は本件衝突事故の発生前から海洋法に関する国際連合 条約(以下「国連海洋法条約」という。)の当事国であるが、B国は国連海洋法条約の当事国では ない。 以上の事実を基に、以下の設問に答えなさい。 〔設 問〕 1.A国の外務大臣が、B国によるXの逮捕や起訴が国際法違反であるとの声明を発表した根拠 として、国際法上どのような主張が考えられるかについて論じなさい。 2.A国の行為が国際法上の不干渉原則や国際連合憲章第2条第4項に違反するとのB国の大統 領の声明に対して、A国は国際法上どのような反論が可能かについて論じなさい。 3.A国が主張するB国の国際法違反をICJが認定した場合、判決後の交渉において、A国は、 B国に対してどのような国家責任法上の主張をすることができるかについて論じなさい。 論文式試験問題集[国際関係法(私法系)]