令和3年 司法試験 論文式試験 民事系科目 第1問
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〔第1問〕(配点:100〔〔設問1〕,〔設問2〕及び〔設問3〕の配点は,35:25:40〕) 次の文章を読んで,後記の〔設問1〕,〔設問2〕及び〔設問3〕に答えなさい。 なお,解答に当たっては,文中において特定されている日時にかかわらず,試験時に施行されて いる法令に基づいて答えなさい。 I 【事実】 1.令和2年4月10日,Aが所有する工作機械甲が盗まれ,行方不明となった。 2.令和2年4月25日,土木業を営むBは,空き地に放置されている甲を発見し,所有者が廃 棄したものだろうと考えて,甲を持ち帰った。 3.令和2年5月1日,Bは,Cとの間で,期間を6か月間として甲を無償で貸す契約を締結し, 同日,甲をCに引き渡した。Cは,その際,【事実】1及び2を知らなかった。 4.令和2年5月15日,Bは,弁済期が到来していたDに対する借入金債務の弁済に代えて, 甲をCに貸与したままDに譲渡した。その際,Bは,Dに「甲は中古機械の販売業者から買っ た。」と虚偽の説明をした。また,甲に所有者を示すプレート等はなく,他に不審な点もなか ったので,Dは,Bの説明を信じた。同日,Bは,Cに対して,甲をDに譲渡したので,以後 はDのために占有し,同年11月1日に甲をDに返却するよう指示し,Dは,このような方法 によりBから甲の引渡しを受けることを了承した。 5.Aは,Cが甲を使用している事実を知り,令和2年10月15日,Cに対して【事実】1の 経緯を説明し,甲の返還を求める(以下「請求1」という。)とともに,同年5月1日から甲 がAに返還されるまでの間の使用料相当額の支払を求めた(以下「請求2」という。)ところ, Cは,自分は,ア甲の所有権を取得したDから甲を借りていると主張して,Aの請求に応じな い。これに対して,Aは,イBからDへの譲渡後もCが甲を現実に支配する状態に変わりがな い以上,Dは甲の所有権を取得したとはいえず,ウいずれにせよ【事実】1に照らすと,Cは Aの請求に応じるべきであると反論した。 〔設問1〕 【事実】1から5までを前提として,次の問いに答えなさい。 下線部アにおけるCの主張並びに下線部イ及びウにおけるAの主張の根拠を明らかにし,これら の主張の当否を検討した上で,請求1及び請求2の可否について論じなさい。なお,不法行為に基 づく構成について検討する必要はない。 II 【事実】1から5までに加え,以下の【事実】6から14までの経緯があった。 【事実】 6.Aは,個人で事業を営んでいたところ,従業員の技能の向上のため,毎年11月に実施され る業界の技能検定試験である「○○検定1級」(以下「乙検定」という。)に従業員を合格さ せる方針を打ち出した。そこで,Aは,乙検定の高い合格実績をうたって通学講座を開設して いるEに対して,Aの従業員専用の出張講座の開設を依頼した。A及びEは,令和3年5月1 0日,Eが,同年6月から10月までの5か月間,Aの事業所にて出張講座を開設し,週4日, 授業を行うこと,Aが,月額報酬60万円,及び同年の乙検定の合格者数に応じた成功報酬を 支払うことを合意した(以下「契約1」という。)。なお,月額60万円は,Eの他の出張講 座よりも高額であった。 7.Eは,契約1の出張講座(以下「本件講座」という。)に専念するため,新たな出張講座の 依頼は受けないこととし,また,通学講座のための代替の講師を手配し,これらをAに伝えた。 8.Aの従業員で,乙検定の合格レベルの技能を有しない30名が本件講座を受講することにな った。滑り出しは順調であり,開講から1か月後に実施された模擬試験では,受講生の技能は 顕著な伸びを見せた。 9.ところが,Eが本件講座の受講生に求める課題の量が膨大で,受講生の大半が汲々としてお り,引き続き技能を伸ばす受講生が相当数いた反面で,課題の不提出についてEに叱責される などしたため,止めたいと言い出す受講生も現れた。令和3年8月6日,Aは,Eに対し善処 を求めたが,Eから「こちらはプロなのだから任せてほしい。」と言われた。