令和4年 司法試験 論文式試験 民事系科目 第1問
問題文と公式資料を一つにまとめ、出題の趣旨と採点実感の要点をすぐ確認できる学習ページです。
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〔第1問〕 〔設問1〕 〔設問2〕 〔設問3〕 次の各文章を読んで、後記の 、 及び に答えなさい。 〔設問1(1)・(2)〕 〔設問2〕 〔設問3〕 なお、解答に当たっては、文中において特定されている日時にかかわらず、試験時に施行されて いる法令に基づいて答えなさい。 【事実I】 1.個人で事業を営んでいるAは、その所有する甲土地を売却することとした。 2.令和2年3月20日、不動産取引の経験がなかったAは、かつて不動産業に携わっていた友 人のBに甲土地の売却について相談をした。甲土地の登記記録には、弁済によって被担保債権 が既に消滅した抵当権の設定登記が残っていたことから、Bは、甲土地の売却先を探してみる が、その前に抵当権の登記を抹消してあげようと申し出、Aはこれを了承した。 【事実II】 前記【事実I】の1と2に続いて、以下の事実があった。 3.Bは、自身が負う金銭債務の弁済期が迫っていたため、甲土地を自己の物として売却し、そ の代金を債務の弁済に充てようと考えた。 4.令和2年4月2日、Bは、Aに対し、抵当権の抹消登記手続に必要であると偽って所有権移 転登記手続に必要な書類等の交付を求め、Aは、Bの言葉を信じてこれに応じた。Bは、Aが 甲土地をBに3500万円で売却する旨の契約(以下「契約1」という。)が成立したことを 示す売買契約書を偽造し、同契約書とAから受け取った書類等を用いて、同月5日、甲土地に つき、抵当権の抹消登記手続及びAからBへの所有権移転登記手続をした。 5.令和2年4月20日、Bは、甲土地を4000万円でCに売却する旨の契約(以下「契約2」 という。)をCとの間で締結した。Cは、契約2の締結に当たり、甲土地の登記記録を確認し、 Bが甲土地を短期間のうちに手放すことになった経緯につきBに尋ねたところ、Bは、「知ら ない人と契約を交わすのを不安に感じたAの意向で、いったん友人である自分が所有権を取得 することになった」旨の説明をした。 6.令和2年4月25日、CからBへの代金全額の支払と、甲土地につきBからCへの所有権移 転登記がされた。 〔設問1(1)〕 【事実I】及び【事実II】(1から6まで)を前提として、令和2年5月1日、CがAに対して 甲土地の引渡しを請求した。Aはこれを拒むことができるか、論じなさい。 【事実III】 前記【事実I】の1と2に続いて、以下の事実があった(前記【事実II】の3から6までは存在 しなかったものとする。)。 7.令和2年4月2日、Aは、知人のDから甲土地を4000万円で購入したいとの申出を受け、 この額が時価相当であったことから、Dに売却することを決めた。Aは、同日、Bに対して、 甲土地の売却先を探してもらう必要はなくなったが、抵当権の抹消登記手続については急いで ほしい旨を述べ、Bはこれを了承した。 8.Aは、事業の不振により債務超過に陥っていたことから、Dに対し、登記手続は来月になっ てしまうが、売買契約の締結と代金の授受は早々にさせてほしいと懇請し、Dはこれに応じた。 令和2年4月5日、Aが甲土地を4000万円でDに売却する旨の契約(以下「契約3」とい う。)がAとDとの間で締結され、代金全額がDからAに支払われた。なお、甲土地は、Aが 所有する唯一のめぼしい財産であった。 9.令和2年4月8日、Bは、Aが甲土地を売却した相手が、かねてより恨みを抱いているDで あることを知って、契約3を阻止し、Dに損害を与えようと考えた。Bは、Aに対して、今後 継続的にAの事業を支援するから、甲土地は自分に2000万円で売ってほしいと述べた。A は、今後のBからの支援に期待をかけ、Bの申出を受けることにした。 10.令和2年4月12日、Aは、甲土地を2000万円でBに売却する旨の契約(以下「契約4」 という。)をBとの間で締結した。同月15日、BからAに代金全額が支払われ、甲土地につ き抵当権の抹消登記及びBへの所有権移転登記がされた。 