令和6年 司法試験 論文式試験 経済法 第1問
問題文と公式資料を一つにまとめ、出題の趣旨と採点実感の要点をすぐ確認できる学習ページです。
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〔第1問〕(配点:50) 中部地区に所在する55の地方公共団体(以下「55団体」という。)は、各々、毎年一定期間 ごとに、浄水場で使用する消毒用の製品(以下「甲製品」という。)を指名競争入札の方法により 発注している(以下、この入札を「甲製品の入札」という。)。 X1社ないしX9社は、いずれも甲製品のメーカーである(以下、X1社ないしX9社を「メー カー9社」という。)。我が国における甲製品のメーカーはメーカー9社以外にも存在するが、メ ーカー9社の甲製品のシェア(売上額に基づく割合)は合計約9割である。 メーカー9社は、甲製品の入札について、いずれも指名資格を有しておらず、入札に当たっては、 メーカー9社の各甲製品をそれぞれ専門に販売する販売業者であるZ1社ないしZ9社(Z1社な いしZ9社はいずれも指名資格を有している。X1社の甲製品を専門に販売する販売業者がZ1社、 X2社の甲製品を専門に販売する販売業者がZ2社、Z3社以下についても同じ。以下、Z1社な いしZ9社を「販売業者9社」という。)に指示して、入札に参加させていた。販売業者9社は、 従来から、いずれも甲製品の販売について特に営業活動をしておらず、各メーカーの指示に従った 価格で甲製品を顧客に販売し、その売上額から一定率のマージンを受け取っていた(なお、物流上 の必要等からメーカーと販売業者の間に卸業者が入ることもあった。)。メーカー9社とそれぞれ の販売業者9社との間に、いずれも資本関係はない。 Y社は、メーカーから甲製品を仕入れ、それを販売業者に販売する卸業者であり、甲製品の入札 について指名資格を有していない。甲製品の入札で販売業者9社のいずれかが落札した場合、当該 販売業者は、指示をしたメーカーから甲製品を仕入れ、それを55団体に供給していたが、当該メ ーカーと当該販売業者との取引の間に卸業者としてY社が入ることもあった。 令和2年以前、メーカー9社は、甲製品の入札に関して直接に連絡交渉し合い、受注調整を行う ことがあった。しかし、調整が整わないことも少なくなく、この受注調整が私的独占の禁止及び公 正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)違反として公正取引委員会に探知され ることはなかった。Y社は、令和2年12月頃、甲製品の入札の各入札結果につき、発注数量、落 札業者、落札金額等の情報を記載した入札一覧表と呼ばれる社内資料(以下「入札一覧表」とい う。)を作成するようになり、その後、入札一覧表をメーカー9社に提供するようになった。 このような状況の下、メーカー9社は、甲製品の入札の各入札結果に詳しいY社が調整すること で、メーカー同士が直接に連絡交渉し合う必要がなくなると考えるようになり、また、Y社は、調 整に関与し、落札した販売業者と指示をしたメーカーとの取引の間に卸業者として確実に入ること で、より多くの利益を上げることができると考えるようになった。 このため、令和3年4月頃、メーカー9社とY社は、甲製品の入札に関して、以下の内容の取決 め(以下「本件取決め」という。)をし、それ以降、本件取決めに基づき、55団体に甲製品を供 給するようにしていた。 (1) Y社は、毎年度ごとに、メーカー9社と個別に面談し、入札一覧表を提供する。 (2) 甲製品の各入札が実施されるごとに、メーカー9社は、入札一覧表を参考にしてY社に受注希 望の有無を伝える。 (3) Y社は、メーカー9社の受注希望の有無、入札一覧表に記載されたメーカー9社の55団体に 対する甲製品の供給実績等を勘案して、各入札ごとにメーカー9社のうちいずれかを、入札を通 じて55団体に甲製品を供給すべき者(以下「供給予定者」という。)に決定する。 (4) Y社は、供給予定者の指示する販売業者が落札できるようにするため、各入札ごとに当該販売 業者が提示する入札価格がそれ以外の販売業者が提示する入札価格よりも低くなるように販売業 者9社の提示する各入札価格を決定し、それをメーカー9社に伝える。メーカー9社は、各々、 自らが指示する販売業者にその入札価格を提示させる。 (5) メーカー9社間では、各入札について、直接の連絡交渉を一切行わない。 (6) 各入札後、Y社は、落札した販売業者が供給予定者から甲製品を仕入れるに当たり、必ず両者 の取引の間に卸業者として入る。 その後、メーカー9社間で供給予定者の決定をめぐって対立が生じ、令和5年10月13日に実 施された甲製品の入札において、X2社は、事前にY社が伝えた入札価格に従わず、Z2社に指示 して独自に決定した安い入札価格を提示させ、落札させた。そして、X2社の担当者は、同年12 月7日、自社以外のメーカーとY社の各担当者に対し、今後は自社で独自に決めた価格で応札して いく旨を口頭で明確に表明し、それ以降、X2社は本件取決めに基づく行動を取っていない。 令和6年6月28日、公正取引委員会は、本件について関係各社の立入検査を行い、これ以降、 Y社は本件取決めに基づく行為を行っていない。 なお、令和3年4月頃から令和6年6月28日までに実施された甲製品の入札200件のうち、 本件取決めに基づいて決められた供給予定者の指示する販売業者が落札し、同供給予定者が甲製品 を供給したものは180件であった。Y社は、その全てでメーカー9社と販売業者9社との取引の 間に卸業者として入っており、その売上額は10億円であった。残りの20件については、いずれ も、Y社がアウトサイダーの入札価格を見誤ったため、販売業者9社は落札できず、アウトサイダ ーが落札した。 〔設 問〕 令和3年4月頃以降におけるメーカー9社、Y社及び販売業者9社による上記各行為について、 独占禁止法に違反するか、違反する場合には違反行為がなくなった時期も含めて検討しなさい。 併せて、Y社の行為が独占禁止法に違反する場合には、Y社に対する課徴金の有無及び金額につ いて、算定の過程を明らかにして検討しなさい(なお、Y社は、独占禁止法第7条の2第2項第 2号に該当する者ではないものとする。)。