Aは,Eの態度 に失望し,「このままの状況が続くようであれば同年8月末で本件講座を取りやめることも考 える。」と伝えた。 10.Eはその指導方法を維持したまま,令和3年8月31日となった。この時点で,本件講座に 継続して出席している受講生は20名となっていた。Aは,同日,Eに対し,契約1を解除す る旨の意思表示をし,これによって本件講座は閉鎖された。 11.Eは,令和3年9月及び10月に【事実】7により手配した講師の報酬として合計40万円 を支出した。また,Eは,同年10月に別の企業において2週間の出張講座を行い,その報酬 として15万円を得た。 12.本件講座の閉鎖後,受講生30名は,全員が,Aから費用の補助を受けて他者の開設する通 学講座を受講して,令和3年11月,乙検定を受験し,その6割である18名が合格した。乙 検定の当年の全体の合格率は4割であり,Eの通学講座の受講生の合格率は6割程度であった。 13.Aは,令和3年8月分以降の月額報酬等の支払をしていない。 14.Eは,令和3年12月,Aに対し,同年8月分の月額報酬60万円の支払を求める(以下 「請求3」という。)とともに,同年9月及び10月に関する損害賠償金120万円(【事 実】11で支出した40万円を含む。)の支払を求め(以下「請求4」という。),更に,乙検 定の合格者数に応じた成功報酬の支払も求めた。 これに対し,Aは,【事実】9及び10の経緯などを指摘して支払を拒絶した。 〔設問2〕 【事実】6から14までを前提として,次の(1)及び(2)の問いに答えなさい。 (1) 契約1によるEの債務の内容及び契約1の性質を,理由を示して明らかにしなさい。 (2) (1)における契約1の性質を踏まえて,請求3及び請求4の可否について,Aの反論を考慮しつ つ,論じなさい。 III 【事実】1から14までに加え,以下の【事実】15から21までの経緯があった。 【事実】 15.Aには,子F及びGがいた。Fは,長らくAとの交流を断っていた。 16.令和4年3月,Aは,難病を発症した妻の治療費を捻出するため,友人であるHに500万 円の借入れを懇請したところ,Hは,Gが連帯保証をすることを条件にこれに応じた。同年4 月1日,Hは,Aとの間で,弁済期を令和10年4月1日としてAに500万円を貸し付ける 旨の契約(以下「契約2」という。)を,またGとの間で,契約2に基づくAの借入金債務 (以下「本件債務」という。)につきGが連帯保証をする旨の契約を,それぞれ書面により締 結し,令和4年4月2日,契約2に基づき500万円をAに交付した。 17.Aは,更なる治療費の支出に備えて,令和4年8月9日,Hに対して自己所有の絵画丙を1 00万円で買い取ってほしいと頼んだ。 18.令和4年8月15日,HとAとの間で,Hが同月31日までに代金100万円を支払うこと 等を内容とする丙の売買契約が締結され,丙がAからHに引き渡された。 19.一方,【事実】17からAの資力に不安を感じたHは,Gに対して,本件債務について連帯保 証人をもう一人増やしてほしいと告げた。そこで,GがFに依頼した結果,令和4年8月22 日,FとHとの間で,Aに知らせないまま,本件債務をFが連帯保証する旨の契約(以下「契 約3」という。)が書面により締結された。なお,FG間の内部的負担割合に関する合意はな い。 20.令和10年6月20日,Aは,Hに対して本件債務の弁済の猶予を求める書面を送付したが, Fはこの事実を知らなかった。 21.令和15年5月10日,Hは,契約3に基づき,Fに対して500万円の支払を求めた(以 下「請求5」という。)。 〔設問3〕 【事実】15から21までを前提として,次の(1)及び(2)の問いに答えなさい。 (1) Hは丙の売買代金を全くAに支払っていないものとする。この場合,Fは,令和15年5月1 1日の時点で,Hに対して500万円全額又は丙の売買代金100万円分につき支払を拒むこと ができるか。 (2) Hは丙の売買代金全額を期日までにAに支払っていたとする。令和15年5月11日,請求5 につきFとHが話し合い,FがHに300万円を支払い,Hはその余の支払を免除した。この場 合,Fは,A及びGに対して各々求償をすることができるか。また,求償をすることができると すれば,その額は各々いくらか。