令和3年 司法試験 論文式試験 経済法 第1問
問題文と公式資料を一つにまとめ、出題の趣旨と採点実感の要点をすぐ確認できる学習ページです。
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〔第1問〕(配点:50) Y1ないしY15は,いずれも土木工事の施工等を業とする株式会社である。 X県は,大雨により崩壊した県道の復旧工事20件(以下「本件各工事」という。)を条件付一 般競争入札の方法(入札公告により,特定の入札参加資格を付して入札の参加希望者を募り,当該 参加資格を満たしていると認められた者を当該入札の参加者とする方法)により発注することとし, 落札方式については,入札価格を80点満点で評価する「価格評価点」と技術力を20点満点で客 観的に評価する「技術評価点」を合算した点数の最も高い者を落札者とする総合評価落札方式を採 用することとした。本件各工事は,いずれも同じ日に入札公告がなされ,その後,いずれも同じ日 に入札がなされる。 X県が本件各工事の入札公告に先立ってその発注見通しを公表したことを受け,X県に所在する 技術力の高いY1ないしY13は,受注価格の低落防止及び受注機会の均等化を図るため,それぞ れの担当者による会合(以下「本件会合」という。)を開き,次の(1)ないし(3)のとおり合意した (以下「本件合意」という。)。 (1) 本件合意の参加者は,本件各工事の入札に先立ち,Y1に対し,受注を希望する工事を知ら せるとともに,当該工事について技術評価点に係る自社の予測値を提供すること (2) Y1は,受注希望者の中から受注予定者を決めるとともに,それ以外の入札参加者も決め, 受注予定者が確実に受注できるようにするため,提供を受けた技術評価点の予測値に基づいて, 受注予定者及びそれ以外の入札参加者が入札すべき価格を算出し,これらをそれぞれに伝える こと (3) 受注予定者はY1から伝えられた価格で入札すること,それ以外の入札参加者はY1から伝 えられた価格で入札し,受注予定者が受注できるよう協力すること また,本件会合において,本件各工事の性質上,X県の隣接県に所在するY14及びY15が本 件各工事の入札に参加することが予想されるとのY1の担当者の発言を受けて,Y1ないしY13 は,Y1を調整役として,Y14及びY15に本件合意への参加を呼び掛けることにした。 Y1の担当者とY14又はY15の担当者との面談状況は,それぞれ以下のとおりであった。 まず,Y1の担当者は,面談したY14の担当者に対して,本件合意の内容を説明した上で,本 件合意の参加者を特定することなく,X県所在の有力な業者の多くが本件合意に参加する意思を表 明していると伝え,本件合意への参加を呼び掛けた。その際,Y14の担当者は,本件合意の参加 者の正確な範囲を認識しておらず,それを確認することもせず,また,本件合意に参加した場合の 見返りに関する質問もしなかった。Y14の担当者は,Y1の担当者に対し,会社としてY1の呼 び掛けに応じる意思を表明したが,その理由は,本件各工事を受注する希望はないものの,X県に よる追加工事の発注があり得ると考えた上で,それらについて受注を希望することがあれば,Y1 を通じてX県所在の業者から協力を得ることができるかもしれないと期待したからであった。 次に,Y1の担当者は,面談したY15の担当者に対して,本件合意の内容を説明した上で,本 件合意の参加者がY1ないしY14であることを伝え,本件合意への参加を呼び掛けた。その際, Y1の担当者が,Y15において本件各工事の受注を希望することがあれば,Y15を受注予定者 とすることもあるなどと述べたことから,Y15の担当者は,Y1の担当者に対し,会社としてY 1の呼び掛けに応じる意思を表明した。 上記の各面談後,Y1の担当者は,Y2ないしY13の各担当者に対し,Y14及びY15が本 件合意に参加することになったと伝えた。しかし,本件各工事の入札公告に先立ち,Y15は,コ ンプライアンス上の理由から本件合意への参加には応じられないこととなった。このため,Y15 の担当者は,Y1の担当者に対し,会社として,上記面談時に伝えた本件合意に参加する意思を撤 回する旨の連絡を行い,Y1の担当者からの再度の呼び掛けに対してもこれを拒否する姿勢を明確 に示した。Y1の担当者は,Y15の技術力や確保できる作業員数の見込みなどに照らして,Y1 5が本件合意への大きな脅威になることはないと判断した上で静観することとし,Y15の翻意を Y2ないしY13の各担当者に伝えず,また,Y14の担当者にも伝えなかった。 その後,本件各工事の入札公告がなされ,本件合意に従って受注予定者の決定等がなされた。2 0件の本件各工事のうち19件は,本件合意に基づく調整の結果どおり,Y1ないしY13が落札 した。残る1件は,Y1に対して本件合意への参加の意思を撤回したY15が,独自の積算で入札 して落札した。Y14は,本件各工事の受注希望を表明することはなかったが,特にY1より依頼 のあった1件の工事について,技術評価点の予測値をY1に提供するとともに,Y1から伝えられ た価格で入札した。なお,本件合意への参加を呼び掛けることのなかったY1ないしY15以外の 技術力が高くない数社が本件各工事の入札に参加したが,落札した工事はなかった。 〔設 問〕 Y1ないしY13,Y14及びY15の行為について,私的独占の禁止及び公正取引の確保に 関する法律(以下「独占禁止法」という。)上の問題点を検討しなさい。解答に当たっては,Y 14及びY15による以下の主張の当否を踏まえること。なお,課徴金の賦課及び犯則事件につ いて論じる必要はない。 Y14の主張:「本件合意の参加者の正確な範囲を知らない。また,そもそも本件各工事に受 注希望はなかったし,実際,落札した工事もない。」 Y15の主張:「当初,Y1の呼び掛けに応じたが,その後,少なくともY1に対しては入札 公告前に,本件合意に参加しないことを明確に伝えた。」