令和5年 司法試験 論文式試験 民事系科目 第1問
問題文と公式資料を一つにまとめ、出題の趣旨と採点実感の要点をすぐ確認できる学習ページです。
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〔第1問〕(配点:100〔〔設問1〕、〔設問2〕及び〔設問3〕の配点は、30:40:30〕) 次の各文章を読んで、後記の〔設問1〕、〔設問2〕及び〔設問3〕に答えなさい。 なお、解答に当たっては、文中において特定されている日時にかかわらず、試験時に施行されて いる法令に基づいて答えなさい。 【事実I】 1.Aは、自らの所有する2階建ての居住用建物(以下「甲建物」という。)に、亡妻との間の 子であるB及びCと居住していた。B及びCは、いずれも、成人後に他県で居住するようにな った。その後、Aは、Dと再婚し、Dと甲建物に同居していた。Dは、甲建物に無償で居住し、 また、Aに子B及びCがいることを知っていた。 2.令和5年4月1日、Aが遺言を残さずに死亡し、B、C及びDがAの財産を相続した。B、 C及びDの間での遺産分割は未了である。 同年5月1日、Dは、甲建物を改築してその1階部分を店舗として利用することを計画し、 B及びCの同意を得ないで、甲建物の改築工事を行った。同年8月1日、Dは、甲建物の2階 部分に居住を続けながら、1階部分で惣菜店を始めた。 3.甲建物の改築及び1階部分での開店の事実を知ったBは、令和5年8月10日、Dに対し、 「あなたには甲建物に住む権利はない。直ちに出て行くように。」と述べた。 4.令和5年8月31日、Bは、Dに対し、共有持分権に基づいて甲建物の明渡しを請求し(以 下「請求1」という。)、併せて、同年4月2日以降明渡しまで1か月当たり5万円(甲建物 の賃料相当額である月額20万円の4分の1)の支払を請求した(以下「請求2」という。)。 Dは、Bの請求に対し、「ア私は、Aの妻として甲建物に居住していたのだから、Aの死亡 後も無償で甲建物に住み続ける権利があり、仮にそのような権利が認められないとしても、イ 甲建物を共同で相続したのだから、いずれにせよ請求1及び請求2を拒むことができる。」と 反論した。 〔設問1〕 【事実I】を前提として、次の(1)及び(2)の問いに答えなさい。なお、【事実I】4の「月額20 万円」は賃料相当額として適正な額であるものとする。 (1) Dは、下線部アの反論に基づいて、請求1及び請求2を拒むことができるかどうかを論じなさ い。 (2) Dは、下線部イの反論に基づいて、請求1及び請求2を拒むことができるかどうかを論じなさ い。 【事実II】 1.個人で養鯉業を営むEは、乙池で1等級の錦鯉を養殖している。 2.令和4年8月1日、錦鯉の輸出事業を新規に計画しているFが、Eの養殖池を見て回り、E との間で、乙池で育成中の100匹の錦鯉全部(以下「本件コイ」という。)を買う契約(以 下「契約1」という。)を結んだ。契約1において、本件コイの引渡しは、同年10月1日に Eの事務所で行うこととされ、また、代金は、100万円(1匹当たり1万円)とし、引渡し から2か月以内に支払うこととされた。 3.令和4年9月1日、Eは、同年11月1日から同月7日まで開催される地域の秋祭りに際し、 空になるはずの乙池に5等級の錦鯉を放って釣堀を営業する計画を立てた。 4.令和4年10月1日の早朝、Eは、本件コイを出荷用容器に入れて事務所に運び込んだ。E は、終日、事務所でFを待っていたが、Fが来訪することはなかった。 同月2日の朝、Eは、Fに対し、引渡日が過ぎたので早急に本件コイを受け取りに来てもら いたいこと、その際は前日までに連絡が欲しいことを伝えた。 5.その後、Fからは特に連絡がないまま、2週間が過ぎた。Eは、この間も毎日、乙池に戻し た本件コイの世話を続けていた。 6.