令和2年 司法試験 論文式試験 租税法 第1問
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〔第1問〕(配点:50) 競馬好きの個人Aは,不動産賃貸業を営む傍ら,インターネットを介して馬券を購入できるサ ービスを利用して馬券を購入している。Aの馬券購入方法は,競走馬や騎手等の情報を収集・分 析した上で,着順予想の確度と配当率の大小を組み合わせた購入パターンに従い,年間を通じて の収支(当たり馬券の払戻金の合計額と外れ馬券を含む全ての馬券の購入代金との差額)で利益 が得られるように工夫しながら,偶然性の影響を減殺するために年間を通じてほぼ全てのレース で馬券を購入するというものである。そして,平成21年から平成25年までの5年間に,年間 約3000レースのうちのほぼ全てのレースを対象として,1年当たり5000万円程度の馬券 を購入し,収支の上で毎年利益を得ていた。利益の額は,年によって大きく変動したものの,平 均すると1年当たり200万円程度であった。 Aは,自己のノウハウを基に競馬予想ソフトウェア(以下「ソフト」という。)を開発し,これ にユーザーが独自の条件設定を行うことができる機能を付けて売り出せばより多くの利益を得ら れるのではないかと考え,平成26年から,このソフトの小売販売事業を始めた。もっとも,こ れと並行して上記の方法による馬券の購入も継続し,従前と同程度の利益を上げながら,そこで 得られる新たな競馬予想ノウハウをソフトのバージョンアップに取り入れていた。平成28年に は,株式会社B(以下「B社」という。)を設立して同社の代表取締役に就任し,同社において, 株式会社C(以下「C社」という。)その他の小売業者にソフトの卸売を行うこととした。 Aは,個人で営む不動産賃貸業でも安定した収入を得ており,所有する建物の一つを,毎月の 賃料を当月末日に支払う約定でDに賃貸していた。平成28年10月1日に借地借家法第32条 に基づく賃料増額請求権を行使してDに対し賃料を月額20万円から25万円に増額するよう求 めたところ,Dがこれに応じず,民事調停も整わなかったため,AはE地方裁判所(以下「E地 裁」という。)に賃料増額請求の訴訟を提起した。その結果,E地裁は,Aの請求を一部認容して 賃料を月額23万円とする判決を言い渡し,この判決は平成29年12月28日に確定した。そ のため,Dは,平成30年1月4日にAに対し,月額23万円で計算した平成28年10月1日 以降の増額分の未払賃料及び遅延損害金(以下,両者を併せて「本件未払賃料等」という。)を全 額支払った。 他方で,B社の経営も順調であったが,ソフトの卸売先であるC社の資金繰りが悪化し,同社 から,同社の所有する甲土地をB社に売却するので,その売買代金を未払のソフト仕入代金と同 額にして相殺処理してほしいとの申出を受けた。B社は,C社への資金援助になると考えてこれ を承諾し,平成30年8月1日にC社との間で,時価3000万円相当の甲土地を代金4000 万円で買い受ける旨の売買契約を締結し,その売買代金債務とC社のB社に対する未払のソフト 仕入代金債務4000万円とを相殺して,同日にC社の費用負担で甲土地の所有権移転登記を受 けた。 Aは,令和2年5月1日にB社から甲土地を時価と同額の代金3300万円で買い取り,これ を不動産賃貸業の用に供した。 なお,B社もC社も,毎年1月1日から12月31日までの期間を事業年度としている。 以上の事案について,以下の設問に答えなさい。 〔設 問〕 1(1) Aが平成25年に得た当たり馬券の払戻金に係る所得は,Aの同年分の所得税の計算上ど の所得に分類されるか,説明しなさい。 (2) Aが平成26年に得た当たり馬券の払戻金に係る所得は,Aの同年分の所得税の計算上ど の所得に分類されるか,説明しなさい。 2 AがDから得た本件未払賃料等に係る収入は,Aの所得税の計算上いつの年分の不動産所得 に係る総収入金額に算入されるか,説明しなさい。 3(1) B社によるC社からの平成30年8月1日の甲土地の買受けに関して,B社の同日を含む 事業年度の法人税の計算上,損金の額への計上はどのようにすべきか,説明しなさい。 (2) B社によるAへの令和2年5月1日の甲土地の売却に関して,B社の同日を含む事業年度 の法人税の計算上,益金の額及び損金の額への計上はどのようにすべきか,説明しなさい。