令和5年 司法試験 論文式試験 国際関係法(私法系) 第1問
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〔第1問〕(配点:50) 甲国法人A社は、食品の加工・製造・販売を業とする株式会社であり、様々な国の企業との間で、 食品や食材の輸出入の取引をしている。A社は、2022年1月10日、日本法人B社との間で、 A社を売主、B社を買主とし、日本法を準拠法とする、A社製の食品の売買契約(以下「売買契約 1」という。)を締結して、B社に対する3000万円の売買代金債権(以下「債権1」という。) を取得した。 以上の事実を前提として、以下の設問に答えなさい。なお、〔設問1〕と〔設問2〕は独立した 問いである。 〔設問1〕 B社は、2022年2月1日、A社との間で、B社を売主、A社を買主とし、甲国法を準拠法 とする、冷凍食材の売買契約(以下「売買契約2」という。)を締結して、A社に対する320 0万円の売買代金債権(以下「債権2」という。)を取得した。売買契約2の契約書には、「こ の契約から生じる一切の紛争については、甲国P市にあるP地方裁判所を専属的管轄裁判所とす る」旨の条項(以下「本件条項」という。)が定められていた。 A社は、債権1の弁済期が到来した後もB社から債権1の弁済がなかったため、同年3月1日、 B社に対し、債権1の弁済を催告した。B社は、同年5月25日、A社に対し、自己が有する債 権2をもって、債権1と対当額において相殺する旨の意思表示をした(以下「本件相殺」という。)。 〔小問1〕 A社が、同年12月1日、B社を相手取り、債権1の弁済を求めて、東京地方裁判所に提起 した訴訟において、B社が本件相殺を抗弁として主張したのに対し、A社は、本件条項は、売 買契約2から生じる一切の紛争について、その最終的な解決を甲国の特定の裁判所に委ね、日 本の裁判所の管轄を排除するものであるから、日本の裁判所において債権2について審理・判 断することはできないと主張した。A社の主張が認められるか否かについて、そのように考え た根拠を挙げて論じなさい。なお、本件条項に係る合意は、民事訴訟法第3条の7の要件を満 たし、効力を生じているものとする。 〔小問2〕 〔小問1〕において、日本の裁判所において債権2について審理・判断することができるも のと解した場合、本件相殺を理由とするB社の抗弁について、いずれの国の法によって判断さ れるべきかを論じなさい。 〔設問2〕 A社は、2022年2月10日、乙国法人C社に対し、債権1を譲渡した。A社は、B社に対 し、公証人が同日の日付印を押した証書によって、債権1をC社に譲渡した旨の通知を発し、こ の通知は、同月12日、B社の本社に郵便で到達した。C社は、債権1の弁済期が到来した後も B社から債権1の弁済がなかったため、同年3月1日、B社に対し、債権1の弁済を催告した。 なお、各小問は独立した問いである。 〔小問1〕 B社は、C社に対し、B社が既にA社に対して債権1の弁済をしたことを理由として、同年 5月25日、債権1の弁済を拒絶する旨の通知をした。 C社が、同年12月1日、B社を相手取り、債権1の弁済を求めて、東京地方裁判所に提起 した訴訟において、この弁済を理由とするB社の抗弁が認められるかについて、いずれの国の 法によって判断されるべきかを論じなさい。なお、この訴えについて、日本の裁判所の国際裁 判管轄権は認められるものとする。 〔小問2〕 甲国法人D社は、同年2月1日、A社に対し、3000万円を貸し付けるとともに、この貸 付けに基づく貸金債権の引き当てとして、A社から、債権1を目的とする債権譲渡担保権の設 定を受けていた。この契約においては、甲国法が準拠法とされていた。A社は、B社に対し、 この債権譲渡担保権の設定について何ら通知をしていない。なお、甲国法上、債権譲渡又は債 権譲渡担保権の設定の第三者対抗要件は、債権譲渡契約又は債権譲渡担保権設定契約の締結時 期の先後で決まるとされている。 D社は、上記貸金債権の弁済期が到来した後もA社からその弁済がなかったため、債権1を 目的とする譲渡担保権を実行することとして、同年6月1日、B社に譲渡担保権実行の通知を したところ、B社は、同年7月1日、債権1の債権者を確知することができないとの理由によ り、売買契約1に基づく売買代金3000万円を東京法務局に供託した。 C社とD社の間で、この供託に係る供託金還付請求権の帰属が争われ、東京地方裁判所に訴 えが提起された場合において、C社とD社のいずれが債権1を取得したかについて、どのよう な判断がされるべきかを論じなさい。なお、この訴えについて、日本の裁判所の国際裁判管轄 権は認められるものとする。