令和4年10月16日、Eは、Fに対し、同月30日までに本件コイを受け取りに来なけれ ば同月31日付けで契約1を解除する旨を告げた。その際、Eは、乙池は同年11月上旬に釣 堀営業のために使用する予定があり、同年10月末までにいったん空にしなければならないこ とも説明した。 7.Fは、令和4年9月以降に錦鯉の相場が下落したため錦鯉の輸出事業計画を中止し、同年1 0月30日を過ぎても、本件コイを受け取りに行かなかった。そのため、Eは、釣堀の営業を 断念せざるを得なかった。 8.1等級の錦鯉の相場は、令和4年8月初めには1匹当たり1万円であったが、同年10月初 めには8000円、同年10月末には7000円、同年11月末には6000円となった。 9.令和4年11月30日、Eは、ア契約1が同年10月31日に解除されたと主張し、これを 前提に、Fに対し、イ本件コイの代金相当額100万円及び釣堀の営業利益10万円について の損害賠償を請求した。同年11月30日まで、Eが本件コイを他に売却する等の処分をした 事実はない。 〔設問2〕 【事実II】を前提として、次の(1)及び(2)の問いに答えなさい。 (1) 下線部アにおけるEの主張の根拠とその当否を検討しなさい。 (2) 仮に下線部アにおけるEの主張が正当であるとした場合、Eは、Fに対し、下線部イの損害の 全部について賠償を請求することができるかどうかを検討しなさい。なお、Eが釣堀を営業すれ ば、10万円の利益を得ることができたものとする。 【事実III】 1.令和4年2月1日、賃貸用建物(以下「丙建物」という。)を所有するGは、Hから200 0万円を借り入れた。この借入金に係る債権(以下「α債権」という。)については、令和5 年5月31日までに弁済することとされた。令和4年2月1日、Gは、α債権を担保するため、 Hに対し、丙建物について抵当権を設定し、その旨の登記がされた。 2.令和4年5月9日、GとKとの間で、GがKに対して丙建物を賃貸する契約(以下「契約2」 という。)がされ、これに基づき、丙建物はKに引き渡された。契約2で定められた賃料は月 額25万円であり、当月末日払とされた。 3.令和5年1月、Gの経営する事業の資金繰りが悪化した。同月16日、Gは、弟のLから2 00万円を借り入れた。この借入金に係る債権(以下「β債権」という。)については、同年 5月1日までに弁済することとされた。 4.β債権は、令和5年5月1日を過ぎても、弁済されなかった。そこで、LがG及びKに働き 掛けた結果、次のことが行われた。 まず、同月2日、GとKとの間で、契約2が合意により解除された。その上で、同日、Gと Lとの間で、GがLに対して丙建物を賃貸する契約(以下「契約3」という。)がされ、また、 LとKとの間で、LがKに対して丙建物を転貸する契約(以下「契約4」という。)がされた。 実際には、Kが丙建物の使用を継続していた。 契約3で定められた賃料は月額3万円であり、契約4で定められた賃料は月額25万円であ り、それぞれ当月末日払とされた。また、Lは、Kから、契約4で定められた賃料の支払を受 けるものの、Gに対し、契約3で定められた賃料は実際には支払わないこととされた。KとL との間では、同年5月分の賃料は、同年6月分の賃料と合わせて同年6月30日に支払うこと とされた。 5.α債権は、令和5年5月31日を過ぎても、弁済されなかった。 〔設問3〕 【事実III】を前提として、次の問いに答えなさい。なお、利息や遅延損害金、敷金については考 慮しないものとする。 令和5年6月20日、Hは、契約4に基づいてLがKに対して有する同年5月分以降の賃料債権 について、抵当権に基づく物上代位権の行使としての差押えを申し立てた。この物上代位権の行使 が認められるかどうか、同年5月分の賃料債権と同年6月分以降の賃料債権とで結論が異なるかを 含めて論じなさい。