令和2年 司法試験 論文式試験 知的財産法 第2問
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〔第2問〕(配点:50) 作家甲は,少年αが主人公として登場し,ボーイスカウト活動に参加しつつ青春を謳歌するとい う内容の小説Pを執筆した。Pの出版後,漫画家乙は,甲の許諾を得て,Pに基づいて漫画Qを作 成した。Qには,αについて,その髪型や髪の色,瞳の色,顔の形,眉や目鼻立ち,ボーイスカウ トの制服,体型などの特徴(以下「本件特徴」という。)が,生き生きと描かれていた。他方,P には,本件特徴を含むαの絵画的側面の具体的,詳細な記載がされていなかった。 以上の事実関係を前提として,以下の設問に答えなさい。なお,各設問はそれぞれ独立したもの であり,相互に関係はないものとする。また,著作者人格権について触れる必要はない。 〔設 問〕 1.Qを見た画家丙は,乙の許諾を得ただけで,甲の許諾を得ずに,本件特徴をよく捉えたαの 肖像画R1を作成した。丙は,R1の複製物を製造して販売しようとしている。 甲は,丙に対して,R1の複製物の販売行為につき,著作権侵害に基づく差止めを請求する ことができるか。異なる見解にも留意しつつ論じなさい。 2.乙は,本件特徴をよく捉えたαの肖像画R2を作成した。その後,乙はR2の原作品(縦4 0cm×横20cm)を譲渡したが,R2については贋作が出回った。そこで,R2の原作品を所 有するに至った美術商丁は,その真贋について,これを真作であると鑑定し,当該原作品を店 内で展示した上,今後当該原作品と所在を共にして流通させるべく,鑑定証書Sを1通作成し た。 丁は,鑑定対象である絵画を特定するため,R2の原作品を20%の面積に縮小し,縦16 cm×横10cmのサイズにしたカラーコピー(以下「本件コピー」という。)を作成して,Sに 貼り付けた。Sの大きさは,縦20cm×横10cmであり,その表面には,「鑑定証書」との表 題の下に,「下記の本肖像画については,丁による厳正な鑑定の結果,乙が描き下ろした真作 であると認められることを証明する。」との記載がされ,「記」と記載されたその下部に,本 件コピーが大きなスペースをとって貼り付けられ,最下部に,R2の著作者が乙である旨の記 載がされていたが,裏面には丁の屋号や連絡先の記載がされているのみであった。また,Sは, 表裏一体のものとしてラミネート加工がされていたが,本件コピーの部分は取り外しができる 構造となっていた。さらに,鑑定証書に鑑定対象である絵画のコピーを貼り付けることは,そ れまで丁の同業者の間でほとんど行われていなかった。 丁は,Sを,R2の原作品とともに譲渡しようとしていたため,乙は,丁に対し,Sの譲渡 行為につき著作権侵害に基づく差止めを請求する訴訟を提起した。これに対する丁の反論とし て,どのような主張が考えられるか。その妥当性についても論じなさい。 3.乙は,Qが匿名の第三者により無断でインターネット上の電子掲示板に投稿されたため,当 該掲示板の運営者戊に対し,そのことを伝えるとともに,Qの売上げが激減し乙が経済的打撃 を受けており,受領後3日以内にその送信の停止を要請するとの内容証明郵便を送付した。戊 は,掲示板運営者として当該掲示板に掲載された投稿の最終的な送信停止の権限を有しており, 実際にも必要があれば直ちに送信停止を行うことができた。 戊の運営する当該掲示板は,プロの小説家や漫画家を志す人からの投稿を募る掲示板として 始まり,公的機関からも表彰されるなど,良質の掲示板であるとして雑誌等にも紹介され,戊 も,当該掲示板に,著作権を侵害する投稿は厳禁とする旨の注意書きを掲載し,送信停止の要 請があった場合にも公正な調査を心掛けてその要否を決するなど丁寧に対応していた。しかし, 当該掲示板の人気が高まり,大量の投稿がされるようになるにつれて,戊には,日々数百件も の送信停止の要請が寄せられ,戊はその対応に追われるようになっていた。また,戊は,当該 掲示板について,広告収入を得ていたが,掲示板の運営費がかさみ,わずかの利益を得るにと どまっていた。このような中で,乙の上記内容証明郵便が送付され,戊は,これを受領し閲読 したものの,特段の是正措置を採らずに,3週間,放置していた。 乙は,戊に対して,Qを送信する行為につき,著作権侵害に基づく差止めを請求することが できるか。戊が運営する掲示板は,著作権を侵害しない用途に使用され得るものであることに 留意しつつ論じなさい。 論文式試験問題集[労 働 法]