令和6年 司法試験 論文式試験 国際関係法(私法系) 第1問
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〔第1問〕(配点:50) Xは、衣料品の製造販売を業とする日本法人であり、日本以外に営業所等を一切有していない。 Yは、高級衣料品のデザインや販売等を業とする甲国法人であり、甲国に本店を有しているほか、 日本に営業所を有し、日本の取引先との取引を同営業所において行っている。なお、Yの日本の営 業所が所在するオフィスは賃貸物件で、備品は全てレンタル品であり、日本国内にあるYの財産の 価額はごく少額である。 世界中からファッション関連企業を集めて甲国で開かれた見本市にXが出展したところ、Yの代 表者A(甲国に住所を有する甲国人)がXの優秀な技術に目を付け、Yとの取引をXに持ち掛けた。 Xの担当者がAとの話合いのため何度か甲国に赴き、サンプルを届けるなど交渉を続けたところ、 XとYとの間で、Yのデザインや仕様に基づきXが衣料品を日本において製作してYに販売する旨 の契約(以下「本件契約」という。)がYの本店で締結された。本件契約上、代金の支払期日は、 商品を引き渡した日の翌月末日と定められていた。Xは、商品を製作し、2020年5月25日に Yに対して引き渡し、その支払期日にYに代金の支払を求めたがYは代金を支払わなかった。 以上の事実を前提として、以下の設問に答えなさい。なお、〔設問1〕と〔設問2〕は独立した 問いであり、国際物品売買契約に関する国際連合条約の適用はないものとする。 〔設問1〕 Xは、Yを被告として代金3000万円の支払を求める訴え(以下「訴え1」という。)を日 本の裁判所に提起した。 以下の小問に答えなさい。なお、〔小問1〕と〔小問2〕は独立した問いである。 〔小問1〕 本件契約の交渉過程においては、契約準拠法について、Xは日本法を主張し、Yは甲国法を 主張したため合意が調わず、X及びYは、契約中に準拠法に関する条項を置くことを断念した。 他方、本件契約には、商品の引渡しと代金の支払は甲国でするものとする旨の条項が置かれて おり、実際にも商品の引渡しは甲国においてされた。 (1) 訴え1について、日本の裁判所の国際裁判管轄権が認められるかどうかを論じなさい。 (2) 訴え1について、日本の裁判所の国際裁判管轄権が認められるものとして、Xの代金支払 請求について判断するに当たり、適用すべき準拠法はいずれの国の法かを論じなさい。 〔小問2〕 Xが訴え1を提起したのは2023年8月10日であった。また、本件契約には、「甲国法 を準拠法とする。」との条項及び「代金支払地は日本とする。」との条項が置かれていた。 甲国民事訴訟法には「売買契約上の債権に基づく訴訟は、権利を行使することができる時か ら3年以内に提起されなければならない。」との規定があるところ、Yは、訴え1の提起が支 払期日から3年が経過した後にされているのでXの請求は認められないと主張している。 訴え1について、日本の裁判所の国際裁判管轄権が認められるものとして、Yの上記主張が 認められるかを論じなさい。 〔設問2〕 本件契約には、「甲国法を準拠法とする。」との条項及び紛争解決について「この契約から又 はこの契約に関連して、当事者間に生ずる可能性のある全ての紛争について、乙国を仲裁地とす る仲裁により最終的に解決することに合意する。」との条項が置かれていた。 Xは、YではなくAを被告として、Xを欺罔して契約をさせてXに損害を被らせたと主張して、 不法行為に基づく損害賠償を求める訴え(以下「訴え2」という。)を日本の裁判所に提起した。 この訴訟において、Aは、XとYとの間の仲裁合意の効力はXとAとの間の訴訟にも及ぶと主張 して、仲裁法第3条第2項、第14条第1項に基づき、訴え2の却下を求めた。裁判所は、Aの 主張を認めて訴え2を却下した。この場合において、裁判所の判断の過程を説明しなさい。 なお、甲国法及び乙国法のいずれにおいても、契約に関連する「全ての紛争」には当該契約に 関連する不法行為に基づく請求も含まれると解されているところ、甲国法では法人の締結した仲 裁合意の効力は法人の代表者にも及ぶとされているが、乙国法では法人の締結した仲裁合意の効 力は法人の代表者に及ぶことはないとされている。