令和6年 司法試験 論文式試験 倒産法 第1問
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〔第1問〕(配点:50) 次の【事例】について、以下の設問に答えなさい。 なお、解答に当たっては、文中において特定されている日時にかかわらず、令和6年1月1日現 在において施行されている法令に基づいて答えなさい。 【事 例】 A株式会社(以下「A社」という。)は、子供服の販売を業とする株式会社であり、取締役会 設置会社であるところ、国内で小売店10店舗を展開していた。A社の発行済株式は、代表取締 役であるBが70%を保有し、残りの30%は別の者が保有している。 A社は、令和2年春頃から販売不振に陥って売上げが落ち始め、C銀行から事業資金の融資を 受けて資金を工面してきたが、売上げが回復することはなく、令和4年3月末日時点で債務超過 に陥った。その後、A社は、収支が改善しないまま資金繰りに窮し、令和5年3月末日、上記1 0店舗のうち、4店舗の事業を他の会社に譲渡し(以下「本件事業譲渡」という。)、残る不採 算店舗6店舗を閉店し、事業を停止した。 A社は、事業停止後、C銀行に対する借入金債務や仕入先等に対する取引債務を弁済しないま ま何らの手続も採らずにいたところ、A社の債権者であるC銀行は、令和5年7月21日、A社 について破産手続開始の申立てをした。同申立てを受けた裁判所は、同年8月末日、A社につい て破産手続開始の決定をし、破産管財人としてDを選任した。 〔設 問〕 以下の1から3については、それぞれ独立したものとして解答しなさい。 1.破産管財人Dの調査により、以下の事実が判明した(<判明した事実>)。破産管財人Dは、 <判明した事実>に基づきBの責任を追及するために、破産法上、どのような手続を採ること が考えられるか。その制度趣旨にも言及しつつ説明しなさい。なお、破産管財人Dは、BがA 社からの役員報酬の振込先としてE銀行の預金口座を指定していたことを把握している。 <判明した事実> Bの弟は、個人で飲食店を経営していたところ、令和4年6月、Bに対し、資金繰りに窮し ているとの相談を持ち掛け、Bは、同月末日、独断でA社から弟に対する1000万円の貸付 けを実行させた。その後、弟は、飲食店を閉店し、A社からの上記借入金を返済することが見 込めない状況になった。 2.Bに関して以下の事実(<Bに関する事実>)があった場合、Bの破産手続において、破産 管財人D及び裁判所は、Bの資産状況等の情報を収集するために、破産法上、どのような調査 や手続を行うことができるか。破産法における破産者の義務にも言及しつつ説明しなさい。 <Bに関する事実> Bは、A社のC銀行に対する債務について連帯保証をしていたが、C銀行から保証債務の履 行を求められても、「資産がないので支払うことはできない」と述べるだけでC銀行との交渉 に応じなかった。 他方で、破産管財人Dの調査の過程において、Bが財産を隠匿していると疑われる内容の情 報やBが多額の遊興費を支出しているとの情報が複数の関係者から破産管財人Dの下に寄せら れていた。破産管財人Dは、令和5年11月に開かれたA社の債権者集会において、Bに関す る上記各情報が寄せられていることなどを報告した。 そこで、C銀行は、令和6年1月31日、Bについて破産手続開始の申立てをしたところ、 同年3月18日、Bについて破産手続開始の決定がされ、A社の破産手続と同様に破産管財人 としてDが選任された。 3.本件事業譲渡の内容等が以下の<本件事業譲渡の内容等1>又は<本件事業譲渡の内容等 2>のとおりであった場合において、破産管財人Dは本件事業譲渡を対象として否認権を行使 することができるか。本件事業譲渡の対象となった4店舗の事業価値が1店舗当たり1000 万円で合計4000万円であったものとして、各場合について論じなさい。 <本件事業譲渡の内容等1> A社は、令和5年3月末日、Bが代表取締役を務めるE株式会社(以下「E社」という。) に対し、4店舗の事業を合計4000万円で譲渡した。 A社は、A社の取締役であるFから事業資金として5000万円を借り入れており、その返 済期限が既に到来していたところ、Bは、A社の代表取締役として、E社から受領した事業譲 渡代金4000万円を同日、同借入れへの弁済としてFに支払った。 <本件事業譲渡の内容等2> A社は、令和5年3月末日、G株式会社(以下「G社」という。)に対し、4店舗の事業を 譲渡した。 A社は複数の金融機関に対して借入金債務を負っていたところ、G社は、本件事業譲渡に当 たり、A社の金融機関Hに対する借入金債務3000万円について債務引受けをした。そのた め、本件事業譲渡代金額は、4店舗の事業価値の合計4000万円から同債務の額を控除して 1000万円と定められた。 なお、A社は、本件事業譲渡に際し、G社に対し、A社が債務超過の状態にあり資金繰りに 窮していること及び他の店舗は閉店してA社が事業を停止することを説明していた。