令和4年 司法試験 論文式試験 知的財産法 第2問
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〔第2問〕(配点:50) 漫画家であるXとYは、甲を主人公とする漫画(以下「漫画α」という。)を共同で制作した。 漫画αのストーリーの大筋は二人が話し合って決定し、Xが脚本形式の原稿を制作し、Yが原稿を ネーム(注)に起こし、Xと協議してネームを確定させた。漫画αの作画については、甲を含む人 物のイラストをXが、背景をYが担当して制作し、互いに意見を出し合いながら、適宜修正を加え つつ、完成させた。その後、漫画αは出版された。 以上の事実関係を前提にして、以下の設問に答えなさい。なお、著作者人格権に関しては論じる 必要はない。また、各設問はそれぞれ独立したものであり、相互に関係はないものとする。 (注)ネームとは、漫画を描く際のコマ割り、構図、セリフ、キャラクターの配置などを大まかに描 いたものをいう。本件のネームでは、登場人物は○などの記号で特定されているだけで、イラス ト化されていない。 [設問1] 大学Aの美術部に所属している学生Bは、美術部の企画に係る学園祭用の展示物として、甲の 模型(以下「模型β」という。)を作成し、これを所有している。模型βは、漫画αに描かれた 甲の特徴を忠実に再現しつつ、衣装やポーズに独自の工夫を凝らして制作されたものである。模 型βは、学園祭の間、美術部の展示室に設置され、一般の観覧に供された。大学祭に来場してい た玩具製造業者であるCは、模型βの出来栄えに感銘を受け、Bから模型βの譲渡を受け、模型 βを精巧に模倣したフィギュアを制作し、販売した。Cは、漫画αの存在を知らず、模型βをB の完全なオリジナル作品と思い込んでいた。 (1) X、Yは、それぞれBに対して、著作権法上どのような請求をすることができるか、論じなさ い。 (2) X、Yは、それぞれCに対して、著作権法上どのような請求をすることができるか、論じなさ い。 [設問2] Dは、我が国を代表するアニメの制作・配信を行う会社である。DのプロデューサーであるE は、漫画αのアニメ映画(以下「映画γ」という。)の制作を企画し、XとYにアニメ化の許諾 を求めた。Xは、漫画αの出版後十年ほどが経過しているため、アニメ化は漫画αの人気を浮上 させるよいきっかけになると考え、アニメ化を了承したが、Yは、漫画αの出版後、Xとの関係 が悪化していたことから、これ以上Xと関わりを持ちたくないと考え、アニメ化に反対した。E は、Yに対し、Xからアニメ化の承諾を得たことを述べた上で、Yと何度も交渉を重ね、またY が反対の意向を示していることを考慮し、業界の相場を大幅に超える原作使用料を提示したが、 Yは承諾しなかった。そこで、Eは、Xと相談の上、Yの承諾を得ないまま、映画γを制作した。 Yがインターネット上で映画γを配信しようとしているDに対して著作権侵害に基づく差止め を請求する場合、どのような主張をすべきか。Dはそれに対してどのような反論をすることが考 えられるか。それぞれの主張の当否についても論じなさい。 [設問3] Fは、民間の漫画教室を主宰する者であり、インターネット上に開設したホームページで教室 の宣伝を行って受講生を募集し、有料で作画の指導を行っている。Fは、漫画αの出版物を1冊 購入し、そこから作画の練習に最適と思われるコマ絵を十数枚程度選び出してコピーし、当該コ ピーを用いてコマ絵を一つ一つスライドで映し出して、キャラクターや背景の描き方、構図、コ マ割りなどの作画のポイントを詳細に説明し、また、コマ絵を4倍の大きさに拡大したコピーを 受講生に配布し、コマ絵の模写を行わせ、生徒の模写の出来栄えを評価するなどしている。 (1) Fが漫画αのコマ絵のコピーを作成する行為、当該コピーを用いてコマ絵をスライドに映し出 して受講生に見せる行為、漫画αのコマ絵の拡大コピーを受講生に配布する行為は、Xの著作権 を侵害するかについて論じなさい。 (2) Xが、Fに対して、Fの主宰する漫画教室において、受講生に漫画αのコマ絵の模写を行わせ ることに関して差止めを請求する場合、Xはどのような主張をすべきか。Fはそれに対してどの ような反論をすることが考えられるか。それぞれの主張の当否についても論じなさい。 論文式試験問題集[労 働 法]