令和6年 司法試験 論文式試験 国際関係法(私法系) 第2問
問題文と公式資料を一つにまとめ、出題の趣旨と採点実感の要点をすぐ確認できる学習ページです。
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〔第2問〕(配点:50) A(日本国籍)及びB(甲国籍)は、出生以来日本に居住している者で、日本で婚姻した夫婦で ある。 Cは、日本においてD(乙国籍)が未婚のまま出産した子であり、出生により乙国籍を取得した。 Cの実父は不明である。Dは日本においてCを養育してきたが、その養育が困難となったため、C を養子縁組によって養親に養育してもらうことを希望している。 A及びBは、事情により生みの親のもとでは暮らせない子を養子に迎え入れようと考え、養子縁 組あっせん事業者から現在5歳のCとの養子縁組のあっせんを受けた。 A及びBは、Cとの間で、実親との親族関係が断絶する養子縁組(以下「本件養子縁組」とい う。)をしたいと考え、東京家庭裁判所に対し、Cの特別養子適格の確認の申立て及びCとの特別 養子縁組成立の申立てをした。これらの申立てについて、日本の裁判所の国際裁判管轄権は認めら れるものとする。 以上の事実を前提として、以下の設問に答えなさい。 〔設問1〕 Dは、熟慮の上で、本件養子縁組について同意している。また、養子縁組に関し、甲国法は、 裁判所の決定で成立し、実方の血族との親族関係が終了する縁組の規定のみを有し、乙国法は、 身分登録吏に養子縁組を届け出ることによって成立し、実方の血族との親族関係が終了しない縁 組の規定のみを有するものとして、以下の小問に答えなさい。なお、〔小問1〕と〔小問2〕は 独立した問いである。 〔小問1〕 本件養子縁組を成立させるに当たり、養子縁組の成立に関する甲国法及び乙国法の要件を満 たす必要はあるかについて論じなさい。なお、乙国法は、養子縁組の準拠法の選択について日 本法と同内容の規定を有しているが、甲国法には次の規定が存在する。 【甲国法】 1 甲国の裁判所は、養子となるべき者が甲国に常居所を有するときは、甲国法により、養子 縁組を成立させる決定をすることができる。 〔小問2〕 本小問において反致は成立しないものとする。また、養子縁組の成立の要件に関し、甲国法 には日本法の特別養子縁組と同内容の規定が存在し、乙国法には日本法の普通養子縁組と同内 容の規定が存在するほか、甲国法及び乙国法にはそれぞれ次の規定が存在する。 【甲国法】 2 養親は養子と6か月以上同居して試験養育した上で、その結果について甲国で公認された ソーシャルワーカー(児童福祉司)による報告書の提出が必要である。 【乙国法】 3 養子縁組について養親の10歳以上の嫡出子の同意が必要である。 (1) 本件養子縁組を成立させるに当たり、甲国法2の要件をどのように満たせばよいかについ て論じなさい。 (2) Aは、以前に婚姻していたEとの間に、その婚姻中に子Fをもうけていた(Fは、A及び Eの嫡出子であるものとして、嫡出親子関係の成否について論じる必要はない。)。しかし、 Aは、Eと10年前に、Fの親権者をEと定めて離婚した。その後、現在まで、Fは、Eと 暮らしており、Aとの交流はなかった。Fは、現在12歳である。Aは、Eに対し、本件養 子縁組についてFの同意を得るために連絡したが、EがFに本件養子縁組について伝えるこ とをかたくなに拒んだため、Fの同意は得られていない。Fの同意が得られないまま、本件 養子縁組を成立させることはできるかについて論じなさい。 〔設問2〕 本件養子縁組は有効に成立した。本件養子縁組が成立して以降も、A、B及びCは、日本に居 住していたが、丙国のリゾート地を気に入ったA及びBは、Cを連れて、長期休暇中に頻繁に丙 国に滞在していた。 Bは、本件養子縁組から20年後に死亡した。 A及びBは、B死亡の3年前に、丙国に所在するP銀行本店との間で、預金口座設定契約(以 下「本件預金契約」という。)を締結して、A及びBの共同名義での預金口座を開設した。本件 預金契約には、「丙国法を準拠法とする。」との条項がある。その後、Bは、日本に所在するQ 銀行本店のB名義の口座から上記A及びBの共同名義の預金口座に7000万円を送金した。な お、丙国法では、共同名義の預金口座の一方の名義人が死亡した場合には、当該預金口座の預金 は、当然に他方の名義人の所有資産となり、死亡した名義人の遺産には含めないものとされてい る。 また、Bは、死亡の1年前に、当時滞在していた丙国のホテルの一室で、B名義の日本所在の 価額2000万円の不動産をAに相続させ、Q銀行本店のB名義の口座の預金1000万円をC に相続させる旨の遺言(以下「本件遺言」という。)をした。本件遺言は、スマートフォンによ り録画されたものであり、その録画には、Bが氏名、撮影日及び上記の遺言の内容を発言してい る様子のほか、同席した友人Rが氏名及び遺言が正確である旨を発言している様子が記録されて いる。 Cは、本件預金契約とBによる送金によって遺留分が侵害されたと主張して、遺留分侵害額請 求権を行使した上で、Aに対して遺留分侵害額に相当する金銭の支払を求めて、東京地方裁判所 に訴えを提起した。この訴えについて、日本の裁判所の国際裁判管轄権は認められるものとする。 以上の事実を前提として、以下の小問に答えなさい。なお、〔小問1〕と〔小問2〕は独立し た問いであり、各小問において反致は成立しないものとする。 〔小問1〕 録画の方法によっていることで本件遺言が無効とされるかについて論じなさい。なお、甲国 法及び丙国法にはそれぞれ次の規定が存在する。 【甲国法】 4 遺言は、自筆証書、公正証書又は秘密証書によってしなければならない。 【丙国法】 51 遺言は、自筆証書、公正証書、秘密証書又は録画によってしなければならない。 2 録画による遺言は、遺言者が遺言の趣旨、その氏名と年月日を口述して、これに参与し た証人が、遺言が正確である旨とその氏名を口述しなければならない。 〔小問2〕 甲国法には遺留分制度はあるが、日本法とは遺留分額が異なっており、丙国法には遺留分制 度が存在しない。Cの請求には、いずれの国の法が適用されるかについて論じなさい。