11.令和2年5月8日、Bは、甲土地を4000万円でCに売却する旨の契約(以下「契約5」 という。)をCとの間で締結した。同月10日、CからBへの代金全額の支払と、甲土地につ きCへの所有権移転登記がされた。なお、Cは、契約5の締結に当たり、契約3の存在やAが 十分な資力を有していないことについてBから説明を受けていたが、BにDを害する意図があ ったことは、Cへの所有権移転登記がされた後も知らないままであった。 〔設問1(2)〕 【事実I】及び【事実III】(1、2及び7から11まで)を前提として、令和2年6月1日、Dは、 Cに対し、甲土地につき、Dへの所有権移転登記手続をするよう請求し(以下「請求1」という。)、 それができないとしても、Aへの所有権移転登記手続をするよう請求した(以下「請求2」という。)。 これらの請求は認められるか、請求1及び請求2のそれぞれについて論じなさい。 【事実IV】 12.令和3年3月、Fは、その所有する乙建物を、期間5年、賃料月額30万円でGに賃貸する 契約(以下「契約6」という。)をGとの間で締結し、Gに引き渡した。 13.令和3年5月31日、Fは、Hから1000万円を弁済期を2年後とする約定で借り受け、 その借入金債務(以下「債務α」という。)を担保する目的で乙建物をHに譲渡する契約(以 下「契約7」という。)をHとの間で締結した。契約7において、Fが債務αの弁済期が経過 するまで乙建物の使用収益をする旨が合意された。同年6月5日、契約7に基づき、乙建物に つきHへの所有権移転登記がされた。 14.Gは、その後もFに対して契約6に基づく賃料を支払っていたが、令和5年5月、乙建物に つきHへの所有権移転登記がされていることを知り、賃料を支払わなくなった。 15.Fは、債務αの弁済期経過後もその弁済をしないまま、令和5年7月、債務αの弁済期経過 前に発生した同年5月分の賃料と弁済期経過後に発生した同年6月分の賃料の支払をGに請求 した(以下「請求3」という。)。Gは、「ア乙建物がHに譲渡されたので、Fに対して賃料 を支払う必要はない。」と述べて支払を拒んだ。Fは、「イHへの所有権移転登記がされてい るが、これは契約7に基づくものであって、賃貸人の地位が直ちにHに移転する効果を生ずべ き譲渡があったわけではない。ウ仮にそのような譲渡があったとしても、債務αの弁済期が経 過するまでFが乙建物の使用収益をする旨の合意があるから、賃貸人の地位は自分に留保され ている。」と反論した。 16.Hは、請求3の時点で、契約7に基づく担保の実行も、乙建物の第三者への処分もしていな い。 〔設問2〕 【事実IV】(12から16まで)を前提として、次の問いに答えなさい。 下線部アイウの各主張の根拠を説明した上で、Fの反論の当否を検討し、請求3が認められる か、論じなさい。その際、令和5年5月分と6月分とで結論に違いが生じ得るかにも留意しなさ い。 【事実V】 17.Kは、別荘とその敷地(以下併せて「丙不動産」という。)を所有していた。Kには子Lが いたが、Kは、姪のMを幼少の頃からかわいがっていたことから、令和6年1月17日、Mとの 間で「Kが死亡したときには、丙不動産をMに与える」旨の贈与契約(以下「契約8」という。) を書面で締結した。 18.令和8年2月頃よりKとMの関係が悪化した。 19.令和8年10月1日、Kは、丙不動産をN県に遺贈する旨を記した適式な自筆証書遺言を作 成し、同日、LとN県にその内容を通知した。 20.Kは、令和9年5月1日に死亡した。Kの相続人はLのみであった。 21.丙不動産の所有権の登記名義人はKのままであった。令和9年8月20日、Mは、Lに対し、 契約8に基づき丙不動産のMへの所有権移転登記手続を求めた(以下「請求4」という。)。 これに対し、Lは、「エ契約8は、その後にKがN県に丙不動産を遺贈する遺言をしたことに より、撤回されたはずである。」と主張してこれを拒んだ。 〔設問3〕 【事実V】(17から21まで)を前提として、次の問いに答えなさい。 下線部エの主張の根拠を説明した上で、考えられるMからの反論を踏まえ、請求4が認められ るか、論じなさい。