令和5年 司法試験予備試験 論文式試験 選択科目 第13問
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[労働法] 【対象設問】〔設問1〕 【共通前提】 [労 働 法] - - 16 [労 働 法] 次の事例を読んで、後記の 及び に答えなさい。なお、会社法(平成17年 〔設問1〕 〔設問2〕 法律第86号)の適用について検討する必要はない。 【事例】 1 宿泊業を営むA社は、国内にとどまらず国外においても広く事業を展開している。A社は、国 際的な人材を社内に育成するため、入社5年目までの若手社員を対象とし、英語力の強化や多様 性に対する理解のかん養、社外ネットワークの構築等を図ることを目的とした海外研修制度を設 けていた。同制度においては、研修先となる大学・研究機関や専攻は、対象となった社員の選択 に委ねられる一方で、海外研修中、職務に従事する場合と同額の基本給と賞与が支給され、これ らとは別に、海外研修に係る費用(以下「海外研修費用」という。)は、A社が負担することと されていた。 入社3年目のBは、前記の海外研修制度に自らの意思で応募し、選考を経て、C国所在の大学 の大学院(国際関係学)への留学が決定した。留学に先立ち、A社は、Bに対し、海外研修中は 学業に精励すること、学位取得後は直ちに帰国して職務に復帰すること、帰国後60か月以内に 自己都合でA社を退職する場合は海外研修費用の全部又は一部を返還することを内容とする誓約 書について、その内容を説明した上で署名して提出するよう求め、Bはその内容を理解してこれ に署名し、A社に提出した。 A社は、Bの留学に係る海外研修費用として、渡航費、大学院の学費及び寮費をその都度負担 した。留学中、Bは、2か月に1回程度、A社の全社員を対象とするオンライン研修(短いもの で15分、長いもので3時間程度のもの)を受講することのほかには、A社の業務に従事するこ とは求められず、学業に専念・精励することができた。Bは、国際関係学の学位を取得後、直ち に帰国して職務に復帰した。 ところが、Bは、帰国後6か月で自己都合によりA社を退職した。 2 Dは、クリーニングサービス業を営むE社(A社のグループ子会社)の社員であり、A社が経 営するホテルでリネン類を回収し、クリーニング後のリネン類を同ホテルに配達する業務に従事 していた。また、Fは、清掃業を営むG社(A社のグループ子会社であり、同社ほか数社から業 務委託を受けてホテルやオフィスの清掃業務を行うもの。)の社員であり、A社が経営するホテ ルで客室内の清掃やベッドメイク、備品補充等の業務に従事していた。 Dは、リネン類の回収・配達の業務中にFと知り合い、同人に好意を持った。Dは、Fが喜ぶ と思って同人に菓子やアクセサリーを贈り、同人がお礼を言って受け取ったことから、同人も自 分に好意を持っていると思い込み、退勤するFに自宅近くまで追随したり、休日にFの自宅近く を歩き回ったりした。さらに、Dは、配達するリネン類をホテル内の所定の場所ではなく備品室 や客室に持ち込み、これを取りに来るFと二人きりになる状況を作るなどした。そのような状況 でDに肩や腰を触られ、恐怖を感じたFは、G社に相談した。G社は、FがDと顔を合わせる機 会はDがリネン類の回収・配達業務のためにホテルを訪れるごく短時間であり、その間にDと二 人きりにならないよう注意すればよいだけであると考え、Fが主張する前記のDの行為について 更に調査をしたり、Fの職務場所の変更を検討したりするなどはしなかった。Fは出勤をすれば Dと会うことを避けられないことから、恐怖と苦痛を感じてG社を退職した。 A社は、同社及びそのグループ会社によるコンプライアンス違反行為を予防し、又は現に生じ たコンプライアンス違反行為に対処するため、コンプライアンス相談窓口を設置し、同社及びそ のグループ会社の社員に同窓口の存在を周知するとともに、社員からの相談への対応を行ってい た。G社の社員にも同社を通じて同窓口の存在が周知されていたが、前記のFの主張や同人の退 - - 17 職に関し、G社が同人にA社の相談窓口への相談を勧めることはなかった。Fは、退職から約1 年経過後、同窓口に電話をかけ、E社の社員の行為により退職を余儀なくされたG社の社員がい ることを伝え、事実関係を調査し、当該E社の社員を厳正に処分するよう求めた。これを受け、 A社は、E社及びG社に事実関係を確認したが、両社とも問題となる事実はないと回答したの で、それ以上の対応をしなかった。 【対象設問本文】 〔設問1〕 【事例】の1を前提として、A社は、Bに対して、A社が負担した海外研修費用の返還を請求す ることができるか。考えられる論点を挙げて検討し、あなたの見解を述べなさい。