令和4年 司法試験 論文式試験 倒産法 第1問
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〔第1問〕(配点:50) 次の【事例】について、以下の設問に答えなさい。 なお、解答に当たっては、文中において特定されている日時にかかわらず、試験時に施行されて いる法令に基づいて答えなさい。 【事 例】 A株式会社(以下「A社」という。)は、缶詰の製造販売を業とする株式会社である。A社の 主な販売先の一つとして水産物加工業者のB株式会社(以下「B社」という。)があり、また、 主な仕入先の一つとしてB社のグループ会社である水産物卸売業者のC株式会社(以下「C社」 という。)がある。A社は、B社及びC社との間でそれぞれ継続的な取引を行っており、B社に 対しては常に数百万円程度の売掛金債権を有する一方、C社に対しては常に数百万円程度の買掛 金債務を負担する関係にあった。 A社は、その代表者Dが所有する甲土地上に乙建物を所有し、原材料や完成品を保管する倉庫 として利用していた。そして、A社は、令和2年3月1日、メインバンクであるE銀行から運転 資金として1億円を借り入れ、A社とDは、E銀行のA社に対するこの貸金債権(以下、利息及 び損害金を含めて「本件貸金債権」という。)を被担保債権として、同日、E銀行のために、甲 土地及び乙建物に抵当権を設定した。 A社は、令和3年8月頃から経営状況が悪化していたところ、同年10月15日に事業を停止 してF地方裁判所に破産手続開始の申立てをし、同月25日、A社に対して破産手続開始の決定 がされ(以下、同決定に基づく破産手続を「本件破産手続」という。)、破産管財人Xが選任さ れた。 A社は、令和3年10月25日現在、B社に対し、缶詰代金等として合計500万円の売掛金 債権(以下「債権1」という。)を有しており、その一方で、C社は、A社に対し、缶詰の原材 料の代金として合計400万円の売掛金債権(以下「債権2」という。)を有していた。また、 同日現在、本件貸金債権の残額は8000万円であった。その後、E銀行は、F地方裁判所に対 し、甲土地及び乙建物につき抵当権実行の申立てをした(以下「本件抵当権実行」という。)。 〔設 問〕 以下の1及び2については、それぞれ独立したものとして解答しなさい。 1.Xは、債権1の弁済期である令和3年11月15日が到来してもB社から債権1に対する支 払がなかったので、B社に対してその支払を催促した。これに対し、B社は、Xに対し、債権 1に係る残債務500万円のうち400万円について、相殺を理由に支払を拒絶する旨の通知 をした。以下の各場合について、相殺に係る自働債権が本件破産手続上いかなる債権として取 り扱われるかに触れつつ、B社による相殺の可否を論じなさい。なお、C社は、債権2につき 破産債権の届出をしていないものとする。 (1) B社は、令和3年11月1日、C社から債権2を譲り受け、当該債権を自働債権として相 殺を主張している場合 (2) B社は、令和3年3月1日、A社の委託を受け、C社との間で債権2に係る債務を保証す る旨の保証契約を締結し、同年11月1日、同契約に基づいてC社に全額の弁済をし、これ により生じた求償権400万円を自働債権として相殺を主張している場合 (3) B社は、令和3年3月1日、A社の委託を受けないで、C社との間で債権2に係る債務を 保証する旨の保証契約を締結し、同年11月1日、同契約に基づいてC社に全額の弁済をし、 これにより生じた求償権400万円を自働債権として相殺を主張している場合(なお、A社 は、B社とC社との間の上記保証契約の存在を全く知らされていなかったものとする。) 2.E銀行は、本件抵当権実行による配当では本件貸金債権の全額につき満足を受けることはで きないと考え、本件破産手続において、本件貸金債権につき、破産法の規定に従い破産債権の 届出をした。なお、中間配当の手続は行われなかったものとする。 (1) E銀行が、破産債権の届出をした本件貸金債権について、本件破産手続の最後配当の手続 に参加するためには、どのような手続をとる必要があるか、説明しなさい。 (2) 本件破産手続の最後配当の手続に先立ち、本件抵当権実行の手続が終了し、その競売手続 において、E銀行は、本件貸金債権に対する弁済として、甲土地の売却代金から4000万 円、乙建物の売却代金から1000万円の配当を受けた。この場合に、本件破産手続の最後 配当において所要の手続をとったE銀行への配当について、配当額の計算の基礎となる破産 債権の額はいくらか。E銀行が本件抵当権実行により各不動産の売却代金から配当を受けた 額が、令和3年10月25日時点における本件貸金債権の残額から控除され、又は控除され ない理由とともに、説明しなさい。ただし、破産手続開始後の利息及び損害金は考慮しない ものとする。