令和3年 司法試験 論文式試験 租税法 第1問
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〔第1問〕(配点:50) Aは,平成元年1月からBと婚姻し同居していた。婚姻中は,Aが専ら収入を得ており,Bは家 事に従事していた。 Aは,平成12年12月31日付けの契約で,不動産業者である株式会社P社から,土地(以下 「本件土地」という。)を4000万円の対価により取得した。この金額は,この時の本件土地の 時価と等しいものであった。Aは,この金額を,婚姻中に蓄積した貯蓄から支払った。 平成18年3月1日,AとBは離婚することになった。同日,財産分与として,Aは本件土地を Bに引き渡した。この時点において,AとBとが婚姻中に形成した資産の時価相当額は約1億円で あり,本件土地の時価は5000万円であった。 平成20年3月1日,Bは,本件土地を個人Cに5500万円の対価により譲渡した。 Cは,本件土地の取得後直ちに,その上に居住用の部屋10室から成る建物(以下「本件建物」 という。)を建築した。そして,平成22年1月から,本件建物の各部屋を賃貸する不動産賃貸業 を個人で営み始めた。本件建物の賃借人は,C名義の銀行口座への振込みによりその賃料を支払っ ていた。本件建物に係る賃貸借契約や管理業務には,Cはほとんど関わっておらず,Cの子である Dが事実上行っていた。Dは,本件建物の部屋の一室に居住しているが,Cに対して賃料の支払は していない。 さらに,Cは,平成23年1月から,本件建物の一室を使って,個人でQ鍼灸院という屋号の鍼 灸院の事業を開始した。鍼灸の施術サービスを行うには,はり師及びきゅう師の国家資格が必要で あったが,鍼灸院の経営自体は,経営者がはり師及びきゅう師の国家資格を持っていなくても,は り師及びきゅう師の国家資格を持つ者を別に雇用することで営業することが可能であった。Cは, 個人経営者としてQ鍼灸院の事業運営を取り仕切り,また,はり師及びきゅう師の国家資格を持つ Fを雇用した。Fが来院客に鍼灸の施術サービスを提供するとともに,C自らは,施術サービスを 行うのに国家資格の不要なリラクゼーションセラピストとして,来院客にリラクゼーションの施術 サービスを提供し,Q鍼灸院は鍼灸及びリラクゼーションの各施術サービスによる収入を得ていた。 Cは,本件建物の居住用の部屋の賃貸収入と,Q鍼灸院の収入により生計を立てていた。 他方,Cは,平成26年1月から,かねて趣味にしようと考えていた生花の専門学校に半年間通 い,その腕を磨き,かなりの腕前を持つに至った。そこで,Cは,同年10月に,Q鍼灸院の待合 室に自作の生花を飾ったところ,来院客からも好評で,待合室の雰囲気が良くなったためか,生花 を飾って以降毎月の売上げが1割上昇した。 さらに,Cは,将来は自らも鍼灸の施術サービスを提供し,より多くの来院客に施術サービスを 提供できるようにし,Q鍼灸院の事業の拡大を図ろうと考え,平成27年1月から,はり師及びき ゅう師の国家資格取得のための専門学校に通い始め,はり師及びきゅう師の国家資格取得を目指し た。 令和元年10月にCが死亡し,Cの子であるD及びEの2名のみが共同相続人となったが,現在 に至るまで遺産分割協議は成立していない。なお,Cは遺言をしていない。また,C死亡後,速や かにQ鍼灸院は廃業した。 本件建物の居住用の部屋の賃料については,DとEとの合意により,遺産分割協議が成立するま ではD名義の銀行口座への振込みにより受領することとし,その旨を賃借人に通知した。実際に, 令和2年1月からは,本件建物の賃借人は,D名義の銀行口座への振込みにより賃料を支払ってい る。この賃料収入は,現在に至るまでD名義の銀行口座から引き出されていない。 以上の事案について,以下の設問に答えなさい。 〔設 問〕 1 平成18年3月1日に,Aが本件土地をBに引き渡したことは,財産分与の額として適正なも のであったとする。このとき, (1) 上記の財産分与に関して,Aの所得税の課税関係はどうなるか。 (2) 平成20年3月1日に,Bが本件土地をCに譲渡したことに関して,Bの所得税の課税関係 はどうなるか。 2 Cの平成26年分の所得税の計算上,Cが生花の専門学校に支払った学費は,CのQ鍼灸院に 係る事業所得における必要経費に該当するか。また,Cの平成27年分の所得税の計算上,同年 中にCがはり師及びきゅう師の国家資格取得のための専門学校に支払った学費は,CのQ鍼灸院 に係る事業所得における必要経費に該当するか。 3 所得税法上は,令和2年分の本件建物の居住用の部屋の賃料収入は,誰に帰属するか。