令和2年 司法試験 論文式試験 租税法 第2問
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〔第2問〕(配点:50) 個人Aは,食品卸売業を目的とする株式会社B(以下「B社」という。)の創業者であるCの子 で,同社の使用人であった。平成23年にCが死亡し,遺産分割協議の結果,Aの姉のDがB社株 式の大半を相続して経営を引き継ぎ,Aは少数の同社株式を相続した上で,同社の取締役に就任し, 事業年度ごとに決められる毎月一定額の役員給与(以下「本件役員給与」という。)の支給を受け ることとされた。しかし,Dが経営を独占したため,毎月開催される取締役会に形式的に出席する ほかは,B社にはAの行うべき業務はなかった。そこでAは,B社勤務中の経験をいかし,B社の 取締役に就任したまま,平成24年中に,冷凍食品の小売販売店を個人で開業することとした。 この開業以来Aの店で働いていたEは,Eにとって唯一の親族である高齢の父親F(妻(Eの母 親)とは死別)と同居してその介護をしていたところ,平成26年中にFの症状が進んでEの手に 負えなくなったことから,Fを介護付有料老人ホームに入所させたいと考えるようになったが,E が適切と考える施設の入居一時金を支払うにはFの全財産である貯金を使っても300万円不足す るため,特に貯金のないEは同年半ばに,Aに300万円の借金を申し込んだ。この申込みを受け たAは,これまでのEの誠実な働きぶりを高く評価していたため,「Eさんの働きぶりにはいつも 感心しています。これからも長くこの店で働いてくださいね。」と言って,低利・無担保でこの借 金の申入れに応じて貸し付けることとした(以下,この貸付金を「本件貸付金」という。)。Eは平 成26年及び平成27年にはAに対して約定の元利支払を行ったが,平成27年末にFが亡くなっ た際の心労などから病気になり,平成28年中に病死した。Aに対するEの債務は元本が200万 円残っており,また,Eが病死するまでの期間に相当する平成28年分の利息1万円が未払のまま であったが,Fの介護にお金をつぎ込んでいたEには貯金はなく,自動車などのめぼしい財産もな かった。 Aは,開業以来事業の用に供していた冷凍庫付軽自動車甲を平成28年末に同業のGに譲渡して, その譲渡による利益を,平成29年3月14日に提出した平成28年分の所得税の確定申告書にお いて,所得に含めて申告した。平成29年3月中にGから,甲が契約した性能を満たしていないか ら契約を解除するとの連絡があったが,Aがこの主張を認めなかったため,AとGの間で民事訴訟 (以下「本件訴訟」という。)となり,平成30年6月15日にA敗訴の判決が確定した。同日, Aは代金等をGに払い戻し,甲の引渡しを受けた。 本件訴訟係属中の平成29年8月には,開業以来のAの所得についての税務調査が行われ,その 結果に基づいて平成25年分から平成28年分のAの事業所得につき,収入の計上漏れなどを理由 とする増額更正処分が,平成29年12月に行われた。Aはこの処分について不服申立てを行って いない。 以上の事案について,以下の設問に答えなさい。 〔設 問〕 1 本件役員給与の課税関係について,以下の問いに答えなさい。 (1) B社が本件役員給与を損金に算入し得る場合の根拠規定とその趣旨及び適用関係を,簡潔 に説明しなさい。 (2) 本件役員給与に不相当に高額な部分がある場合,B社の所轄税務署長Hが,法人税法第3 4条第2項(以下「本件規定」という。)に基づいて本件役員給与の一部の損金算入を否認す る処分を行うことは適法か。本件規定の括弧書に「前項......の適用があるものを除く。」と規 定されている点を考慮した上で,本件規定の適用関係に触れつつ,簡潔に説明しなさい。 2 本件貸付金に関する課税関係について,以下の問いに答えなさい。 (1) AがEから受け取った本件貸付金の利息と未収受の利息は,Aの所得税の計算上どのよう に扱われるか,簡潔に説明しなさい。 (2) 平成28年にEが病死したという事情は,Aの所得税の計算上どのように扱われるか,説 明しなさい。 3 Aを敗訴させた本件訴訟の判決が平成30年6月15日に確定したことにより,Aのいつの年 分のどの所得分類に係る所得額がどのように変化するか。また,Aは,その変化をどのような 手続によって自分の所得税の計算に反映させることができるか。条文上の根拠を摘示しつつ説 明しなさい。 論文式試験問題集[経 済 法]