令和6年 司法試験 論文式試験 経済法 第2問
問題文と公式資料を一つにまとめ、出題の趣旨と採点実感の要点をすぐ確認できる学習ページです。
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〔第2問〕(配点:50) X社は、αを含む多数の放射性医薬品を製造販売している。 αは、特別な放射線医療装置βを検査に利用するときに用いられる放射性医薬品である。βは、 もともと悪性腫瘍などの治療用に普及している装置であるが、それを検査に利用するにはαを用い る必要がある。βとαを用いた検査(以下「β検査」という。)は、悪性腫瘍を始めとするいくつ かの疾病の発見について非常に高い精度を示し、それ以外の検査では発見できないものを高い確度 で見付け出す例が多いことで知られている。αは、その物質特性から製造後に利用できる時間が短 い上、安定した品質で製造することが難しかった。そのため、X社がαの製造販売を開始する以前 は、αを製造する特殊な装置と能力を持つ高度医療機関だけが、自らαを製造してβ検査を行って いた。 X社は、迅速な配送を可能にする形状でかつ安定した品質でαを製造することに最初に成功し、 必要な認可を得て製造販売を開始した。これによって、従来は検査を行うことができなかった医療 機関でもβ検査を行うことが可能になり、β検査は急増した。X社は、放射性医薬品の供給に定評 のある公益法人Zを通じて、全国一律の価格でαの供給を行っていた。Zは、自らが考える公益法 人としての役割から、放射性医薬品の供給に関して、一定の手数料を取るだけで、メーカー等が指 定する価格で、メーカー等が指定する取引先に供給することを原則としており、X社製αについて も、かかる原則に基づいて供給を行っていた。また、αは製造後に利用できる時間が短く、一つの 製造拠点から、その時間内に配送可能な範囲には限界があることから、αを全国的に販売する場合 は、全国をいくつかの地域に分割して各地域内に製造拠点を設け、各製造拠点から各地域内に所在 する医療機関に対してαを供給する体制をとる必要があり、X社は、全国を12の地域に分割し、 各地域内に製造拠点を設けるなどして全国的にαの製造販売を行っていた。 なお、αを検査に用いるには、その物質特性から自動投与装置γを利用することが通常必要とさ れる。γはX社とは無関係の複数の会社が製造販売しているが、いずれの会社のγもX社製αを検 査に用いる上で支障はなかった。 このように、従来、日本国内では、X社だけがαの製造販売を行っていたが、その後、放射性医 薬品等の製造販売業者であるY社がαの開発に成功し、製造販売に必要な認可を得た。Y社も、X 社と同様、全国をX社と同じ12の地域に分割し、各地域内に製造拠点を設けるなどして全国的に αの製造販売を開始した。 Y社は、αの製造販売を行うに当たって、次のような経営方針を立てた。 (1) X社はZを通じて全国一律の価格でαの供給を行っているが、Y社は、既に需要量が多く、こ れからもβ検査件数の伸びが期待できる南関東地域及び近畿地域(以下「両地域」という。)で は、他の地域よりも低い価格でαの供給を行う。これによって需要量が多い両地域で高いシェア を獲得することを目指す。 (2) Y社は、単に低価格販売により両地域で高いシェアを獲得するだけではこれまでの研究開発費 の回収には不十分であることから、一層の需要増を目指すため、別の会社と共同開発していた低 価格で使いやすい新型自動投与装置γ(以下「新型γ」という。)の供給を開始する。それによ ってβ検査を増やし、αの一層の需要拡大を図り、同時にγとαの両方を提供する事業者として β検査の分野におけるY社の信頼性を高める。また、Y社が共同開発した新型γが利用される場 合はY社製αが利用されることが想定できるため、新型γの供給を通じてY社製αの販売を促進 する。 このようなY社の方針に対して、X社は、次のような対応を決定し、実施した。 (a) αの公平な配分には全国一律の価格が必要であるとして、ZがY社製αについて、地域ごとに 価格に差を設けて取り扱うことに応じた場合は、ZへのX社製αの販売を停止するとZに通知し た。 (b) 両地域内のαを利用している各医療機関に対し、Y社からαの供給を受けた医療機関について はαの供給を停止すると通知した。 (c) 両地域内のβを設置している各医療機関に対し、新型γに関して、検査等を行わず、明確な根 拠もなく、「新型γではX社製αは利用できない。」と説明した。 これらの対応の結果、Zは、定評のあるX社製αの供給を受けることができなくなってしまうと、 従来の顧客である医療機関に対して、各医療機関が必要とするだけの量のαを供給できなくなるこ とを懸念し、Y社の方針(1)に基づくY社製αの取扱いをちゅうちょした。そこで、Y社は、両地域 以外の地域でのみZを通じた販売を行うこととし、両地域については、Zを利用した場合に比べて 費用は掛かるものの、Y社が、自ら、直接、αを他の地域よりも低い価格で販売することとした。 また、両地域内の医療機関においては、Y社からαを購入すると、今後、X社からαの供給を受 けることができなくなるため、低価格は魅力であるものの、新規参入業者であるY社が今後も必要 量の全てを安定的に供給することができるのかを懸念し、Y社からαを購入することを断念するも のも多く、Y社によるそれらの医療機関へのαの販売は難しくなった。その結果、両地域における 低価格販売によるY社製αの売上が想定より伸びなかった。 さらに、新型γについては、それが高性能であることを認めて導入を検討した医療機関もあった が、既に定評のあるX社製αが利用できなくなることを懸念して、新型γの導入を取りやめる例が 見られた。そのため、新型γの販売実績はY社が想定した水準を大きく下回り、新型γの市場への 投入に対応したY社製αの販売も、当初のY社の想定水準を大きく下回ることとなった。 〔設 問〕 X社の行為について、独占禁止法上の問題点を検討しなさい。 論文式試験問題集[知的財産法]